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第四章 【ソイランド】
4-137 簒奪
しおりを挟む「小夜……サヤ……あなたはもしかして……!?」
「そうだよ!あたしはねハルナの友達だよ。向こうの世界からきたんだ」
サヤは機嫌よく、声を高くして笑う。
その理由は、目の前の相手が自分に従う者ではなく、まだ対等の立場で言葉を交わせる者と会話ができることに喜びを感じていた。
自分に従っている、ヴァスティーユとヴェスティーユは完全にサヤに怯えてしまっており、ちょっとした冗談にも怯えてしまい、その反応がまたサヤを苛立たせてしまう。
その反応に怯えて、サヤはさらに機嫌を悪くしてしまい、負の連鎖にハマってしまう。
それを解消するために、二人に暴力を振るってみたり、その他の生贄を用意させたりしていた。
それが今、今までにないくらいの優秀な人物を目の前にし、普通に会話をしていることがサヤにとっては嬉しかった。
今までは、偉そうな人物を相手にしているとき、自分のことを怪しむように威圧的な態度で接してくるものが多かった。
しかしそれも、ものの数分で立場は入れ替わることになる。
腕や肢のどちらか一本を吹き飛ばしてしまえば、どんな相手でもすぐにサヤに対する態度を改めることになった。
たまにそれでも歯向かうものはいたが、サヤに傷をつけることなどなく一瞬にしてこの世から存在が消えてしまっていた。
ステイビルはさすがに一国の王子といった風格で、この状況下でも落ち着いた態度を見せる。
最初は未知なる状況の恐怖に襲われていたが、それすらも自力で抑え込んでいたことにもサヤは喜びを感じていた。
それに、ステイビルはサヤに怯えておらず、相手を怖がったり馬鹿にしたりした様子も見られなかった。
そのことがサヤにとっては今までにないくらい心地よく、腕の一本でも消したい時の反応も見たい気持ちになるが、いまはその行動はやめておいた。
「ここは一体……私はいま、どういう状況なのですか?」
「あぁ、ここはあたしが作った場所の中。あんたはいま私の中にいるようなものね。設定は私が自由に決めれるみたいだけど、初めて使った力だからよくわかんないのよ」
ステイビルは今のサヤの言葉に違和感を覚える。
サヤの中にいる……設定……初めて……いろんな言葉をつなぎ合わせて整理しようとしたが、ステイビルの中の情報が不足し、想定すら導き出すことはできなかった。
「あ……そうそう。でもね、あんたも同じ体験したことあるでしょ?」
そういわれるが、ステイビルにはすぐに思い当たることがなかった。
サヤは、それを察してか話を続ける。
「……ほら、あのトカゲ。あいつも使えてたんでしょ?なんていったけ……あのトカゲの名前?」
「トカゲ……!ま、まさか……モイス様のこと……」
「ん?……そうそう!モイスって呼ばれてたわ、あのトカゲ!あいつが使ってた力なんだけど、これ……しらない?」
ステイビルの頭の中には、先ほどまでの情報を付け加えて最悪なストーリーが組み立てられた。
だが、確認しないことには話が進まないと考え、その思い付きを少し違った方向でステイビルはサヤに問いかけた。
「もしかして……貴女も、モイス様と同じ力を使えるのですか……?」
「いいや、あのトカゲから奪ったのよ。これでずっと逃げ回っていたからなかなか見つけられなくってさぁ!」
嬉しそうには話すサナを他所に、ステイビルは酷い衝撃に襲われた。
だが、調子よく話を続けるサナを止めることはできず、言葉を挟むタイミングを待ちその時を得た。
「モイス様の力を奪ったのですか?……モイス様は今は……どちらに」
その質問にサヤの声はさらに明るくなる。
そして、自慢げにステイビルの質問に答え始めた。
「そう!この力、あのトカゲから奪ってやったのよ!これでもうどこに隠れても探し出すことができるってわけ!!」
「探す……モイス様h、今はどこかにお逃げになられたのですね」
気持ちよく話していたサヤは、ステイビルに話を割り込まれて不快な感情を突きつける。
だが、ステイビルはそれに動じずにサヤの言葉を待った。
「フン……そうよ。半分食いちぎってやったけど、半分は逃がしちゃったからね。どこにいるのかわからないけど、この力があればどこに隠れても、もう逃がしゃしないからね!」
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