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第六章 【二つの世界】
6-38 信用
しおりを挟む「あ!」
「……どうされました?私がどうかしましたか?」
「あ……いえ」
ハルナはナルメルから声を掛けられたが、この世界では初対面のはずだった。
しかし、ハルナは反応を示してしまったことで、また自分たちの存在を明かしかねない状況を作ってしまった。
ハルナはまたしても不用意に声を出してしまったことを後悔する。
そして、自分がこのような性格であることを責めた。
「……では、どうぞこちらへ」
いつも聞いていた優しいサナの声が、余所余所しく警戒心を含んだ冷たい声に寂しさがハルナの心に沁みた。
サヤはそんなハルナを置いて、つかつかと指定された席へと向かい何も気にすることなく無作法に椅子に座った。
ハルナもサヤの後を追い、その隣の椅子に腰かけた。
ドワーフの給仕が、それぞれの前にお茶を注いだカップを置いていく。
その間、この場の席に付いている者たちは相手のことを見ずに黙ってその行動を見守っていた。
給仕がお茶を配り終わると、デイムは給仕に向かって一つ頷いて礼を示した。
給仕のドワーフはそれを受け取ると、静かにドアの横で両手を前に組んで静かに自分の位置に収まった。
「……どうぞ」
ハルナとサヤはイナに用意されたお茶を勧められ、断る理由もないためカップを手に取り口に含んだ。
二人はカップを皿の上に戻し、再び視線を目の前に戻した。
「それで……一体何の用なの?」
すべての用意が整ったこの場で、一番初めに言葉を切り出したのはサヤだった。
ほんの僅かではあったが、誰が一番初めに口を開けばよいのかわからない雰囲気であった。
そのためそれぞれが様子を見ていたがのだが、それを鬱陶しく感じたサヤが一番初めに切り込んだ形となった。
「では……率直にも申しましょう。あなた方は何者なのですか?」
その言葉を聞き、二人は何を話すべきか黙っていた。
それを待たずに、ニナがイナの次に言葉を続ける。
「もちろん言い辛いことがあるのは判っています……イナの魔法もあなた方が何かを隠していることは判っています」
その言葉にハルナは、やはりという思いから鼓動が早まるのを感じる。
「……ですが、その行動に悪意は感じられないのも確かです。それは何か事情があってのことなのでしょう……そういう方がステイビル王子と同行しているのもその理由があってのことだと判ります」
「ですから、できればあなた様の目的だけでも教えていただけないでしょうか?その大きな力を持つあなた達が、何をやろうとしているのかを」
イナとニナの言葉を聞き、ハルナはさらに混乱する。
合っているところとそうでないところがあり、それをどのようにして二人の疑問に答えるべきか。
しかしその心配も無用に終わることになる、サヤがハルナよりも先に答えることによって。
「悪いけどね……アンタたちはそれを知らない方がいいよ。変に首を突っ込むと碌なことが無いのは、どこでも一緒なんだよ……だけど、アンタたちの疑問も判る。それに関しては、信用してほしいとしか言えないねぇ」
サヤの言葉に対して、誰一人それを返すことができなかった。
その言葉に対し信用はしないが、ナルメルが少し続いた沈黙を繋げる。
「信用……とまではいきませんが、私はあなたの言葉に従います」
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