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第四章 【ソイランド】
4-69 ブンデルとサナ7
しおりを挟む「メイ……まさか……貴様!!!」
メイドはダガーを手にして、メイとサナに向かって走り出す。
攻撃が当たる距離までの時間はおよそ数秒しかなく、ブンデルは横になったまま意識が戻る気配がない。
「さ……サナさん!?」
メイは、サナが自分の前に出てきたことに驚く。
自分よりも背丈が小さいサナが、武器を両手に掴んで自分のことを守ろうとしている。
その背中は少し怯えているようにも見えたが、後ろにいるものを何とか守ろうとする決意が伝わってくる。
メイは亜人種に対して、今までいい思いを抱いていなかった……”いい思い”というよりも、むしろ憎む気持ちの方が大きかった。
メイには若い頃、共に人生を一緒に歩もうと誓った相手がこの町にいた。
そんな甘い時間は、ある時終わりを迎える。
……この町の警備兵に襲い掛かった”魔物の襲撃事件”
メイの相手は、この事件の犠牲者となった。
そこからメイは、人間以外の生物に対して敵対心を持っていた。
その理由はもちろん、自分の大切な者の存在を奪っていったためだった。
メイは自分の愛した相手の記憶を残すため、生存者たちに当時の話を聞いて歩き回った。
そして、メイはチェリー家に辿り着いた。
既にグラムは、廃墟に身を潜めていたため、自分の最愛の人の話を聞くことはできなかった。
だが、この屋敷にいたパインは辛い体験をしたメイに対して、今までメイが聞いきた最愛の人物の話を聞かせて欲しいと言った。
メイは頼まれた通り、今まで自分が集め聞いてきたことをパインに話して聞かせた。
それに加えて、今までメイと一緒に過ごしてきた幸せだった日々のことについても自然と話してしまった。
メイも、話しながらそのことを不思議に感じていた。
(――なぜこんなにも心地よく話ができるのか)
今までであれば、相手のことを考え始めるとメイの胸は締め付けられるような痛さと吐き気に見舞われていた。
パインに対して話していると、その発作は全く起きない。
そしてメイは、自分の目から涙が流れていることに気付いた。
「あれ……私……どうして……泣いて」
パインは席を立ち、向かいに座るメイの横に座って優しくそっとメイを抱き締めた。
メイはこれまで、どんなことがあっても泣かないと決めていたが、パインの優しい胸の中で大声を出して泣き続けた。
パインの服には、涙の他にいろいろな体液が付いてしまっただろう。
しかしパインはそんなことを気にもせず、メイの背中を優しく叩き、思う存分に気持ちを吐き出せるようにメイの身体を温かく包んだ。
パインは、メイにこの屋敷で働くことを提案し、メイもそのパインからの申し出に快く応じた。
メイはパインのことを信頼していた。だからこそ今までパインの傍でその世話をすることも、時々弱音を吐くパインの力となりたいと努力をし続けてきた。
――尊敬をするパイン様を救ってくれた二人の亜人
メイは、パインを通じてこの今までその存在を拒否をしていた二人の亜人のことを自分の中に受け入れようとしている自分を感じていた。
――キン!!
メイの耳に、金属音がぶつかり合う音が響いた。
サナはメイスを横に振り払い、襲い掛かる敵に対して攻撃を仕掛けていた。
相手はサナの攻撃を、いとも簡単に手にしたダガーで弾いて見せる。
その一撃で、相手はサナが戦い慣れしていないことに気付いた。
そしてメイドは、サナに対して弄ぶようにサナの身を切り刻んで行く。
後ろにメイがいても戦えない者は脅威がないと感じているのか、メイの存在を気にすることなくサナに攻撃を加えていく。
サナのメイスも何度か当たった手ごたえを感じているが、上手く相手に受け流されていたため、優位になるようなダメージを与えられていなかった。
敵はそろそろ始末しようと、攻撃の速度と威力をもう一段上げてくる。
その攻撃にサナは対処が出来ず、とうとう腹部につま先での鋭い蹴りを喰らってしまう。
――ご……はッ!!!
痛みに思わずサナは、握っていたメイスを手放して腹部を抑えながら蹲る。
痛みで呼吸が止まり、何も入っていない胃からは胃液が逆流してくる。
そんなサナの姿を上から、余裕のある表情で見下ろし相手のメイドは近付いてくる。
「……まぁ、こんなもの……よね」
そう言って、お腹を抱えて蹲る背中の上で、止めを刺すために両手に握ったダガーを振り上げる。
「……っ!!」
小さく息を止め、全ての力を握ったダガーに集約してサナの背中に突き立てるために振り下ろした。
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