問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』

山口 犬

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第六章 【二つの世界】

6-20 出発

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「ソイ……本当にいいのか?店の方は問題ないのか?」


「はい。店の方はブロード様とも相談し、問題ないことを確認しております。それよりもステイビル様のお役に立つようにとブロード様から仰せつかっておりますので」




モイスティアからグラキースへ向かう前日、ソイが急にステイビルに同行させてもらいたいと申し出た。
人手があるに越したことはないが、ステイビルはソイの生活もあるためそのことについて心配していた。
だが、ソイの答えは問題ないとのことだった。
ソイは馬も扱え、様々な場面での交渉ごとに対しステイビルやハルナよりはスムーズに怪しまれずに対応ができるいった。
それはこの社会から理由がわからず嫌われているステイビルにとっては、そのことはありがたい申し出ではあった。

そのことに対し一晩考え、ステイビルはの結論はソイの雇い主であるブロードがどのような判断をしているかの確認だった。


結論として、その問題も解消されソイはステイビルに協力してもらえることになった。
ハルナたちと同様に報酬の件を持ち出したが、ソイはその申し出を拒否した。
それはこの王国の中において、国民が幸せに暮らしていけるのは前国王のグレイネスと若くして国を治める才能を見せていたステイビルの提案の数々のおかげであるとソイは言う。
その環境から得た利益をここで使わせてもらうことで、ステイビルや”まともだった頃の王国”に対して恩返しができると言い、ステイビルから提示された報酬をソイは断った。



「では、出発しますよ」



「――よろしく頼む」




その言葉を合図に、幌付きで二頭立ての馬車はゆっくりとグラキース山側の関所に向かって走り始めた。





ステイビルは、この町を無事に出られるか不安があった。
エストリオと出会った時、自身の一番身近な存在であったオリーブを連れて行かれた際に明らかにステイビルを”追い詰めていく”感じが見て取れた。

エストリオは元々、ステイビルのことを幼いころから評価してくれていた。
勿論キャスメルのことも目にかけていたが、あの時点でこの国をどちらかに任せてよいかと言えばステイビルの方だとエストリオが言っていたと他の者の口から聞いた。
その言葉は嬉しくはあったが、キャスメルが聞けば面白くはないだろうと判断しその者にそのことはこれ以上誰にも話さないように申し付けたことを思い出す。

だが、今は完全にその評価はどこにも感じられない。
それはきっと、キャスメル側の者がエストリオをそう仕向けるような状況を作り上げたのだろうと推測していた。
でなければあの職務に忠実なエストリオが、あの状況で不法侵入に近いハルナたちが黙って見過ごしてもらえるような性格ではないからだ。






「ステイビル様……そろそろ関所です。荷物の中に隠れてください。ハルナ様やサヤ様もお願いいたします」



そのソイの言葉を聞き、ハルナたちは積まれた材木の隙間の中に用意した空間に身を隠した。
用意ができしばらくして、馬の足音がゆっくりと速度を落としていくのが聞こえる。
この町を出る数台の馬車が、ソイの前に並び検問を受け順番に門を通されていった。
いよいよ、次はソイの番となり馬の歩みを進める。
だが、門の奥から一人の人物が姿を見せる。




「――よし、止まれ」




その声にステイビルは聞き覚えがあった……エストリオだった。










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