問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』

山口 犬

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第四章  【ソイランド】

4-155 サヤ

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「ほぅ……ヤラレタか」



骨だけで作られた竜の首を撫でながら、自分のコマがやられたことに対して、さほどの問題でもない感じでつぶやく。



ここは深く暗い場所、大きな存在は自分の能力を与えた存在の一部が消滅したことに気付いた。
そのことに関して痛みは生じないが、今まで身体の一部を構成していた感覚は身体の中に穴が開いたような感覚に似ていた。

詳細の場所までは判らないが、与えた二つの力が近い場所に集まっていた。
一つの力は従順で、もう一つの力は反抗的な意志を持つ。

あの者たちに力を与えたあの時のことを思い返す。


復讐に燃えたエルフは膨大な魔力を欲し、他の世界から来た人間は特別な力を欲した。
力を得るには、その受け皿となる肉体の器の大きさが問題となる。
全ての力を与えることも可能であるが、おおよその者はその力の大きさに風船が破裂してしまうがごとく消滅することになる。

エルフは、今の自分が扱える魔法の威力を高めるためにさらなる魔力を欲した。



人間の女は、一つでなく二つの能力を欲しいといった……その説明を聞かせた上にも関わらず。
よほどの自信があるのか、それとも何の考えもない頭の軽い者か。

結果、そんなことはどうでもよかった。
与えた力をモノにできなくても面白いものが見れるだけで、何一つ痛むものはない。
それに万が一力を受け入れることができたなら、便利な手が一つ増えるだけのことだった。


あの人間はそれを乗り越えた。
永い苦しみを耐え、それを飲み込んだ。
そして、手に入れた能力は魔力を形にする力とこの世に存在するものを飲み込む力を手にした。

さらにその力を自分望むように改変をさせ、様々な力の形へと変化させ自分の者にしていった。
その力は届いてきているが、今まで考えたことのないような使い方に感心したものだった。


その後、何度か襲い掛かってきたが、圧倒的な質量で押し切って事なきを得た。
しかし、そのことに関して不思議と怒りはない。
裏切られたというよりも、自身が考え付かなかった魔力の使い方をすることに対する興味の方が勝っていった。
そのため、存在を消すこともせずにそのままにすることと、いつでも向かってきてもいいことを許した。


その後、二度ほど歯向かってきた。
その度に隠し玉を用意し、驚かせてくれたものだった。

それ以降は、手の内を見せないためかちょっかいを出してくることはやめた。
今では自分の手下を増やし、徐々に力を蓄えているようだった。




「アヤツは本気でワシに歯向かうつもりか?……それとも、ワシの力を独り占めしたいがためにか?」



一度だけ、何のために襲ってくるのかを聞いた。
その答えは、もっと力が欲しいとのことだった。





「なんにせよ、動き始めたということか……癪に障るが、アヤツの言う通りになりそうだな」


”何のために力が欲しいのか”と聞いた。
その答えは、生き延びるためと返し、世界が滅びるといった。

そのことを鼻で笑ったが、人間は真剣な言葉で答えた。
深く掘り下げると、大きな力がこの世界を消そうとしているということだった。
”誰が?”と問いかけたが、その答えを返してくることはなかった。



大きな存在は、そんなことを思い出しながら最後に人間にやられた傷を治すために再び眠りについた。





「コイツも大したことなかったねぇ……でも、傷つくと修復でまたあの男が大変になるんだから気を付けなよ……ヴァスティーユ」

「はい、お母様……」

姿を見せたサヤに対し、膝を付いて礼をするヴァスティーユ。
最後のエルフの魔法からその身を守ったのは、サヤがモイスから奪った能力のおかげであった。



サヤは、地面に転がっている身体から離れた頭部の髪を掴んで目の高さまで持ち上げた。
その元エルフだった男の眼の中には、意識の光は見えない。
そして、つかんだ手から黒い液体が顔を飲み込みその姿を消した。
エルフが存在した形跡は、地面に転がっている体幹だけがその証明となった。




「うーん……やっぱり魔法は無理か。あの力が使えると便利なんだけどなぁ……」


サヤは今までも魔法が使える生物を何度か取り込んできたが、その力を習得することはできなかった。
それは精霊の力に関しても同様だった。


「……それで、これからどうされるのですか?」


頭を下げたまま、ヴァスティーユはサヤに問いかける。


「そうね……」


腕を組んで考える素振りを見せ、ヴァスティーユはその答えをじっと待つ。


「まぁ……てきとーにいくよ」


そういうとサヤは歩き始め、その後ろをヴァスティーユは付いていった。










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