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第五章 【魔神】
5-33 掛け
しおりを挟む『……フン、ワシも落ちぶれたものだ。こんな小さな生き物に……心配されるとは……な』
シュナイドは少しだけ笑ったような感情がこもった言葉を発した。
ガブリエルは、そんなシュナイドの言葉に反応してみせる。
『あら、わたしもあんたのこと心配してたじゃないのよ?』
しかし、シュナイドはその言葉には何も示さずに、サナにだけに意識を向けている。
「傷を……まだ負っておられるのですね?」
『……』
サナの質問にシュナイドは答えない。
ガブリエルも腕を胸の前に組んで、姿を見せないシュナイドがいる方向を見つめている。
その視線に応じてか、シュナイドは姿をゆっくりと姿を現す。
先ほどのサナを飲み込もうとした口のサイズとは異なり、この空間に収まるような大きさで姿を見せた。
「「――!!!!」」
その姿を見て、ブンデルとサナは驚愕する。
聞いていた戦いの凄まじさを目の当たりにして……
シュナイドの身体は一部……だけではなく、所々が欠如している。
エネルギー体の存在だからなのか、臓器のようなものは見られない。
血液のようなものもなく、傷からは何かが漏れている。
『傷の治りが悪い……生きた者たちをあれ以来、口にしてないからな』
『……だから、違うんだっていってるでしょ?それとは関係ないの!』
『うるさい!ワシの身体のことはワシにしかわからんのだ!!ここから……出ることができれば!!』
『また、殺戮を繰り返すっていうの?今度は私が許さないわよ!?』
「ま、待ってください!?お二方、どうか落ち付いて下さいませ!」
サナは、ヒートアップする二人の間に身体を割り込んだ。
ブンデルは大きなエネルギーの塊の存在の間に入ることは自殺行為だと思ったが、なんとかサナは無事だった。
「あの、本当に生きた者を口にすると……治るのですか?」
サナからシュナイドにかけた言葉に、ガブリエルは割って入ろうとする。
だが、サナの強い意志を汲み取りその手前で自らの行動を制した。
『そうだとも……そうに決まっている』
「私に任せていただけませんか?もし、効果がなかった場合は、私の身を捧げます」
「サナ!」
「その代わり、ブンデルさんだけは返して頂きたいです……お願いします!」
『よかろう……その提案、受け入れよう!で……それで、何をするというのだ?』
「はい、私はヒールの魔法を授かっておりまして、そちら魔法を貯めさせていただけませんでしょうか?」
「ま、待ってサナ!確かにヒールは傷を治す魔法だけど、その……シュナイド様は大きなエネルギーの塊の存在。生き物とはちがうんじゃないか!?」
『そうね、私も魔法には詳しくないけど。私たちに効果がある魔法なんて……そんなの私たちに近い。もしくはそれ以上の存在じゃないかな?確かにモイスの加護で少しは、能力が通常のドワーフよりは上がっているみたいだけど……それでも私たちの量を超える物は持っていないよう見えるけどね……』
その言葉を聞いて、ブンデルもうんうんと頷いてサナに考え直すようにと目線を送る。
『どう?考えが変わったなら、いまであれば私があなた達をステイビルやハルナのいるところまで逃がしてあげるけど?もしも、考えを変えないのなら……死にたいと思う者を止めることはしないわ』
サナは、ゾッとした。
ガブリエルが言うには、”サナは絶対に失敗をしてシュナイドの餌食となってしまうだろう”……そう告げている。
サナの心の中で最初に芽生えた気持ちが、その不安を消し去る。
確かに悪いことをしてきたのかもしれない……もし、傷が治ってしまうとまた同じことを繰り返すことに。
その時は、サナが攻められてしまうことになるだろう。
だが、それ以上に目の前に傷付いている存在がいることが放っておけなかった。
それに、サナはどこかでシュナイドは邪悪な存在ではなと感じている。
この世界の者たちを、襲っていたというシュナイド。
それでは、自分たちドワーフや人間、エルフなども他の種族や同族を殺めたりしなかったのか?
サナがすんでいたドワーフの町や、ブンデルの生まれたエルフの村でも争いは起きた。
自分たちが生き延びるために、森の動物の肉や植物を積んで口の中に入れている。
シュナイドがやっていたことは、そういう行為ではなかったのか。
そんな気持ちがサナの中に巡っていた。
そして、サナは決心してガブリエルに告げる。
「私……やってみます!」
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