問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』

山口 犬

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第六章 【二つの世界】

6-54 背後に潜む影

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そうしてステイビルは、ドイルが立ててくれた作戦の全貌を伝える。



ナルメルたちが矢を放ち、戦闘開始の合図を送る。
そして、姿を現したナルメルやイナたちは戦う意思を見せずにその姿を晒す。
ドイルが調べた中には、この戦いに疑問を感じている者が多いと判断していた。
もちろんそれが命令である以上、自分や仲間の命を守るために応戦しなければならない……そんな状況下でこの戦闘に参加している者が多いと感じていた。


本当に亜人が憎い場合は、そういった感情をむき出しにして向かっていくはずだが、ドイルが見ている中ではそういう者は少ないかいないように感じていた。


――ある男を除いては。


王国軍は、戦闘の中で傷付いていたドワーフやエルフたちを捕虜として扱っていた。
捕虜とはいえ、その扱いは酷くはないものとドイルは認識していた。
だが、時々だが拘束していた者たちが命を断っているという報告が入っていた。

ある時その状況を調べたいとドイルは申し出たが、既にその存在は”処理”されたという。

数回同じような状況があり、調査したところその全ての時間帯に”オギブス”が警備に当たっていたことが判明した。
このような戦闘時の中、味方を疑うことは自分たちの死にもつながるため、ドイルは自分と信頼のおける側近でこの状況を調査していた。


しかし、決定的な証拠もなく、攻撃に対しても応戦しなけらばならず、疑いの域から先に進めることができない状態が続いた。


そんな時、ステイビルが自分の目の前に現れて、エルフとドワーフの間に立ちこの状況を改善させてくれる材料を持ち込んでくれた。





「……そうして考え付いたのが、お互いが無抵抗のままでいるという作戦だったのだ」




一般の警備兵が隊長の命令に従わず、自分勝手に攻撃を加えることはない。
もしもそれをやってしまった場合は、その者の今後の地位も財産も全て失ってしまうことになるだろう。

だからこそ、行動を起こせる人物は隊長クラスの人物であると判断した。





「だが、ここまで見事に尻尾を出してくれるとは……思わなかったがな」


「やはり、最初の会談を失敗させたのは……」


「いや、そこまでは判っていないのだ。オギブスがその時に警護として来ていたのか、記録を調べようとしたが……そこまでの時間はなかったのだ」



ドイルと部下の頭の中には、ステイビルが王宮から追放された事実が頭に浮かんだ。



「そこは、私ができる限り調べてみましょう」


「……すまない、ドイル隊長」


「……一連の出来事……”あの”男のしわざでしょうか?」


「そうとも言えないぞ。あいつはずる賢くはあるが、そこまで先を見通せるような男ではない。自分一人で行動しているのであれば、とっくにボロを出しているはずだ」


「ということは、他にも誰か手を貸している……と?」


「私もその可能性が高いと思っている、だがその者がどこに隠れているかまではわからんがな……おそらく、そのことについては口を割るとも思えん……でなければ、今頃何か自分の身を守ることを口にしてそうだしな」



「確かに……あの男なら……」






そういってドイルは、騎士団員に抱えられながら町の奥へと連れ去られていくオギブスの姿をみた。








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