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第四章 【ソイランド】
4-102 砂漠の施設16
しおりを挟む「……な、なにをする!?」
警備兵がこの場から去ろうとするコルムを引き留めようとしたが、メイヤがそれを止めた。
コルムの足音は、次第に小さくなっていき消えていった。
「どうして、あいつを逃がしたのですか?あいつは裏の組織のトップで……」
「大丈夫ですよ。あのくらいがトップなら尚更ですね……あの傷はこの建物に潜入しているもう一組に任せましょう……私たちはまず、メリル様を安全な場所へお連れしないと」
「そ……それはそうですが……あ、ちょっと!?」
メイヤは警備費の男の話を無視して、メリルの手を取り部屋奥の通路へと導いていった。
「ここが出口です」
シーモは何もない壁のブロックを数個引き出し、その引き出したブロックを取っ手として身体で引き壁をずらしていく。
「ぐっ!!」
シーモは決して肉体労働派ではない、だが何とか”いいところ”を見せようと必死に力を込めている姿に手を貸すのは良くないとハルナも感じ取っていた。
――ビュッ!!
ゆっくりと開かれていく隙間からは気圧か外の風が強いためか、砂が混じった風が吹き込んでくる。
三人は建物の外に出て、コルムの姿がないか周りを見渡す。
その視点の先に、砂の丘を進んでいる人影を見つける。
「あれは、コルム!?あいつあんなところに!!」
シーモはあの人影を見つけて歩き始める。
ハルナたちもシーモの後ろをついていくが、シーモはそんなに体力に自信があるわけではなかった。
砂の丘を登るその歩みは、ハルナよりも遅い。
距離は縮むことはなく、良くて同じような距離が保たれているままだ。
コルム自身も、瞬発力には自信があっても持久力の能力は低いと思われる。
状況としては、このままでいいはずもない。
丘を越えた先で、姿を見失うことにもなりかねない。
シーモを置いていくことも考えたが離れることによりシーモが襲われては、庇って亡くなっていったロイに申し訳が立たない。
そう考えて、ハルナはフウカにお願いをする。
フウカは元気いっぱいに返事をし、その依頼を承諾する。
ハルナたちよりも先に進み、自分の能力の有効範囲にコルムが入るまで砂の風に紛れて近づく。
「……この辺かな?」
精霊が力を使う際には呼吸は必要はないが、ハルナのやっていたことのマネをしてフウカは大きく深呼吸をした。
「――それ!」
フウカのかわいい掛け声とともに、コルムの正面から不自然な突風が吹き付ける。
その風に押されて、コルムはひっくり返るように上ってきた砂の丘の斜面を転がり落ちる。
「……!!」
叫び声のような声が聞こえたが、その声は風の音でかき消されていた。
フウカのおかげで、ハルナたちとの距離は、先ほどから半分ほどに縮まった。
だが、コルムからハルナたちの存在を認識されることにもなった。
こうなればもう身を隠す必要はなく、堂々とその距離を詰めることができる。
「ソフィーネさん!」
「お任せを」
ハルナの声掛けに応じたソフィーネが、鎖を外された獣のように飛び出していく。
「……ひぃっ!?」
今度ははっきりとコルムの声が聞こえた。
砂の上を自分よりも早く近付いてくるその様子は、再びあの時の恐怖を思い起させるにはきっかけには十分だった。
慌てて転げ落ちた砂の丘を登っていくコルムは、少し上ったところでまた戻ってきた。
そして、辺りの砂を手でかき分けて何かを探している。
時間がかかったが、砂をかき分ける手探していたものが触れる。
「あった!!」
それを手の中に握りしめて、再び砂の丘を登ろうとする動作に入る。
だが、その行動は許されなかった。
「その手に持っているもの……こちらに渡してもらえる?」
逃走すべき方角にはすでに、ソフィーネがその経路を塞いでいた。
男は逃げられないと観念し、手に持っているものをソフィーネに差し出した。
それを手にしようとしたその時、ソフィーネは殺気を感じ身をかがめて回避行動をとる。
そして、そのとった行動は正解だった。
コルムの頭に一本の矢が刺さり、自分がなぜ死んでしまったのかの理由もわからないまま絶命していた。
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