762 / 1,278
第五章 【魔神】
5-153 対戦
しおりを挟む「サヤちゃん!!!そのヴァスティーユの正体は、オスロガルムよ!!!」
「ちっ!?判ってたんだよ、そんなことは!?せっかくこいつを油断させようとしたのにさぁ!!……ったくアンタは!!」
そういうと、サヤは後ろに跳躍しヴァスティーユと距離を置いた。
モイスはその横に降り立ち、サヤにその言葉の真意を問う。
『サヤよ……それはどういうことだ?』
「どうもこうもないんだよ、このタコっ!」
そう悪態をついてから、サヤはモイスの質問に答える。
ハルナとフウカが繋がっているように、サヤもあの二人とは意識の繋がりがあった。
閉ざすこともできたのだが、二人はそれをサヤにお願いしていた。
二人はそこに、――生前には感じられなかった――家族としての絆を感じていた。
あの爆発の際、繋がりが消えた……存在が消滅した時の感覚とは異なり、何かに乗っ取られたような感じがした。
その瞬間、サヤは急いでその繋がりを断ち、こちらの情報を探られないようにした。
サヤたちは前もってそうなることを決めていた、乗っ取られた場合にはその繋がりを断つということを。
二人も、自らがサヤの邪魔にならないように、そうなることを望んだ。
「だから、アタシはあいつらの望み通りに繋がりを断ったんだ」
「それでわかったてたのね……ヴァスティーユが操られていたこと」
サヤのその言葉は平常を装っていたが、その深いところにそうさせたことによる不快感を抱いていることがハルナには感じられた。
だが、今はそんな時ではなかった。
『ククククッ……これでようやく、そろったな。お前たちが消えれば、この世界は元のままだ!悪いがお前たちには消えてもらうぞ!!』
『――そうはさせんぞ!!』
モイスが、ヴァスティーユとヴェスティーユにめがけて氷のブレスを吐き出した。
その結果は以前と変わることがなく、ヴァスティーユとヴェスティーユを避けて通過していく。
これこそが、この二人の中にオスロガルムという存在が支配しているという証になる。
『バカめ!そんなもの、今更通用せんわ!!』
だがモイスは、それでもブレスを吐き続けた。
これは攻撃をするためではなく、時間稼ぎの意味があった。
まずはブレスによって視界を塞ぎ、次にその周りに氷の壁を創り出してオスロガルムをその中に閉じ込めた。
これならば直接攻撃ができなくても、オスロガルムの行動を制限させられることができる。
これもハルナとの訓練の中で、ハルナから提案されたことだった。
「サヤちゃん、どうするつもりなの?」
「まぁ、こんな状況になったのもあんたのせいだよ。あんたが来なけりゃ、もう少しスムーズに決着がついたんだ」
「ご……ごめん」
「……謝ったところで何も変わらないさ。あんたも戦えるんでしょ?ヴェスティーユは任せた、アタシはオスロガルムをやる。いいね?」
「わ、わかった」
そして、モイスのブレスは徐々に薄れ、その先には氷の厚い壁ができていた。
その向こうには、中に閉じ込められたヴァスティーユとヴェスティーユの姿がある。
ハルナは、その中の任されたヴェスティーユを警戒した。
0
お気に入りに追加
374
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢は大好きな絵を描いていたら大変な事になった件について!
naturalsoft
ファンタジー
『※タイトル変更するかも知れません』
シオン・バーニングハート公爵令嬢は、婚約破棄され辺境へと追放される。
そして失意の中、悲壮感漂う雰囲気で馬車で向かって─
「うふふ、計画通りですわ♪」
いなかった。
これは悪役令嬢として目覚めた転生少女が無駄に能天気で、好きな絵を描いていたら周囲がとんでもない事になっていったファンタジー(コメディ)小説である!
最初は幼少期から始まります。婚約破棄は後からの話になります。
悪役令息に転生したけど、静かな老後を送りたい!
えながゆうき
ファンタジー
妹がやっていた乙女ゲームの世界に転生し、自分がゲームの中の悪役令息であり、魔王フラグ持ちであることに気がついたシリウス。しかし、乙女ゲームに興味がなかった事が仇となり、断片的にしかゲームの内容が分からない!わずかな記憶を頼りに魔王フラグをへし折って、静かな老後を送りたい!
剣と魔法のファンタジー世界で、精一杯、悪足搔きさせていただきます!
【完結】天下無敵の公爵令嬢は、おせっかいが大好きです
ノデミチ
ファンタジー
ある女医が、天寿を全うした。
女神に頼まれ、知識のみ持って転生。公爵令嬢として生を受ける。父は王国元帥、母は元宮廷魔術師。
前世の知識と父譲りの剣技体力、母譲りの魔法魔力。権力もあって、好き勝手生きられるのに、おせっかいが大好き。幼馴染の二人を巻き込んで、突っ走る!
そんな変わった公爵令嬢の物語。
アルファポリスOnly
2019/4/21 完結しました。
沢山のお気に入り、本当に感謝します。
7月より連載中に戻し、拾異伝スタートします。
2021年9月。
ファンタジー小説大賞投票御礼として外伝スタート。主要キャラから見たリスティア達を描いてます。
10月、再び完結に戻します。
御声援御愛読ありがとうございました。
毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。
克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。
【完結】神様に嫌われた神官でしたが、高位神に愛されました
土広真丘
ファンタジー
神と交信する力を持つ者が生まれる国、ミレニアム帝国。
神官としての力が弱いアマーリエは、両親から疎まれていた。
追い討ちをかけるように神にも拒絶され、両親は妹のみを溺愛し、妹の婚約者には無能と罵倒される日々。
居場所も立場もない中、アマーリエが出会ったのは、紅蓮の炎を操る青年だった。
小説家になろう、カクヨムでも公開していますが、一部内容が異なります。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。
そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。
【カクヨムにも投稿してます】
転生先ではゆっくりと生きたい
ひつじ
ファンタジー
勉強を頑張っても、仕事を頑張っても誰からも愛されなかったし必要とされなかった藤田明彦。
事故で死んだ明彦が出会ったのは……
転生先では愛されたいし必要とされたい。明彦改めソラはこの広い空を見ながらゆっくりと生きることを決めた
小説家になろうでも連載中です。
なろうの方が話数が多いです。
https://ncode.syosetu.com/n8964gh/
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる