問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』

山口 犬

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第五章 【魔神】

5-62 命令

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黒い瘴気の球体は、この部屋のあらゆるものを全てを吸収していく。
そして、進む方向にはステイビルたちがいる。
何もしなければいずれは、全てのものを飲み込んでいってしまうことになるだろう。
進行速度はゆっくりとしたものだが、消すことができないことと移動してくることにが得も言えない恐怖が沸き起こる。

エレーナもハルナも精霊の力で、その進行を止めようとした。
ハルナに至っては、フウカの力を借りて瘴気を蒸発させる光を込めて放つ。

だが、その効果は全くと言っていいほど得られることはできなかった。
ハルナもエレーナもあの頃よりも力の使い方が上達しており、神々の加護もすべてではないが得られている。
その状態でも、オスロガルムが置いていった瘴気の塊を滅することができないのは、それだけ力の差があるということだろう。

今はそれを悔やんでいる時間はない、これらをどうするべきか次の手を考え出さなければならない。
次に考えたことは、さらに大きな力を持つシュナイドの力を借りることだった。



サナは、その後ろでカステオに対してヒールを掛けた。
オスロガルムという大きな危険はとりあえず去ったため、命に問題がないうちにカステオを回復させた方が良いと判断した。
四肢が分断されてしまっていた場合では、サナの魔法でもつなげることはできない。
今回は、関節周囲の組織が破壊されていただけだったため、無事にヒールの魔法により関節の修復は可能となった。
そのあとサナは、この現状を何とかしてもらえないかとシュナイドにお願いをした。
様々な場面を乗り切ってきたあのハルナとエレーナの力をもってしても、今起きている障害を排除することができなかったことは魔法をかけながら経過を見ていた。



「シュナイド様、あの物体をどうにかすることはできないでしょうか?私たちの力ではどうすることもできないのです」


その言葉を聞いたシュナイドは、少し残念そうな息を漏らしサナに告げた。


『サナよ……お前はワシにお願いをする必要などない。一言命じれば良いのだ!』

「え?……でも、シュナイド様に……対して……そんなこと」


ステイビルはサナとシュナイドのやり取りを見ているが、口をはさむことはない。
この二人の間にしか築かれていない関係があるため、へたに口を出すとシュナイドの機嫌を損ねる可能性を考慮してのことだ。
しかし、この状況に対応できそうな存在は、以前状況を改善したと大精霊と同じような存在のシュナイドだけだとここにいる誰もがそう思っている。


「サナ!時間がない、早く!!」


誰もが思うことを口にしてくれたのは、隣にいたブンデルだった。


「しゅ……シュナイド様……あれを……と、止めてください!!」


『よしよし!サナの”命令”とあらばしかたない、下がれお前たち。巻き添えを喰らうぞ!!』


そう声をかけられたステイビルたちは、シュナイドの言葉に従い後方に退避する。
命令をされたシュナイドは、満足そうに瘴気の渦の前に進んでいった。
そして長い半分を起こし、ゆっくりと息を吸うように後ろ身体を引いた。




『――ゴッ!!!』



シュナイドの口からは、城が混じった青に炎が吐き出された。
体内で圧縮され高温となった炎の息の周囲は、その熱で周囲が揺らいで見えるほどだった。
先ほどよりも高熱な炎によって包まれた瘴気は、シュナイドの息によって消滅するものだとステイビルは考えていた。
しかし、その考えが楽観的な物であった目の前の現象に気付かされる。


「な……なんだと!?」



吐き出される炎の息の中を、黒い瘴気の渦は何事も無いように進んでくる。
よく見れば、先ほどのオスロガルムと同様に、瘴気の渦を避けるようにして炎は通り抜けていく。

それに気付いたシュナイドも、さらに炎の量を増加させる。
後ろにいるハルナたちの顔にも、熱気が伝わってくるほどの熱量だった。
それでも、瘴気の渦はその歩みを止めることはなかった。

ステイビルはサナにお願いをし、シュナイドの攻撃をやめてもらった。


次にアルベルトが剣で切り付けた。
しかしあの時と同じように、切り付けた剣は抜けずにゆっくりと渦の中に飲み込まれていくだけだった。

突然、状況に変化が訪れる。
球体をしていた瘴気の渦は、形を変えスライムのように伸びてアルベルトに襲い掛かってきた。


急激な変化によって、誰も声を出すことができない。
アルベルトは体勢を変えた際に、腰にドワーフから譲られた刀に触れた。
そして、最後の抵抗としてアルベルトはその刀をとっさに引き抜いた。









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