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第六章 【二つの世界】

6-61 特別

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『お前たち……許さん……許さんぞオオオ!!!!』



モイスは、そう叫んだ後に大きく口を開けて息を吸い込む。
すると、口の中には尖った氷の槍が見える。




『―――ガァッ!』


大きな氷槍は、ハルナたちに目掛けて一瞬の加速で襲い掛かる。



「モイスさん、ごめんなさい!?」




ハルナはそういうと、その氷の槍を元素に還し大気の中に戻っていった。
そのことに対してモイスも、もう驚くことはなかった。
最初の一撃が塞がれることを前提に、次の一手でハルナたちに襲い書かkる。


背中には無数の鋭利な氷の槍が浮かび上がっており、間髪入れずにハルナたちに向かって叩きこむ。





――ドドドドドドドドドドドド!!!







いくつもの氷の槍がハルナたちに襲い掛かり、その度に何かにぶつかった低い音が鳴り響く。
三十秒間程、モイスは攻撃を続けた。
それ以上は意味がないことも判っていたし、当たっていれば消し去るには十分な量だった。

そして最後に、もう一度氷のブレスを一分間浴びせ続けた。



――ガン!


モイスの眉間に衝撃が走り、その視界が一瞬真っ白に染まっていく。
視界が戻ると、その鼻先には背中に長い包みを背負っていた女が立ち、その包みの先を眉間に押し当てている。


「アンタもよくやるねぇ。アタシに首根っこ押さえつけられたままなのにさ……でも、無駄だからやめた方がいいよ。アタシたちはちょっと特別なんだ」



”特別”その言葉を聞いて理解する、この人間は普通ではない……と。


先ほどから自分の首を押さえつけられたモノを、何とか持ち上げたり引き抜こうとしていた。
だが、それは地面にしっかりと固定され、この世界のヒエラルキーの中で上位にいる自分自身の力でさえ、それを外すことはできなかった。




「ふぅ……やっぱり練習の成果があったわね。ラファエルさんたちに感謝だわ」




ハルナの前にある水の壁には、いくつもの氷の槍が突き刺さっている。
その水の壁は強い粘着性を持っていたため、それらの槍はハルナに到達する前に途中で止められていた。
これが普通の水や氷の壁ならば、この数の槍を打ち込まれていれば崩壊してハルナの元に届いていたかもしれない。
だが、ハルナはそれを見越しており、防ぐ方法を粘着性の水で受け止めていた。
その中には水だけでなく、空気や砂の元素も少し混ぜており、そうすることによって粘着性と強度が増すことを知っていた。
これは、オスロガルムに向かう前の特訓で身に付けていた技の一つだった。



ハルナは次の攻撃はないと判断し、全ての警戒を解いた。



『何が……特別だ。この世界での強者は我らのみ!……見ておれ!!!』


言われた通り、ハルナとサヤはモイスのことを見ていた。
しかし、結果的に何も起こることはなかった。



「まだ……かな?何見せてくれんのかな?……って、ごめんごめん。ちょっと意地悪したねぇ」


サヤはモイスの鼻筋に沿って近づき、モイスの片方の眼球にその顔を近づけた。



「悪いわね……この空間の制御権、あたしが奪っちゃったからさ。アンタは何かしようとしてたけど、もう何もできないよ?」








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