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第四章  【ソイランド】

4-86 指令本部での攻防15

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「ふーん……その件、私たちがステイビル王子に頼んであげてもいいわ」


エレーナからの申し出に戸惑いを見せるグラムは、その言葉に対して何も言い返せない。
王国からの支援……それも王子からの助けを頂けるのであれば力強いことはない。
だが、万が一この作戦が失敗してしまったら……王子の名に傷をつけてしまうことになる。
それもあって今回の三つの拠点の襲撃に、ステイビルが顔を出していないという理由の一つだ。

だが、ステイビルが分けたメンバーとこの作戦が失敗する確率は低いと王国の諜報員の女性も言った。


(ならば、この作戦失敗することはない……いや、そんなことを考えること自体が問題だ)




「……どうなんだ?グラムさん」



クリミオは少しだけ時間の止まったグラムに声を掛ける。
その声に自信をもってグラムは応じる。


「あぁ……その提案でもちろん大丈夫だ、エレーナさんもこう言ってくれている。この作戦が成功したらという条件付きにはなるが……その時は全力で協力させてもらう。ステイビル王子にもうまく話してもらうようにもする……お前たちが本当に人を薬物の渦に落としていないという話を信じてな」




「そうか……それで、これからどうすれば……っと、ちょっと待ってくれ」


「……どうした?何か問題でも?」



グラムは、クリミオが何かを思いついたことを察してその内容を確認した。

先程は表に出てこなかった疑問点だったが、話が進むなかで一番の問題が消えた途端に浮かび上がってきた。
クリミオはこの問題を後話回しにはできないと判断し、表に出して解決しようとする。
それは、これから先にお互いで行動するために必要な情報確認だと。


「うん……もう一つだけ聞かせて欲しい。これは依頼に対する条件ではないんだが」



「わかった。私の知る限りのことで応じられる範囲であれば何も隠さず答えることを約束しよう」



その返答にクリミオはいくつか引っ掛かりを感じたが、王国に関する秘密や安全保障に関するものについては答えられないものもあるだろう。
全てに応じるといってしまえば、拒否はこれからの関係性を疑ってしまうことになるのはクリミオにもわかっていた。



「安心してくれ……何か重要な秘密を聞き出そうっていうわけじゃない。だから、アンタならきっと教えてくれると信じているさ」


その言葉にグラムは、微笑みで返して次の言葉を待った。


「グラムさん……アンタはなぜ俺たちのことを信用してくれているんだ?」


予想していなかった質問に、グラムは初めて目を見開き驚きの表情を見せる。
そして一瞬にして平常を装った表情に戻り、顎をいじりながら唸った。


「信用……しているように見えるか?」


「そうだな……見えるか見えないかと言えば”見える”だな」


「そうか、なぜそう思った……おっと、すまん!質問に質問を重ねるのは失礼だな」



グラムは自分の失敗を恥ずかしく思い、照れ隠しに咳ばらいを一つした。


「いくつか信頼に値すると感じるところがあった……。先ほどの剣で打ち合った時、その太刀筋にまっすぐな思いが伝わってきた……こう見えても、私はいろんな奴らの剣を受けてきた、新人の教育、襲撃の相手などな。その中で相手の思いや考えが、その剣の重さに乗ってくるの経験している。だからこそ、こうして今も生き延びてこれている……自分ではそう思っている。おま……いや。クリミオにもわかるところがありそうな気がするが?」


グラムは、クリミオの勘の良さもそういう感覚が人より優れているためであると感じていた。
だからこそ、力が全てのような裏の世界でも、クリミオは他の者を引き連れて生き延びてきていた。


「それに……ベルという女性を探し出そうとする話し。そこにはべラルドが私の娘を我が物のようにしようとしているような悪い感じはしない。そこにはクリミオが持っている純粋な想いがあるんだろ?……それを含めお前たちが信頼できる者たちだと判断した……これでどうだ?納得できる理由になったか?」




「なるほどな……べラルドがアンタを嫌がる理由が判った気がするよ」


「ん?……なんだ、それは?」


「いや、なんでもない……わかった。これから俺たちは共同していく関係だ。よろしく頼む!」


そういってクリミオは手を差し出し、グラムもその手を力強く握り返した。



「さて、これから俺たちは何をすればいい?グラム隊長」










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