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第五章 【魔神】
5-98 モイスからの忠告
しおりを挟む「王子、これを!」
渡された木箱の中には、透明で透き通った球状の水晶があった。
ステイビルはその箱ごと受け取り、テーブルの上に置いた。
「ステイビル王子……これは?」
使者がついた騒ぎを聞きつけ、別な小屋を借りていたエレーナ達もステイビルの元へ集まった。
「これがモイス様がおっしゃっられていた、連絡を取るための水晶だ。王宮のどこかにあるとは聞いていたが、実際に目にしたのは初めてだ」
「……ということは、何か状況に変化が?」
ソフィーネの言葉に対し、ステイビルは一度だけ頷いて応答した。
「それで、どうやってモイス様と連絡を取られるのですか?」
ステイビルはそこまで知らなかったため、これを運んできた者の顔を見てオリーブからの質問を尋ねた。
その者は、モイスが水晶の前の存在を感じ取り、モイスから語りかけてくれるはずとのことだった。
そのまま待つと、数分も経たないうちに透明な水晶に変化が現れた。
水晶の中には元素が渦巻き、複数の渦が絶えず変化を見せている。
『……よ……イビル……聞こえておるか?』
「はい、聞こえております!モイス様!」
モイスからの途切れ途切れの音声に、ステイビルは自然と大きな声で応答をしてしまった。
『ぬ!?そんな大きなお声を出さぬとも聞こえておるわ!』
「も、申し訳ありません!?モイス様……」
『うむ……少し魔素が濃くなってきているようだの。そのため、伝達のための元素が乱れており聞き辛いようだな』
「魔素です……か。最近この周辺では徐々に襲ってくる魔物が強くなってきております。まだまだ我らの戦力で対応可能ですが。……もしかしてそのことと何か関連があるのでしょうか?」
『魔物が強くなってきているだと?……そうか、その可能性もあるやもしれんな。とにかく注意しておくのだ。それよりも、もっと厄介なことがある』
「厄介事ですか?それは一体……」
『あいつが動き出したのだ……魔神、オスロガルムがな』
「――!!!」
『今は何をしているか判らんが、いろいろと探っているようだ。魔素が強くなってきたのもそのせいかもしれん、とにかく何が起きるか判らん。気を付けて行動せよ』
「「はっ!!」」
この場にいる全員が、モイスの言葉に返事をした。
モイスもその返事を聞き、満足そうに交信を終えた。
「オスロガルムが動き出したか……」
「私たちも少しは強くなってきています、何とかなんじゃないですかね?」
「その考えは迂闊だ、エレン。魔神はモイス様やラファエル様と同じような存在なんだ。そんな考えでは命を落とすぞ!」
「アルベルトの言う通りだ、エレーナ。……だが、何もできないわけではない。しかし、軽率な判断や行動は慎むべきだな」
「とにかく、これからは魔神と遭遇する可能性もあるということだ。今後はそのことも念頭に置いて行動をするぞ」
「「はい!!」」
そこからステイビルたちは、西の国でオスロガルムと対峙した時の情報を元に、遭遇した際の行動を練った。
まずは戦うことは避けるべきとし、いかにして命を落とさないようにするべきかを考えた。
本当は誰もがハルナの今の状況がどうなっているか気にはなっていたが、それぞれの役目を果たすべく、今自分たちができることだけを話し合った。
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