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第四章 【ソイランド】
4-63 ブンデルとサナ1
しおりを挟む真っ暗な闇の中、部屋の窓から三つの影が現れた。
外側からはその姿が見られないように、明かりは付けていない。
三人とも武装をしており、一人はチェストプレートを纏い腰から剣を下げている。
一人は、背中に弓を携え、小さなもう一人は革の防具を纏いメイスを腰に下げている。
「あそこがチェリー家の御屋敷です」
ビトーの人差し指が示した先に、大きな壁に囲まれた屋敷が見える。
ビトーとブンデルとサナは、他の建物よりもやや高い二階建ての家の窓からチェリー家の敷地内を見渡している。
「ふーん……随分といいところに住んでるんだな、大臣ってやつは」
「それで、どうやって入り込むつもりなんですか?」
「そうだな……火をつけて炙り出す……か?」
――ドン!!!
(ぶふっ!?)
ブンデルは背中に重い痛みを感じ、その衝撃で肺の空気が口から洩れた。
その痛みの正体は、サナが拳を叩きつけていた。
「ブンデルさん……冗談でもそんなひどい作戦は許しませんよ。確かにあの中にべラルドっていう方の息のかかるったものがいるかもしれません。ですが軽々しくその者たちの命を奪ってしまうようなこと……わた……しは……」
ブンデルをにらむサナの目からは、怒りか悔しさからか涙が溢れそうになっていた。
「ご…ごめん、サナ!悪気はなかったんだ……実際にそういうことをする気はないよ!火の手があがれば、他の家にも移るかもしれないし、そんな手段は使うはずもないよ!」
ブンデルはサナの両肩に手を当てて、必死にさっきの発言を取り消そうとする。
その必死さに免じて、サナはブンデルを許すことにした。
しかし、その様子を見て心配したのはビトーだった。
(だ……だいじょうぶかなぁ……ステイビル王子はこのお二人も強いとは言っていたけど……)
今見たところ、アルベルトやソフィーネのような強さを目の前のエルフとドワーフから感じることはできなかった。
それどころか、パインを助け出すという重要な任務(――他の拠点も重要ではあるが)をこの二人を主に任せてしまってもだいじょうぶなのだろうかとビトーは不安になった。
「うーん、とはいえ黙って侵入すると罪に問われそうだしな……だけど制圧すれば大丈夫なのかなぁ……いやそれなら……」
ブンデルは腕を組んだまま目を瞑り、独り言のように考えを口にしている。
サナは先ほどの感情が落ち着いたようで、優しくその姿を隣で見つめていた。
そして、ブンデルは手を一つ叩きある決心をする。
「……よし、お願いして入れてもらうか!」
「え_?ぶ、ブンデルさん……何を言って……冗談でしょ?」
ビトーはブンデルの言葉に、信じられないと言った目線を向ける。
その心の中は、ブンデルへの評価は不信感ともいえるくらいにまで下がっている。
だが、その横にいるサナはブンデルの発言を信じている様子だった。
「ブンデルさん……その作戦を詳しくお聞きしても?」
「あぁ……もちろんですよ」
そういってブンデルは、サナとビトーにこれからの行動について説明した。
ブンデルとサナはチェリー家の敷地の門の前に立つ。
サナの手にはその辺りに咲いていた花を摘んで包んだものを手にしている。
門に付けられたドアノッカーの輪を手に取り、数回打ち付ける。
すると、小さな窓が開きこちらを睨む。
「……誰だ!こんな時間に!?」
「朝早くに申し訳ありません。私たちは、ステイビル王子の使いでやってきました。パイン様にお伝えしたいことがありましてご面会をお願いしたいのです」
明らかにブンデとサナを見る視線は疑っているときのものだ。
だが、門番の警備兵には判断がつかず取り次ぐべきか迷っていると、目の前のエルフは後ろのドワーフからある物を手渡されていた。
「……これが王子から託された証拠です」
ブンデルは鞘に収まった短剣を持ち、取っ手側をのぞき窓に見せつける。
「そ……それは」
短剣に施された彫刻は、まさしく王国の紋章を示すもので王家の者のみが持つことを許される品物だった。
その証拠を見せられたことによって、早朝に訪れたことが緊急な要件であると感じた。
「す、少し……そこで待っていろ!」
対応した警備兵は、精一杯の強気を込めてブンデルとサナをその場に待たせた。
のぞき窓が閉じられ、ガシャガシャと防具の金属が身体の小走りの動きによってぶつかり合う音が遠ざかっていくのがブンデルの聞こえた。
しばらくして、先ほどとは異なる歩みの速度で、同様の金属音が近付いてくるのが聞こえる。
ブンデルとサナは、再びのぞき窓が開くと思いその場所を見つめていた。
だが、違う音が聞こえてくる。
門の向こうで閉められた錠が解かれる音がし、門が静かに開きメイドがブンデルに告げる。
「パイン様がお会い下さるとのこと……どうぞお入りください」
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