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第四章  【ソイランド】

4-97 砂漠の施設11

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男はソフィーネに背後を取られ、口を塞がれた状態に未知なる恐怖を覚える。
今まで、自分に気付かれずに背後を取る者などそうそういなかった。


ランジェから聞いていた話だと、相手の戦力は大したものではないと。
そのため、ランジェが捕まったと聞いた時には時にはランジェの力では当然だと思っていた。

抹殺命令が自分に来たときは喜んだ、その女を始末すれば、今度は自分がその席に着くことができると。
自分より実力が下のランジェが地位としては上にいた。
あの女は自分の身体を使い、あの地位を手にしていたのだとその男は信じて疑っていなかった。


ランジェを始末し、粉の製造法と流通を手にすれば組織の中で幹部も夢じゃない。
……その夢はもう少しで叶うものと思っていた



塞がれた口の下、喉元には冷たい短剣の刃が当たっている。
身動きできない時間が続くと思われたが、喉にあてられた短剣が外される。
塞がれた口も自由になった瞬間、男はその場にしゃがみ横に転がって距離をとった。



先ほど自分がいた位置に向かってナイフを投げようと目標を定めるが、すでにそこには目標となる人影はいなかった。
シーモともう一人の女だけが、先ほどと変わらない位置にいた。



(ど……どこだ?どこにいった!?)



消えた気配を探そうと、男は周囲を見渡す。
暗闇の中から、冷たい風のようなものが頬を通り過ぎていきそこから真っ赤な血が流れ出る。


「ランジェ……好きじゃなかったけど、私の先輩だったのよ。一緒に仕事をしたことはないんだけどね……あなたよりは強かったわね」


暗闇の中からソフィーネは姿を見せ、その手には先ほど男から放たれたナイフの一本を手にしていた。
そこで初めて男は頬をかすめたのは、自分のナイフだったことに気付く。



「あなたがあの女を始末したみたいだけど、あそこで死んでなければ死ぬ以上の苦しみを味わってたことになるわね……あの女。だから、あそこで死ぬことを選んだんだと思うわ。でなければ、あんたみたいなやつに殺れるはずがないもの」


――ヒュッ!!


次は耳に冷たいものが伝わったが、それが何を意味するかはもう男には気付いていた。



「ギャー!!痛い!!痛い!!痛い!!」


男は切れた耳を手でふさぎながら、ゴロゴロとその場に転げまわる。
ソフィーネはその男の動作を、頭を足で踏みつけて止めた。
踏みつけた足を軸にし反対側の肢の膝を曲げ、男に話を聞かせるためにソフィーネは顔を近づける。



「もぅ、これぐらいのことで騒がないの……それに、どうやら私たちを舐めているようだから……ここでその身体に教えてあげましょうね、人を舐めるとどういうことになるかをね……まぁ、あなたも当然そんな覚悟はあってこういう仕事をしているんでしょうから?敵につかまるということはどういうことになるのかというのをたっぷりと味わってもらいましょうか」


ソフィーネはそんな言葉を微笑んだまま話しかける。
だが、男の目は真っ赤に染まり口元はガチガチとかみ合わず震えている。
股間からは、独特の臭いを発する体温と同じ水分が漏れ出ている。



その様子を見ていたシーモも、行動を誤っていれば同じような目にあっていたかもしれないと想像するだけで、足蹴にされている男と同じ状態になりそうにながそうならないように必死に堪えていた。


「あ、あの……ソフィーネさん」



シーモの後ろから、鬼のような気迫をしたソフィーネを呼ぶ声がする。
その声はソフィーネを恐れておらず、逆に足元にいる男を気遣うような声だった。


「その辺りにしてあげて下さい……その人には聞けることもあるでしょうし」



「……かしこまりました、ハルナ様」


そういうとソフィーネは男の顔から足を外し、上からその姿を威圧的に見下ろし声をかける。



「よかったわね、命が伸びて……まぁ、ほんの少しだけかもしれないけどね」







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