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第四章 【ソイランド】
4-71 ブンデルとサナ9
しおりを挟む「あれ……ここは?……確か……わたし……違う場所に」
メイの意識は暗い闇の中に沈んでいる。
暗闇で何も見ることはできないが、不思議と今いるこの世界は落ち着いた心地の良い空間だった。
何かを思い出そうとしても、記憶と意識を紐づけることができず、メイは歯痒い思いをしている。
そんな中、メイはこの場所の中で自分以外の存在を感じ取ることができた。
「……イ……メ……イ」
「誰?……誰なの?」
メイは見えない相手に対して恐る恐る声を掛ける。
「イ……聞こえるかい?……メイ」
どこからか聞こえてくる自分を呼ぶ声は、久しぶりで懐かしい聞き覚えのある声だった。
メイはその聞き覚えのある声に対し、最愛の者の名を呼んだ。
「ルクー?……もしかして、ルクーなの!?」
その相手はメイの質問には答えてくれずに、自分が思っていることだけを言葉にする。
「メイ……どうして君が……こんなところに?」
「それが……何も思い出せないの……何か大きな出来事があったはずなんだけど……ここに来たら貴方のこと以外何も思い出せなくって……それと、ここは一体どこなの?」
またしても問い掛けた相手は、メイの質問には答えず、何か他のことを探している様子だった。
そのまま少しの時間が経過し、信頼している存在は命に言葉を掛けた。
「……そうか、大変なことが起きていたんだね。でも、君の行動は……とっても立派だったよ」
「ううん……よく思い出せないないんだけど……でも、こうしてあなたと会えて良かった……ずっと心配してたのよ!」
”心配?”……自分でも良く分からない言葉が出てきたが、ルクーと再会できたことはホッとしていた。
「もうどこにも行かないでね。本当に心配だったんだからね……」
「メイ……会いたいたかった……だけど、君はまだ”ここ”来てはいけないんだ」
「え、何?”来ちゃダメ”って、なに?え?どういう……こと?」
メイはルクーの言葉の意味が理解できず、疑問を投げかけた。
「言葉通りの意味さ……メイ。君はまだ、やることがあるしもっともっといい思いをしなければいけないんだ。自分の子を持ち、家族と共に過ごし、泣いて、怒って……そして笑って。まだまだできることが君にはあるんだ」
「それは……あなたと約束したことじゃないの……一緒に暮らして、二人の子供を授かって……二人で悩みながら子育てして……その子たちに有難うって感謝されながら最後に眠ろうって。それまで、ずっと一緒にいるって約束したじゃない!?」
「ごめん……その約束は守れなかった……ね。でも、君はまだ、これからがあるんだ。せめて君だけは」
「いや!嫌よ!!私……私はあなたと一緒にいたい!もう、離れたくないの!!!」
「メイ……悪いけど、それはできない……そろそろ、お別れだ。伝えたかったことは……私の分まで、幸せに……メイ……いつまでも……君のことを……愛してる」
「いやぁ、待ってルクー!!どこに行くの!?お願いだから、私を置いて行かないで!!ルクー!!!」
「……イさん!!メイさん!大丈夫ですか、落ち着いて!?」
「メイ……メイ!!大丈夫なの!?」
メイは身体を揺さぶられて目が覚めると、色も明かりもある見覚えのある場所に戻り、自分の頬には涙が流れていることに気付いた。直前に誰かと会っていた気がしたが、今はもう思い出せないでいた。
次に認識できたのは、小さなドワーフのサナと自分の主人であるパインの姿だった。
「あの……私……どうして」
混乱するメイは、自分が意識を失う直前のことを思い出し傷の痛みに対して身を固めて防御しようとした。
だが身体の痛みはなく、血に染まった衣服と極度の疲労以外は自分の身体に問題がないことを認識する。
「メイさん……傷口はいま塞がっています、骨や内臓に受けた損傷も魔法で戻っているはずです。ですが、流れ出た血が回復するまでは少し安静にしていた方がいいですよ」
「……え?傷?魔法……?」
「メイ……詳しいことは後でゆっくり話してあげるわ。だからいまは、ゆっくり身体を休めなさい……それじゃメイを部屋に運んで頂戴」
「「……はい、パイン様」」
他のメイドが棒と毛布で作った担架の上にメイの身体を乗せた。
そして、メイはそのまま担がれて屋敷の中に連れて行かれた。
「ブンデル様、サナ様……本当に、有難うございました。これで、ソイランドは……」
パインの言葉は頬を流れる涙と一緒に流されて、最後まで伝えることはできなかった。
ブンデルは、他の拠点の結果によってはまだ安心できる状況ではないと分かっていた。
だが、今はそんなことを言う必要はないと、パインのお礼に対してのみ返答をする。
ブンデルとサナが仕留めたメイド達は、外で待っていたビトーの警備兵に拘束され、他の襲撃地点が落ち着くまでチェリー家の屋敷の中で別々に拘束されることになった。
ちなみに、サナがダメージを与えたメイドも魔法によって瀕死の状態から回復していた。
それによってサナが狙われることになるとしても、サナは自分の手で殺めることをしたくなかったから。
ブンデルは、サナの言葉に賛同し”何かあった”場合はブンデルが守ってあげることを再び約束した。
これで、ソイランドが何らかの力によって支配されかかっていた証拠の一部となるだろう。
王国もこれを理由に、ソイランドへの介入を強めて人々が幸せに暮らせるように変わっていくと信じて。
「あとはブランビートさんとハルナさんたちが上手くやってくれているとを祈りましょう」
「あぁ、そうだな」
東の空から太陽が昇り、ブンデルとサナの夜は明けていった。
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