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第六章 【二つの世界】
6-9 怪しい者
しおりを挟む「あ、ステイビル王子!!」
サヤは駆けだしそうになる、ハルナの腕を掴み制した。
そのせいもあり、ハルナは前のめりになりコケそうになっていた。
「ちょっと……なにするの!?」
「アンタまだ、飲み込めていないようだからもう一度言うわよ!?この世界は”い・ま・ま・で・と・は・ち・が・う”んだ……もう少し慎重に行動しなってば!!」
「そ、そうだったわね……ごめん、サヤちゃん」
「ったく……多分、何回もやりそうな気がするけどね……でもこんだけ短い間でも、アンタはこの世界に溶け込んでたってことなんだろうね」
「サヤちゃん……」
「ほら、尾行するよ!?何ぼさっとしてんだ!!」
そういうとサヤは、ハルナの手から買ったばかりの服を奪い、袖を通して身支度を整えながらステイビルたちが通っていた道に向かって歩いていった。
「あ!?ちょっと……ま、待って!サヤちゃん!!」
ハルナも急いで袖を通しながら、先に歩きだしたサヤのことを追いかけていった。
「ステイビル様……そこに、お座りになってください。いま、お水を……」
「水は……ゴホッ……いい……少し……休ませて……くれ」
そう言い終えたステイビルは、再び咳き込み始めた。
ここ数日はほとんどステイビルの咳は止まらず、食べ物もろくに口にしていない。
殆どが水分ばかりで、あのたくましかったステイビルの肉体が日毎にやせ細っていくのをオリーブは見てきた。
泣きたくなるのを我慢してきたが、オリーブの感情はもう限界が近づいてきている。
(この町のどこかの宿で……いえ、部屋を借りて看病した方がいいのかもしれない……せめて最後の時は一緒に)
オリーブはステイビルの背中に手を当てて、肋骨が浮き出ている身体を労わった。
「あの……もしかして、そこにいらっしゃるのは……ステイビル……王子様?」
オリーブは背中から急に声をかけられ、驚いて振り向く。
そして、ステイビルの前に石の板を作りだし、その身を守る。
「え!?ちょっと待って待って!!怪しい格好しているけど、怪しい者じゃないですから!?」
後ろでその言葉を聞いたハルナは、思わず吹き出しそうになった。
だが、この場はサヤが対応するとのことで、ハルナはフードを深く被り何も話さないことを約束した。
ハルナが対応すると、今までの記憶からステイビル周囲の状況も知っていることもうっかり話してしまうことになるだろうとサヤは判断した。
ここは、何も知らないフリをする方が怪しまれずに済む……この意見にハルナも納得をして、この場はサヤに任せることになった。
「ならば……あなた達は?」
「あ……っと。そうですね、ステイビル王子を助けに来た……とでもいいましょうか」
「ステイビル様を……!?あなたちは一体……もしかして……他の国からいらっしゃったので?」
「そ…そう!それ!!あたし達は他の国から来たんだよ!?」
(サヤちゃん……それじゃバレバレだよ……)
ハルナは疑われはしないか心配したが、オリーブとステイビルはよほど疲弊していたのだろうか。
それとも、もう一人でステイビルの面倒を見ることに限界を感じていたのか……オリーブは、サヤの怪しい”設定”を受け入れた。
ホッとしたオリーブに、再度緊張した空気が纏う。
ハルナの後ろから、新しい人物がここに現れた。
「お前たち……ここで何をしている?」
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