問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』

山口 犬

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第五章 【魔神】

5-78 引き換え

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「シュクルス様、どうかその剣を」


「し、しかし……相手は得体のしれない魔物、これを渡してしまえばよくないことが起こるのではないですか!?」


「それでも……クリエ様が助かるのであれば。兄も……カステオも、きっとそう言って下さるでしょう」




シュクルスの心の器は、徐々に不安という名の感情で満たされていく。
その感情が頂点に差し掛かった時、シュクルスは誰かの意見を求めて周囲を見回してた。

キャスメル、ステイビル……最後にグレイネスに視線を送った。
それぞれ、一度頷いてくれただけだった。

シュクルスはそれを了承の意ととらえ、背中にかけていた剣のベルトを外した。
そしてベルトを剣の鞘に巻き、横の状態にして剣をニーナに差し出した。

ニーナは両手を伸ばしてその剣を受け取ろうとする、それはシュクルスの行動の意味を理解したからだった。

ニーナが許可をしたとはいえ、この剣は西の王国ができた時から国宝として守られていた存在。
現在許可して貸し出しているとはいえ、他の国の者の手からそれを危険な存在に渡してしまうことなどできるはずがない。
西の王国の者……ニーナがその役目をしなければ、二国間の問題にまで発展しかねない行動であることが分かっていた。



ニーナは腕を伸ばし、その剣を受け取ろうとする。
シュクルスは、ニーナの手の上にそっと剣を置いて手を離した。


「「――!?」」


ニーナが腕を伸ばした状態の力では、その剣の重みを支えることは出来ず落としそうになる。
同じような身長の小柄なシュクルスが、軽々と持っていたためこんなに重いとは思っていなかったようだ。

シュクルスが再びその剣を掴み、ニーナから剣の重さを救ってあげようとしたがすぐに手を引いた。
ニーナはとっさに肘を曲げ、身体でその剣を抱えてみせた。
それにより、一瞬固まった場の空気が再び元の状態へと戻った。


ニーナは剣を抱え、再びヴァスティーユへ身体の正面を向ける。



「やっと……わかってくれたのね?」


そうしてヴァスティーユは、近付いてくるニーナの前に抱えられた剣に手を伸ばして掴もうとした。




「……あら?どうしたの?ここにきて気がかわったのかしら?」



身体をねじるようにして、ニーナはヴァスティーユが伸ばしてきた手を避けた。


「クリエ様を……どのようにお返しいただけるのでしょうか?数日後などというのであれば今すぐこの剣をお渡しすることは出来ません。もし先ほどの水の大竜神様のような魔法であれば、お姿や声だけでも確認させていただけなければここから先のお取引はできません!」


「フーン……ここまで来て。あなたは先ほどのお話を聞いていなかったのかしら?この取引はこちらからの最大限の譲渡、力づくで……!?」


ヴァスティーユはまたしても、強い口調の途中で口ごもってしまった。
その間の沈黙は、ここにいない誰かと話しているかのようだった。




「……わかったわ。その証拠をいま見せてあげましょう」


再び石を持つ手を前に出すと、そこの前には黒い霧の膜で包まれた空間が現れた。
その中には意識を失っている、クリエの姿が見えた。


「――く、クリエ!?」


その空間に飛び出しかけたキャスメルの身体を、アリルビートの腕が横から邪魔をする。
キャスメルはそれをはねのけようとするが、キャスメルではアリルビートの腕を退ける力はなかった。




「……ほら、この通りよ。その剣を私に渡してくれだされば、この人間は解放します。お分かりだと思いますが、もしも不穏な行動や約束を違えるような行動をとられた場合には、この娘の存在はあなた方の目の前できえてしまうことになりますわ」


「そ、そんなこと……!?」

できるはずがないと、キャスメルが口にしようとしたがそれよりも早くヴァスティーユが続きを口にした。


「そんなことができるかできないかは、そちらの大竜神がご存じですわ……ね?」


ヴァスティーユの問い掛けに、一同の視線がモイスに集まる。
その視線を感じたモイスは一言だけ”グゥ……”と唸り、ヴァスティーユの言葉が正しいことを告げた。



「では、その剣をこちらに渡していただきましょうか?」


ヴァスティーユは自分から手を伸ばすことはせず、ニーナが自分の元に差し出すように胸の前で腕を組んで行動を待った。




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