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第四章  【ソイランド】

4-143 チェリー家の屋敷で1

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「な……なんと!?そんなことが……いや、しかし良くご無事でお戻りくださいました、王子」

グラムとパインは、娘のチェリーからガラヌコアで起きた出来事を聞き、顔が青白く変化していく。


ここは、チェリー家の屋敷。
ステイビルたちは、日が落ちた頃にソイランドに到着した。
働きづめであったグラムを休ませるために、司令本部に立ち寄ってからグラムを連れ屋敷に戻ってきた。

このところグラムはソイランドの警備のために、様々な組織の再構築を図るために奔走していた。
幸い、今までべラルドと手を組み甘い汁を吸っていた者たちも、特に大きな騒動が起きることもなかった。
ステイビルも、グラムの苦労を労う必要があると考え、半ば強制的にグラムに休息をとらせることにした。

久々に一家そろっての時間を過ごすためにという気づかいも含まれていたが、ステイビルに起きた出来事にその雰囲気もどこかへと吹き飛ばされていった。


「……心配をかけてすまなかった。ガラヌコアに近いこの町が今後、王国の重要な防衛拠点となる可能性が出てきた。すぐにでも王都へ伝達を送り、援助や防衛強化に対する要請を出すことにしよう」



そうすることにより、ソイランドの町がさらに安定する町に向かうことができるとステイビルは考えている。
そこには今まで助け出すことができなかった謝罪も含め、より手厚い保護をすると約束してくれた。
すでに王国から警備兵の増員と物資が運び込まれ始め、水の精霊使い数名も初期の支援隊の中に含まれていた。
それによって今後、物資や資源の不足に対して起こる不安の問題は解決されていくことになるだろう。


――コンコン


扉を叩く音が聞こえ、パインが入室を許可する。
扉の外にいるメイの後には、小さなクリアの姿も見えた。
新しく誂えた小さいサイズのメイド服をまとい、きれいな姿勢でメイの後ろを付いて歩く。


廃墟の中での薄汚れた姿を見た後では、整った制服姿はクリアが親から与えられた本来の可愛らしさが出ていた。
その姿に、ハルナもエレーナも思わず口元が緩んでしまうほどだったが、クリアにしてみれば立派に業務をこなすためにも、二人はクリアが仕事をこなせるように冷静にその場を過ごしていた。


メイとクリアの二人で、それぞれの前にお茶の入ったカップを置いてく。
この場にいる全員に配置し終えると、扉の近くに立ちお辞儀をして待機する。




「それで、王子はこれからどこに行かれるのですか?」


「そうだな……数日中に出発の準備を整え、王都への追加の依頼を行った後にフレイガルへ向かおうかと思っている」



フレイガル……ハルナがこの王国内で行ったことのない最後の町。
活火山が近くにあり、通年を通して温かく過ごしやすい町と聞いている。
ソイランドの町より東に進んでいくため砂漠地帯ではなく、ラヴィーネとはまた別な緑が生息する地域で、ここから二・三日で到着できる距離にある。

王国を狙う存在も気にはなっているが、本来の目的は全ての大精霊と大龍神から加護を受けることにある。
以前パインやグラムにそのことを聞いてみたが、二人は何も知らないとのことだった。


そのタイミングで、メイが言葉を挟んだ。


「皆さま、ご夕食の用意が整いました。食堂の方へどうぞ……」


エレーナは緊張感が徐々に薄れていったのか、はたまた食事という言葉に触発されたのか。
腹部から胃が動いたことにより”ぐぅー”という音が、周囲に聞こえる音量で鳴る。




テーブルにはできる限りの食事が並んでいる。
ステイビルの命令によって、豪華な食事を出さないようにとの指示が出されていた。
この町の状況を知っているため、ここで贅沢をしてはいけないというステイビルの思いだった。
前回チェリー家の屋敷でもてなされた際は、各個人の前に皿が並べられていた。
今回は、大皿に乗せられた料理をとり分けていくというスタイルに変わっていた。
この屋敷のシェフがステイビルの要望に応え、最大限のもてなしを考えた結果のようだった。


ステイビルは、その対応に満足し感謝の気持ちを告げて食事を楽しんだ。
その間、全員が気遣いこれからのことや今までのことを口にすることなく、会話と美味し料理を楽しんだ。



夜は更け、ハルナたちは割り当てられた寝室で疲れを癒すために眠りについた。








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