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第四章  【ソイランド】

4-26 歓迎の宴

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翌日、ステイビルたちはソイランドの大臣の屋敷に招待された。


この町を王国から預かっている者の名は、『パイン・チェリー』という名の女性。
唯一、前回の王選の精霊使いの家とは関係のない人物が選ばれている。

基本的には王国側がその者たちを任命し、承諾して成立する形式をとっている。
だが、その任命は拒否をすることも可能だった。

それには理由及び、その者が適任となるものをたてることによって拒否が可能となる。


ソイランドその方法で、今の大臣が決定されていた。




ステイビルたちは、パインが用意した数台の馬車に乗り込んだ。
ステイビルが一台、エレーナとハルナ、アルベルトとソフィーネがそれぞれの馬車に乗り込んでいった。


ブンデルとサナは、”来ても構わない”といった感じの態度だったためその招待を断った。
それに、チェイルが捕まっている間また酷い傷を負っていた。



宿泊場所から、チェリー家の屋敷までは舗装されている綺麗で賑やかな道を通っていく。
こんな道は、この町の中でほんの一、二割程度の場所にしか施されていない。
さも、この道がこの町全体に広がっているとステイビルたちに見せているかのようなルートだ。

この数日、街の中を自由に歩き回ったステイビルたちにとっては、招待した者の思惑を感じずにはいられない。
ハルナも、ユウタがいた廃墟の酷い生活をしている者たちを見た後では、今見せれられているこの風景が馬車の窓の外に映された映画か何かのようにしか見えなかった。

フウカがハルナのことを心配し、姿を現し”大丈夫?”と問いかけた。
その声に自分の眉間に皺が寄っていることに気付き、ハルナは人差し指で疲れた眉間を軽く解した。
フウカには問題ないことを告げて、心配かけさせたことを詫びた。


反対の窓側に座るエレーナも、同じ表情をしていた。
ハルナと同じ思いを、窓から見る景色から抱いていたのだろう。
フリーマス家が治めるラヴィーネの町は、こんな町ではなかった。
確かに貧困による差は、その者たちの努力の差によっては生じることはある。

しかし、働く気のある者や素質を持ったものは努力している。
ラヴィーネではできる限り、そういったもの達の手助けになるように尽力していた。


だが、この町ではそう言ったものは一切感じない。
『人の手によって決められた見えない壁が、そこら中に存在している――』
それが、ハルナとエレーナの感じたこの町の感想だった。


馬車が次第に速度を落としていくのが、蹄の音のリズムから聞き取れた。
目的地に近付いたという、証拠でもあった。



――バン!バン!


ハルナは、この町を運営している人に弱みを握られないようにと気合を入れるため両手で自分の頬を叩きつけた。

ユウタや小夜のことも気になるが、ここは一旦頭の隅に置いておくことにした。
目をつぶって二回程深呼吸を行い、ビリビリしていた頬の痛みが引いて行くのを感じた。


先頭を走っていた馬車がエントランスの前で止まり、馬車の扉が開かれる。
その外からは、来客を歓迎する声がステイビルに向けて告げられた。


「ようこそおいで下さいました!ステイビル王子!」


パインは両手を目一杯広げ、ステイビルに対し菅屋の気持ちを表した。
髪は左右縦ロールで決め、服装は今から舞踏会で王子様から手を差し伸べてもらう前の王女のようなドレスを身にまとっている。細い目には変化がなく、口元だけが吊り上がって笑っている表情。
ステイビルには、違和感の塊でしかなかった。

奥には玄関の左右にメイドを並べ、下腹部の前で手を重ねてお辞儀をさせて出迎えさせる。



「うむ、この度の招待と日ごろの町の運営……感謝するぞ、パイン……」


ステイビルは馬車の中から感謝の言葉を返し、用意された階段に足を掛ける。
ステイビルの姿を見て、パインの笑顔は一瞬固まったように見えた。

ステイビルの姿は煌びやかな衣装ではなく、普段から旅で使用しているボロボロで汚れた格好をしていた。


これはステイビルの案だった。
普通であれば、王子としてそれなりの服装で招待に応じる必要がある。
だが、今は王選の途中であるため、王子ではあるが国のために優先しなければならないことがある。

パインがどのような目的でステイビルたちを招待したのかは判らないが、他の町の者たちならばこの旅の重要性を理解しているはず。
反対にそれを理解してもらうためにも、あえて失礼とも思われる様相で訪れることにした。
その意見も勿論エレーナは真っ先に賛成し、ハルナもそれに続いた。



だが、パインは一瞬にして持ち直し、ステイビルに対して友好的に接する。


「……流石、ご兄弟ですわね。キャスメル様も同じように普段着でおいでになられましたわ」


「なに?キャスメルも来たのか?……今キャスメルはどこに?」


”引っ掛かった”と言わんばかりの満足した笑みがステイビルに絡みつき、必死で寄せ集めた胸の谷間を強調しステイビルを奥へと導く。


「その話しは、ゆっくりと中で致しましょう……”お連れ”の方たちも、どうぞ中へ」





パイルは牛に振り向く際に軽く身体を回転させ、スカートの裾が躍るようにふわっと広がった。







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