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第五章 【魔神】
5-119 秘密の場所で1
しおりを挟む薄暗い空間の中、淡い光を放つ繭がその中心に存在していた。
淡い光は呼吸のように、ゆっくりとした速度で明暗を繰り返している。
その横で胡坐をかき、両肘は内腿の上に乗せて両手を組みながら、ただその様子を見守っている存在があった。
そこに、また新たな存在がこの場に加わってくる。
『……お疲れ様。どんな具合?』
『はい。いまのところ問題はございません、ラファエル様……』
『そう、何かあったらすぐに知らせて頂戴ね。この状態を管理できるのはあなただけなのですからね、よろしく頼みますよ……ガブリエル』
『かしこまりました……』
そう返答するガブリエルは、再びすべての意識を自分の作業に集中する。
その言葉に、ラファエルは視線をあげて光の繭に向けて見守る。
(ハルナ……お願い、無事に戻ってきて……あなただけが希望の光……)
ハルナはステイビルたちと別れた後、サヤとオスロガルムに対抗するために新しい力を身に付けるためにラファエルと行動を共にした。
そこで告げられたのは、全ての元素を使えるようにすることだった。
「あの……それ、本当に大丈夫なんですか?」
『えぇ、大丈夫です……ハルナさんなら、きっとこの方法は成功します』
「で、でも。本当は一人一属性なんでしょ?」
『それは、この世界に住む人々の話です。ですが、それにも例外があります』
この世界に住む普通の人間であれば、素質があっても二つの属性までが限界だが、ハルナにおいてはその容量が十分にあるとラファエルは答えた。
しかし、ハルナにとってはその言葉は安心材料にはならなかったようだった。
だが、このままではみんなの期待に応えられないと、ハルナはもう一度覚悟を決めラファエルにお願いをした。
なるべく苦しくならないようにと、最後に付け加えて。
こうして、ハルナの強化が始まった。
まずは火の大精霊である”ミカエル”を呼び出しハルナの体内にその元素を流し込んでいった。
元素を流し込むことにより、ハルナとフウカの中で馴染ませて元素を定着させていこうという判断だった。
『ハルナさん……どうですか?』
「あ、はい。大丈夫です、なんともないですね」
『そ、そうなの?結構な量を一気に流し込んでいるんだけど』
「は……ハル姉ちゃん……私……あぁ、みんなが呼んでる……」
「ふ!……フーちゃぁぁぁん!?」
その声に反応したラファエルは、急いでミカエルに流し込んでいる元素を止めるように指示した。
受け手となるハルナよりも、その仲介役となるフウカがミカエルの元素の量に耐えられず、フウカの存在が消えてしまいそうになっていた。
『まさか、一番元素に馴染んでいる精霊が耐えられなくなるなんて……』
『ミカエル……これは決して精霊が悪いわけではないわ……そんな言い方はやめなさい』
『申し訳ありません、ラファエル様……ハルナさんも申し訳ありません』
「い……いえ!?大丈夫です!それにフウカちゃんも、もう大丈夫そうですから!」
ハルナはエレーナたちが崇める大精霊から、詫びの言葉をかけられることに恐縮した。
しかし、それよりもハルナに対する態度よりも、ラファエルに対する態度がハルナはずっと気になっていた。
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