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第五章 【魔神】
5-101 意外
しおりを挟む「な……に!?」
ステイビルたちは、自身の耳に聞こえてきた言葉を疑った。
今まで人間や他の生物を虫けらのように扱い、その命を遊びのように刈り取ってきた魔物が人間と協力することを求めてきた。
そのことに対し、誰もが怪しむことは決して不思議な思考ではない。
それを察したオスロガルムは、その言葉の元となる考えをステイビルたちに話して聞かせた。
『魔物が人間と協力しようするのは意外だったか?……だがな、これには考えがあってのことだ』
「……考えだと。それはどういうことだ?」
オスロガルムはステイビルの言葉を冷笑し、人差し指を向けて低い声で返した。
『お前たちは、あの二人が繋がっていると考えたことはないのか?』
今までステイビルがまとめて対応していたが、我慢ができなくなったエレーナが声を荒げた。
「そ、そんなわけないじゃない!?現に私達はサヤの手先のヴェスティーユに殺されかけたのよ!」
『……それが、どうした?アイツは死んだ生き物に魔素を込め、魔物を生み出す術も身に付けておるぞ』
その事実に、エレーナには思い当たることがあった。
モイスティアでの襲撃の際に、ヴェスティーユはラファエルの力によって討伐されたと聞いていた。
だが、その後もヴェスティーユとは対峙しているのだった。
ラファエルの力で消滅した存在が、復活しているのはそういう理由があったのだとエレーナは推測した。
しかし、そのことに反発の姿勢をみせたのはステイビルだった。
「魔神よ……我々の絆は、そんなことでは揺らぐことはない!」
だが、オスロガルムにしてみればエレーナもステイビルの言葉も、二人の願望とも言える域を超えるものではなかった。
『ふん、あいつらは他の世界から来たのだ。”この世界を滅ぼすこと”を企んでいると考えたことはないか?』
「「……!?」」
”世界が滅ぶ”というキーワードが出たことにより、ステイビルたちのオスロガルムへの警戒が一段に上に引き上げられらた。
ステイビルたちもそのことは、ハルナを通じてラファエルから聞かされていた。
そのことに関しては信じたくはなかったが、間違ってはいないとグレイネスやモイスたちも結論付けた。
そのため、いまハルナは来るべき日に備えて準備を進めているのだ。
そのことをオスロガルムが知っているということは、どこからかその情報が漏れたか、別な系統からそのことを知っていた可能性がある。
後者であれば、サヤがそのことをオスロガルムに話していた可能性が考えられるが、前者であれば誰かがその情報を漏らしていたのではと考えるが、その”誰か”については考えることをステイビルは拒絶した。
『……世界が滅ぶと聞いても、驚かぬようだな。そのことがありえぬと思っておるのか、はたまたすでに知っていたのかは知らぬがな』
「……」
情報が不確定なうちに反応しては不利になってしまうと、ステイビルは黙ったままオスロガルムの言葉を待った。
『まぁ……どちらにしてもだ。このことは近いうちに起きる可能性が高い出来事だと言っておこう』
そう言ってオスロガルムは、自身が知っていることについて語り始めた。
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