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第五章 【魔神】
5-138 役目
しおりを挟む「うぅ……わぁ!!」
ハルナは外に広がった光景を見て、モイスのあまり動かない首元にしがみつく。
視界の上には障害物が何もない青い空が広がり、その下には木々が川のように流れて行く。
『……大丈夫ですか?ハルナ様』
「えぇ、大丈夫です。もう慣れました……多分」
ハルナたちは、再び外の世界に戻ってきた。
ハルナが訓練をしていた場所は、森の中に群生する木の一つの頂上に付近に存在する一枚の葉の中。
そこから飛び出し、いきなり眼下に高度の高い位置から見下ろす視点が広がり、飛行能力のないハルナの身は強張って当然だった。
背中に感じるその様子を気を使てくれたモイスに対し、ハルナは問題ないと心配させないようモイスに答えた。
ハルナも次第にこの状況にも慣れてきて、元の世界でも見れなかったような景色を楽しむ余裕が心の中に生まれてきた。
モイスもハルナが怖がらないように気を使って羽をはばたいてくれていたため、乗り心地は問題なかった。
『ハルナ様……お気をつけて』
後ろから声がして振り返ると、そこにはシュナイドの姿がある。
その遠くには他の大竜神、土の”クランプ”と風の”ウインガル”の姿も遠くに見えた。
「シュナイドさん!これから、戻られるのですか?」
『はい……これから何が起こるのかわかりませんので。サナの傍にいて守って……』
『ふむ……それもよいか。本来はあの場所を守ってほしいところなのだがな』
『何を言っておる……今はそのような時ではないのだ。だdからこそお主もこのような危……』
「――え?」
『……よせ、シュナイドよ。これはワシが選んだのだ、余計なことを口にするのではない』
モイスのその言葉に、さすがのシュナイドもそこから先を口にすることはなかった。
だが、ハルナはそれでは納得できないと、モイスとシュナイドにその言葉の意味を問いかけた。
「ちょっと……なんですか?危ないっていう言葉が聞こえてきたんですけど?」
『なんでもございません。ハルナ様には他のことを気にされるよりも、対象の者たちを……』
何かをはぐらかそうとするモイスに対し、ハルナは怒りを覚える。
確かに今までは自分よりも上の存在だったのだが、今回の件をきっかけに――ハルナは本当には思っていないが――立場が入れ替わっていた。
それを利用して、ハルナはモイスに命じた。
「モイスさん、シュナイドさん……なんですか?本当のことをおっしゃってください」
『……』
『……』
「――本当のことを言いなさい!」
『……はっ。実は……』
そう述べてから、モイスはハルナの命令に応じた。
大竜神がハルナを乗せ、サヤとオスロガルムを探す案を出したのはラファエルだった。
時間も差し迫っているとのことで、移動速度の速い大竜神で探した方が早いという理由は出発前にモイスからも聞いたこと。
ラファエルの言葉の先にはこう続いた――相手に狙われる可能性が高くなるということを。
オスロガルムはモイスやラファエル達を攻撃できないが、その反対も同様だった。
だが、サヤの攻撃についてはその限りではない。
いまサヤは、オスロガルムを狙って倒そうとしている。
それくらいの能力を持つ者から狙われて、しかもハルナを背負った状態……さらには、上空を飛びどこからでも狙われ易い。
その行為は無事であるほうが難しいと、ラファエルの話を聞いた者たちは考えた。
それによって、サヤの位置を見つけ出すことができるという考えもある……それはその者が囮になるということ。
その話をして、ラファエルは誰もその役目を請けたくはないだろうと考えていた。
最終的には、強制的に誰かに命令することも考えていた。
だが、その役目に真っ先に手を挙げた者がいた。
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