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第六章 【二つの世界】
6-47 鐘の音
しおりを挟む”カンカンカーン!カンカンカーン!カンカンカーン!”
乾いた鐘の音が、町の中に何度も何度も鳴り響く。
この町に以前住んでいた住民は、ほとんどいない。
住民を守りながら戦闘となると、警備兵もかなり疲弊した戦い方となるため、ある時期から住民は近隣の町へ避難させていた。
見張り台の防壁の前の広場に、兵士たちが集まってくる。
そこには、王宮から派遣された騎士団と精霊使いの姿も見える。
頑丈な鎧に身を固めた盾と槍を持った警備兵が前に並び、その後ろに矢を構えた警備兵が並ぶ。
そして少し高い位置がから精霊使い達が並び、攻撃と防御の役割を請け負っていた。
騎士団はその隙間に配置され、騎士団員だけに支給されるに一点物の剣を抜き構えた。
防具に身を纏ったドイルが物見台に昇り、現在の状況を確認する。
「隊長!準備完了です!」
「よし……敵は?」
「まだ、あそこに一本の矢が刺さっているだけで、それ以外には何も……」
「そうか……気を抜くなよ?……(悟られるぬように……な)」
「はっ!」
見張り役の男は、ドイルの部下だった。
そのため、その言葉の意味は充分に理解をしていた。
この場の指揮は、当直の隊長が行うこととなっていた。
不慮の事故や、本人が交替を望めばその任から逃れることは可能だった。
だが、その後も同じような任を続けられることは出来なくなる。
弱い者の下に大切な兵を預けることは、国にとっても大きな損害であるといつからかこの戦地では、隊長間の中でそのような取り決めが作られていた。
騎士団と精霊使いの者にも指揮を執る者もいた……だが、命のかかったこの場所で地位を争うような行為は愚かだと、そのレースには参加しなかった。
騎士団と精霊使いは、警備兵たちの命を守るようにとだけ指示されていた。
「これは、これはドイル”隊長”……当直の時に襲撃とは、幸運でしたな」
「オギブス隊長……何が幸運なものか。こんな無意味な戦い、いつまで続くのかと思うと気が滅入るわ」
「おやおやおや!ドイル隊長のお身体がすぐれぬ様子ですな……私に”命じて”いただければその任、快く引き受けますぞ!?」
「もしも私がこの戦いの中で命を落とした時……その時は。いや、規則に従って次の者にその任を引き継いでもらおう」
「ちぃっ!?まぁ、ご武運をお祈りしますよ……私は後ろで戦の情報を収集しておきますのでご安心を」
そう言ってオギブスと呼ばれた別の隊の隊長は、不機嫌そうにドイルの部下を手で押しのけて後方に下がっていった
「隊長……」
オギブスとのやり取りを近くで聞いていた部下が、ドイルに気を使って話しかける。
「うむ……大丈夫だ。それより、準備は出来ているな?」
「はい。問題ございません……ですが、これから何をしようと……」
ドイルは部下たちに大まかな話はしていたが、実際にどのように行動するかは伝えていなかった。
それはどこで誰に話が漏れるかわからないためであり、部下たちものことをよくわかってドイルを信頼していた。
「……来たぞ!敵襲ーーー!!」
エルフとドワーフが森の奥から姿を見せた。
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