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第六章 【二つの世界】

6-63 忠誠

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「で……どうするの?アタシたちの下に付くの?それとも消える?」



先ほどの質問をしてから、三十秒も経っていない。
目の前の人間は、この世界の上位の存在に対し自分の要求を満足させるために回答を急かしてくる……異様なオーラを放ちながら。



モイスの頭の中には、土壇場である考えが浮かぶ。



(……このモノたちを利用するとするか)


うまく取り入って、この能力の使い方を教わりさらに強くなる自分の姿を思い描く。
悔しいが生き延びるために……強くなる必要がある。


「あ、変な気持ちで下に付くのはやめた方がいいよ。手の平返したり、技術や能力を奪うこと考えてるなら、その時点でアンタのこと消すからね」



『――!?』




モイスはサヤの突然の言葉に、思わず驚きの声をあげそうになった。
その漏らした声が、人間の言った言葉に対しての”答え”となってしまうことは、モイスにはわかっている。





『ち……忠誠を……ワシ……いえ、わたしはあなた様に、忠誠を誓います』



サヤは、無邪気な満足そうな顔で突きつけていた包みを背中に戻す。
その顔を見て、ハルナはサヤの考えていることが判った。
きっと、ずっと欲しかったペットを――以前とは違う形だが――手に入れたことへの喜びが大きいのだと。











場所は変わり、王宮の中。

二人一組で石によってできた見張り台の上で、背中合わせの状態で周囲を監視している。
今までも特に大きな出来事が起こったことはなく、これからも起こることはないと信じて疑わなかった。
もう一人の男は、そろそろ交代の時間ではないかと、気持ちがそわそわしている。
今日の任務はこの見張りで終了し、明日は非番の日で懇意にしている女性と久しぶりに会う約束を取り付けていた。



「……おい、ペイム。最後まで気を抜くなよ。背中越しにお前の心中が漏れて伝わってくるぞ」



ペイムと呼ばれた男の隣にいる警備兵が、視線と表情を崩さないまま口をほんの少しだけ動かしながら気がたるんできた友人に警告する。


「大丈夫さ、ロム。警戒は怠ってないって……俺だって隊長に絞られたくはくないからな」



「……あ!?」



「お、おい……ロム、声が大きいぞ。今日は早く帰りたいんだ……勘弁してくれよ」


ロムと呼ばれた男の視線は、一点を見つめて動いていない。
そのことに異変を感じたペイムは、自分の範囲以外の包囲にその視線を移動させた。


「どうした……ロム?一体何が……」


ペイムは、友人のロムの身体に異変が起きたのではないかと心配し心臓の鼓動が早くなる。
確認したロムの口はわずかながらに動いており、目を細めて自分の意思で動いていることが確認できホッとした。


ロムは友人の視線を感じられたため、同意を得るためにゆっくりと腕を上げて視線の先を指さした。
そのことを不思議に思ったペイムは、指示されたままその方向に視線を向ける。


「……ったく、一体どうしたって……あぁ!!!」



二人は見張り役に指名される程に視力が高く、洞察力にも優れている。
空に浮かぶシルエットが、徐々に大きくなっていきその姿の名が二人の脳裏に浮かんだ。



「「り……竜だ!!大竜神だ!!!!」」




見張り台の上から叫ばれた声によって、王宮の中の空気が一気に張り詰めていった。






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