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第四章 【ソイランド】
4-61 汚れた町
しおりを挟む「……説明は以上だ。これより全員の準備が整い次第、作戦を実行に移す!各自注意して行動するように!」
「「――はい!!」」
ステイビルの呼びかけに応じ、この場にいる全員が一斉に立ち上がりたがいに握手を交わし作戦の成功を誓い合う。
今回にの作戦は”奇襲”、これが全てだった。
その対象となるのは三箇所で、一つはソイランドの警備兵の指令本部、一つはメリルが幽閉されている砂漠の屋敷、最後の一つはパインのいるチェリー家の屋敷だった。
今のステイビルのメンバーとコージーの私設警備兵の一部と、廃墟の中に潜んでいたグラムに賛同する者たち。
それらを総動員し、今回の騒動の首謀者であるべラルドの捕獲を目的とした奇襲を行うこととなった。
三箇所の拠点には、ステイビルたちのメンバーを基軸としコージーとグラムの兵を分散しそれぞれを補助するという人員の配置をした。
司令部にはエレーナとアルベルト、チェリー家の屋敷にはブンデルとサナ、メリルが幽閉されている屋敷にはソフィーネとハルナ、案内役としてメイヤも同行する。
王子の身に危険が及ばぬようにと、ステイビルはポートフ家の敷地内で状況を見守ることになった。
チェイルもこの奇襲に参加したいと申し出たが、グラムから止められクリアの傍で守るように命じられた。
最初は抵抗をしていたが命じられたことにより、チェイルはクリアを護ることをグラムに約束した。
サライは、当初この作戦に対し反対の意見をステイビルに伝えていた。
王国に連絡をして協力する意見も出していた。しかし、王国に連絡をして応援を呼ぶ時間と、その間にべラルドに勘付かれては奇襲の意味がなくなってしまうというステイビルの判断だった。
更にサライは”確かな証拠が掴めないまま、べラルドに罪を認めさせるのは危険である”とステイビルに意見する。
だからキャスメルはこの町の混乱を避けるために、この問題について手を付けずに通り過ぎていったのだという。
その話しを聞きステイビルは、キャスメルらしい判断であると感じた。
決してその判断は間違いではない……、確かな証拠を手にするまでは相手に攻め入る隙を与えるだけである。
しかし調査の時間をかければその分だけ、べラルドにも自分を守るための準備を進めていくことになる。
町の中にどれだけのべラルドの情報網が張り巡らされているか不明な中で、時間をかけすぎることも相手に準備をさせる時間を与えることになるというステイビルの考えも間違えではなかった。
最終的には、現在のソイランドの状況を看過できないことが理由となり、一斉に奇襲をかけることでサライも合意した。
サライ自身も、この状況には危機感を抱いていたのだ。
こうしてこの場に居る者たちの意見が一致し、こちらから攻めることで話はまとまった。
準備は順調に行われていったが、中断されることになる。
べラルドの警備兵がサライとコージーのところへ訪れてきた。
(……どこかで情報が漏れていた!?)
サライの頭に悪い考えが浮かび、何とかやり過ごす手はないかと考えを巡らせる。
ともかく一度話しを聞かなければと、サライは訪れた警備兵を対応する。
要件を聞くと”怪しい者たちがこの町に潜伏をしている”という情報が入り、警戒していると言った。
サライが”怪しい者”の正体を聞くと、警備兵の隊長らしき人物が少し強めの圧力でサライの質問を遮る。
サライはそれ以上のことを聞かず、何かあれば連絡すると警備兵に伝えた。
だが、用事が終わっても警備兵はこの場から離れようとはしない。
(……またか)
以前も別の者が、同じように居座ろうとしたことを思い出した。
その際には、”お土産”と称した賄賂を渡すことで満足そうに帰っていったことを覚えている。
今回は少しばかり知らない振りをし、相手の要求にすぐに応じないようにした。
すると、警備兵はイラついたのか、サライの家について不満を並べ始めた。
最後には、”いまこの状況を抑えているのは我ら警備兵が見逃しているためである”とまで言い始めた。
このままでいけば、王国に報告をしなければならないとまで言い始めたため、サライは付き添いの者に”手土産”を用意させ持ってこさせた。
隊長らしき人物は数回は数度拒否の姿勢を見せたが、四度目のサライの勧めに応じて硬貨の入った袋を手にして満足げにサライの屋敷を後にした。
サライは、こんな町の状況がいいはずはないと思っている。
今回の作戦を何とか成功させるように、準備を進めていった。
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