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第五章 【魔神】
5-66 避難
しおりを挟むキャスメルは、その存在がいなくなって気付いた。
気付いたというより、その気持ちにはっきりと目を向けるようになった。
クリエはいつも、キャスメルに気遣ってくれていたことを、寄り添っていてくれたことを。
ソイランドでの問題に関しても、自分の生まれた町をなんとかしたいという気持ちがクリエの中にあったはずだった。
私情よりも王選のためにと、キャスメルがこの町を問題を通過すると決めた際にそれに従ってくれた。
思い返せば、キャスメルが落ち込んだ時も何かに失敗したときも、いつもキャスメルの味方をしてくれていた。
初めは自分が王子だからと思っていたが、誤った感情を持った時には忠告をしてくれたり叱ってくれたりもした。
不安な時には、いつも傍にいてくれていた。
王選が始まったころは、ハルナとエレーナと一緒の組み分けされなかったことについて、王国の決定に不満を抱いていた。
カルディとアリルビートは、一定の距離を保ったまま接してくる。
シュクルスとクリエは、剣士と精霊使いとしては少し頼りなく感じる。
キャスメルには、あのモイスティアですごした日々が頭の中にあった。
自分のことを理解してくれるエレーナ、やさしくて包容力のあるハルナ。
あの日から、キャスメルはあの二人のことが頭から離れることがなかった。
その思いを口にすることはなかったが、行動や表情で示していることはあったかもしれない……いや、きっとあっただろう。
しかし、クリエたちはそんな態度をとっても嫌な顔をせずにここまで一緒に来てくれた。
一番情けなく愚かなのは自分だと気付いた時、既に大切な仲間の一人を失った後だった。
これ以上は、キャスメルの命に関わる状況になりそうだった。
今回荷物を持って運んできたカルディは、強引に眠らせることも視野に入れ始めた……その時。
『……お前たち!!ここから逃げよ、早く!!』
「「も……モイス様!!ど、どうしてここに!?」」
『説明している暇はない!!ここからすぐに離れるのだ!!そうすれば、後でワシの能力で……時間がない!!』
そう告げるとモイスは一つ石を掴み、スキルを発動させる。
『いいか、怯えるな。お前たちはワシが守ってみせる。静かにしておればいい!』
そういってシュクルスに向かってその石を近づけた。
――。
シュクルスは一瞬にして、暗闇の中に場所を変えた。
その中では声も出せず、自分がどこに向いているのか立っているのかも分からない。
自分の身体を触ることすらできず、意識だけでこの空間の中に存在している。
シュクルスは、この何もない空間の中で気が狂いそうになる。
だが、この状況になる前に大竜神のモイスが言った言葉を思い出し、深呼吸のようなものを繰り返し気持ちを落ち着かせる。
ここには感じない心臓が限界に達しそうになる時、この世界に新しい存在が増えたことに気付く。
しかし、その存在に話しかけようにも声が出ない。
時間が経つにつれ、その存在は増えていく。
存在が四つになると、それ以上増えることはなかった。
思い返せば、いまあの場所にいた者たちがこの空間の中に入ってきたのだろうとシュクルスは考えた。
お互い何らかの存在であることは、確認しているのと感じられるがそれを確認できる手段が今はないためこのままこの状況を受け入れることにした。
どのくらいの時間が経ったのか……この環境に慣れた頃、シュクルスの意識に五感が戻ってくる。
「――くっ!?」
シュクルスは久々に感じる太陽の光に目を細めた。
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