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第六章 【二つの世界】

6-37 変わる待遇

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「サヤ、それとハルナ……二人は出てきて、私たちに付いてきなさい」



横になっていたサヤは、片眼を開けて頭だけを向かせて鉄格子の方をみて、またすぐ頭の後ろを向けてしまった。


本来ならば、そんな態度を見せれば立場が不利な状態がさらに悪化していまうようなものだ。
しかし、今回は隣にいたデイムもその態度に対しては、何も反応を見せない。
ただひたすら、自分たちの要求に近い命令に応じてくれるまで待っていた。


「ちっ……ようやく眠れると思ったのに」


ハルナは少し離れたところで、座ったままその様子を見ていた。
ようやくサヤが身体を起こしだしたため、ハルナもゆっくりと膝に手を付けて自分の身体を起こし立たせた。


その様子を見たデイムは、鉄格子の鍵を開けゆっくりと扉を開きハルナたちに外に出るように促した。



「どうぞ……」


「ありがとうございます」


「お礼を言うこともないけどね、ハルナ。アタシたち閉じ込められてたんだよ?」




その言葉を聞きながら、デイムは開けた扉を閉め再び鍵をかけた。



「それでは参りましょう……こちらです」


「あの……縛らなくても……いいんですか?」



その言葉に真っ先に対応したのは、味方であるはずのサヤだった。




「アンタ……縛られるのが好きって……そういうやつだったんだ、アンタは!?」




ハルナはその言葉に耳と頬を赤く染め、焦りながら否定しようとした。
だが、周りの状況を見るとその意味が伝わってないのか……それとも面白くない冗談だったのか。
イナたちは真顔でハルナたちの行動を注視していた。

イナはそれ以上ハルナたちがやり取りをしないことを確認し、”もしも望みであるならばそのようにしますが?”とだけハルナに告げた。

ハルナは、恥ずかしさからうつむき加減のまま顔を横に数度振った。





ハルナとサヤが――今度は目隠しもなく――通された場所は、イナたちが職務を行っている崖の上にある屋敷の中に案内された。
ハルナは一度経験済みだが、初めて昇る崖に造られた階段にサヤは一段一段上がっていくにつれ、身体が強張っていくのがハルナは後ろから見て取れた。
そして一旦ハルナたちは応接室に通され、準備があると待たされた。
案内してくれていた警備兵は、自分のことをチラチラと気にしていたことがハルナには気になった。

イスに座ると、牢屋に入れられた時とは全く異なる飲み物と食べ物が持ち運ばれたことに、ハルナは違和感を感じる。
だが、その隣にいるサヤは、差し出されたものを遠慮することなく次々と口の中に運んでいった。



そして、カップの中とポットの中のお茶がなくなった頃、ドアの向こうからノックされた。



「お待たせしました……ご案内します」




そう告げると、デイムはハルナにたちに自分の後についてくるようお願いした。
そして、ひとまわり大きな扉に到着し中にいる者たちに扉を叩き合図をする。



「長老……お連れしました」




扉を開き、デイムは二人に中に入るように伝える。
そしてハルナは、中に入ると思わず声を上げた。



「――あ!」




そこには見覚えのあるエルフが座っていた……ナルメルだった。







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