589 / 1,278
第四章 【ソイランド】
4-135 捜索
しおりを挟む「王子が……ステイビル王子が……見当たらないんです!?」
メリルと行動していたステイビルが、メリルが目を離した隙に消えてしまったという。
開いていなかった建物の扉が開いていたため、中に入って確認をしたがその中にもステイビルの姿は見えなかった。
敵の襲撃を恐れ、ハルナたちは一塊になり他の建物の中も探索する。
だが、どこにも探しているステイビルの姿も、その痕跡も見つけることはできなかった。
「どうしましょう……もしも、王子の身に何かあったら……私……わたし!?」
メリルは両手を顔で覆い、足の力が抜けて膝から崩れ落ちて床の上にへたり込む。
「落ち着いてください!王子は大丈夫です、きっと大丈夫ですから!」
あまりにも取り乱すメリルの肩に手を置いて、安心させるように話しかける。
エレーナも分かっていた。
王子にもしものことがあったなら、一番傍に居た者が責任を感じるだろう。
そして、真っ先に疑われてしまうことも。
ガラヌコアで三組に分かれて、それぞれが探索を行っていた。
他のチームでその姿を見た者はいない、馬車の警備をしていたメイヤもその様子を見てはいなかった。
メリルを落ち着かせている間、メイヤとソフィーネがその周囲を調べて回ったが、砂の地面にステイビルの足跡すら見つけることはできなかった。
ハルナたちは今の状況を整理し、この問題に対する策を練る。
メリルが落ち着きを取り戻したのも、エレーナが掛けた言葉のおかげだった。
この状況はここに居る全員の責任であること、誰にでも起こりえた問題であることを淡々と説明をした。
メリルもエレーナの必死さを目にして、次第に冷静さを取り戻していった。
恐怖に怯えるよりも、まず自分がやれることをするべきだという思いが心の中に浮かび上がらせることができた。
そこからこの村の中の再度の探索と、この町の周囲の探索が必要であるという結論に至る。
その役目を誰にするかという問題については、これ以上の被害を拡大させないために町の周囲の探索についてはメイヤとソフィーネでおこなってもらうことでその案は了承された。
そして、早速行動を開始する。
ソフィーネたちは、馬車から武器を数点取り出し外に向かっていった。
もし万が一、何かが起きた場合や判明した場合、ハルナたちは精霊使いの力を使い空にその力を打ち上げることにした。
ソフィーネとメイヤは、連絡用の花火を打ち上げることで、ハルナたちに知らせることにした。
そして、決して単独では無茶な行動はしないことと約束を交わした。
ハルナたちは、何が起きても大丈夫なようにそれぞれの気配を感じながらまとまって行動をする。
先ほどのこれからの行動を検討する際に、大きな疑問が生じていた。
『ステイビル程の実力がある者が、何一つ痕跡も残せずに失踪した』ということ事実に。
そのことが意味するものは、よほど腕の立つ者か精霊使いのように何らかの異能者であることが考えらえる。
それと、その目的についても意見が交わされた。
殺害が目的ならば、その身を隠したことに対しての関連性は低いというのがメイヤとソフィーネの見解だった。
これについては、暗殺者としての視点からの意見だった。
ステイビルの命だけを狙うのであれば、その場で絶命させるだけで目的は終了する。
身をさらうことは、すぐにはその命まではとられることはなく、交渉や本人から情報を引き出すために行った行動である可能性が高いと告げた。
その言葉にメリルはホッとした表情を見せたが、相手の目的がどのようなものか判らないため楽観できない状況に変わりはなかった。
そこから目的について意見が出始めたが、失踪した時間が長くなるほど追いつくことが難しくなるため、それらを考慮しつつ行動を開始することになった。
ハルナたちは、一つ一つ建物の中や周囲を複数の目でステイビルの痕跡を捜し歩いた。
そして、再びステイビルが姿を消した建物に戻ってきたが、結局何一つその痕跡を見つけることはできなかった。
0
お気に入りに追加
375
あなたにおすすめの小説
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む
家具屋ふふみに
ファンタジー
この世界には魔法が存在する。
そして生まれ持つ適性がある属性しか使えない。
その属性は主に6つ。
火・水・風・土・雷・そして……無。
クーリアは伯爵令嬢として生まれた。
貴族は生まれながらに魔力、そして属性の適性が多いとされている。
そんな中で、クーリアは無属性の適性しかなかった。
無属性しか扱えない者は『白』と呼ばれる。
その呼び名は貴族にとって屈辱でしかない。
だからクーリアは出来損ないと呼ばれた。
そして彼女はその通りの出来損ない……ではなかった。
これは彼女の本気を引き出したい彼女の周りの人達と、絶対に本気を出したくない彼女との攻防を描いた、そんな物語。
そしてクーリアは、自身に隠された秘密を知る……そんなお話。
設定揺らぎまくりで安定しないかもしれませんが、そういうものだと納得してくださいm(_ _)m
※←このマークがある話は大体一人称。

婚約破棄され逃げ出した転生令嬢は、最強の安住の地を夢見る
拓海のり
ファンタジー
階段から落ちて死んだ私は、神様に【救急箱】を貰って異世界に転生したけれど、前世の記憶を思い出したのが婚約破棄の現場で、私が断罪される方だった。
頼みのギフト【救急箱】から出て来るのは、使うのを躊躇うような怖い物が沢山。出会う人々はみんな訳ありで兵士に追われているし、こんな世界で私は生きて行けるのだろうか。
破滅型の転生令嬢、腹黒陰謀型の年下少年、腕の立つ元冒険者の護衛騎士、ほんわり癒し系聖女、魔獣使いの半魔、暗部一族の騎士。転生令嬢と訳ありな皆さん。
ゆるゆる異世界ファンタジー、ご都合主義満載です。
タイトル色々いじっています。他サイトにも投稿しています。
完結しました。ありがとうございました。
聖女を騙った少女は、二度目の生を自由に生きる
夕立悠理
恋愛
ある日、聖女として異世界に召喚された美香。その国は、魔物と戦っているらしく、兵士たちを励まして欲しいと頼まれた。しかし、徐々に戦況もよくなってきたところで、魔法の力をもった本物の『聖女』様が現れてしまい、美香は、聖女を騙った罪で、処刑される。
しかし、ギロチンの刃が落とされた瞬間、時間が巻き戻り、美香が召喚された時に戻り、美香は二度目の生を得る。美香は今度は魔物の元へ行き、自由に生きることにすると、かつては敵だったはずの魔王に溺愛される。
しかし、なぜか、美香を見捨てたはずの護衛も執着してきて――。
※小説家になろう様にも投稿しています
※感想をいただけると、とても嬉しいです
※著作権は放棄してません

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

【完結】内緒で死ぬことにした 〜いつかは思い出してくださいわたしがここにいた事を〜
たろ
恋愛
手術をしなければ助からないと言われました。
でもわたしは利用価値のない人間。
手術代など出してもらえるわけもなく……死ぬまで努力し続ければ、いつかわたしのことを、わたしの存在を思い出してくれるでしょうか?
少しでいいから誰かに愛されてみたい、死ぬまでに一度でいいから必要とされてみたい。
生きることを諦めた女の子の話です
★異世界のゆるい設定です
飯屋の娘は魔法を使いたくない?
秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。
魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。
それを見ていた貴族の青年が…。
異世界転生の話です。
のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。
※ 表紙は星影さんの作品です。
※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる