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第五章 【魔神】
5-64 推測
しおりを挟む「王子……よくぞご無事で!!」
「カステオ王子!!」
「ご無事でなによりでした!!!」
生き残った西の王国の兵たちは、カステオの姿を見て無事な姿を見て喜びあっている。
だが、その前まで腕や足がちぎれかけていたことは言わないでいた。
言う必要もないし、サナがそんな魔法を使えるとなれば、サナの身に危険が迫る可能性が高い。
状況を整理すると、信じたくないような被害が報告されてくる。
ハルナとエレーナはその報告を聞くたびに、顔を手で覆い耳を塞ぎたくなるような内容ばかりだった。
だが、カステオはその報告もしっかりと前を見つめ動揺をした表情を出すこともなくその話を受けている。
その被害の内容は、西の者たちだけではない。
ステイビルたちがオスロガルムと対峙している間に、町を守ってくれていた兵たちの中にも信じたくもない内容が含まれていた。
ステイビルたちは、全ての犠牲者に対し黙とうをささげ、安らかな眠りにつくことを願った。
一通りの状況確認が済み、ステイビルはカステオにニーナが無事に東の王国で保護されていることを伝えた。
先代の王が病で急死し、その後を追うように王妃もこの世から旅立っていった。
カステオにとっては、残された家族であり最も守るべき対象の人物がニーナだ。
ステイビルの口からその名を聞けたことが、この状況で最も心が落ち着くことができる内容だった。
そして、ニーナとステイビルがいれば西の王国は安泰だろうとも、この場で考えるべきでない将来のことにカステオは思いを巡らせた。
そして、ステイビルはカステオに本題を切り出した。
「……あの魔神、オスロガルムといったか。奴の目的は……」
「我が国に伝わる、あの剣を探していたようだ」
「あの剣って、いま確か……もがっ!?」
エレーナが剣のことについて話そうとすると、アルベルトがエレーナの口を片手で塞ぎもう片方の手で人差し指を立てて自分の口に当てていた。
「エレーナ……今、それを口してはならん。どこで誰が聞いているか判らんからな、用心してくれ」
ステイビルからそういわれて、エレーナは自分が口を塞がれた理由が分かった。
「かの魔神はあの剣を狙っていた……なんのために?」
ステイビルの質問にそれぞれが腕を組んで思考を巡らせる中、ハルナの頭の中に浮かんだものがある。
「――あ」
「どうしたのハルナ?何かわかったの!?」
「うん、一つ思い出したことがあったんだけど……あの剣ってたしか、コボルトさんの瘴気を消すことができましたよね?ほら、フーちゃんと同じような力が」
その話を聞き、ステイビルも思い出した。
一匹のコボルトを助けるために、コボルトにあの剣を預けていたことを。
「まさか、その剣は……あの魔神を消し去る力がある……と?」
「だから、その剣を奪ってしまえば自分が消されることがない」
「でも、なぜ今まで黙ってたのかしらね?どうしてこのタイミングで?」
エレーナの疑問には誰も答えを持ち合わせていなかったし、その推測すら情報が少なすぎて導くこともできなかった。
次に起きた現象について話題が移る。
不思議だったのは、シュナイドのブレスが全く通用しないということだった。
シュナイド自身も、今までそのような現象は見たことがないという。
だが、ボーキンを襲っていたり、城内で不意打ちされそうになった魔物たちには効果があった。
それとハルナやエレーナ、ブンデルの攻撃はオスロガルムにはダメージは少ないが届いていた。
オスロガルムが立ち去る際に置いていった瘴気の渦に対しても同じような現象が起きていたのをステイビルは見ていた。
そこから導き出したものは、瘴気の渦もオスロガルムの一部ではないかという推測だけだった。
次にに話し合われたのは、瘴気の渦を切り裂いたアルベルトの刀だった。
その前にアルベルトは持っていた剣で対抗した。
その結果、ほかの物質と同じように飲み込まれていったが、あの刀だけは切り裂くことができた。
エレーナはアルベルトの剣技という説もあげてみたが、あの動作自体に特別な意味はないとアルベルト自身は告げる。
そして、最後にステイビルが持っていた盾についての話題があがる。
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