問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』

山口 犬

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第四章  【ソイランド】

4-19 再会

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……パタン


外から扉が閉められ、外の騒音も小さくなった。
八畳ほどの部屋の真ん中にカーテンのような布がぶら下げてあり、奥の様子が見えないようになっている。

奥の方は建物が密集している場所で、窓から日はあまり入ってこない。
だが、明かりがなくても部屋の中は十分認識ができる明るさだった。


ハルナは恐る恐る歩みを進め、折り重なった布の間に手を入れて潜りぬける前に布の向こう側にいる知っていると思われる人物に声を掛けた。


「ユウタ……さ……ん――!?」



布の間から顔出し、その先に見えた人物を見てハルナは驚愕する。


その顔には黒いシミが広がり白い髪は長くボサボサで、ところどころ抜け落ちており赤黒い頭皮がうっすら見えており、年齢は60代後半といった感じに見えた。
よく見ると、どこかユウタの面影がありハルナは本人であるという確信を持つ。
フェルノールのように”入れ物”に別なものが入っている感じではなく、本人の雰囲気がしっかりと身体に定着しているように感じた。

虚ろな目でこちらを見る男に対し、ハルナはもう一度その男の名を呼んでみた。



「……ユウタさん?」




目の前の男の耳に、ようやくその声が届いた。

座り心地の悪い木の椅子に座り、窓側に向けた顔をゆっくりと声のする方へ向けた。
二度三度目を細めてピントを合わせ、その姿を確認する。


「ハル……ナ……さん……」


擦れた弱々しい声で、視界に入った懐かしい女性の名を呼ぶ。
ゆっくりと立ち上がり、ハルナの元へ弱った足取りで歩いてくる。




「ハルナ……さん!」


「ご無事だったんですね……ユウタさん」



ハルナに抱き着こうと伸ばした手は、ハルナによってつかみ取られそのまま握手の体勢となった。
ユウタの身体からは、洗っていない体臭と安いアルコールの臭いが混ざり合い嫌な臭いを発している。

膝が震え立位を保持することが難しいユウタを、ハルナは手伝いながら元座っていた椅子に腰掛けさせた。
その間、うわごとのようにハルナの名を繰り返す様子に、昔の立派な面影は感じられなかった。
次に、ハルナの中に思い浮かんだことは、ユウタにいったい何が起きたのかということだった。



「ねぇ、ユウタさん。あの時のこと……覚えてます?」


「もちろん……今でも寝ているときに夢を見るくらいさ」



あの日、ハルナ、三人、ユウタの三人で開店準備をしていた。
そこに小夜が、ガソリンをもって店の中に入ってきた。
そして取っ組み合いの中で、気化したガソリンに引火し、全員が爆風と炎の中に包まれていった……

ユウタとの記憶のすり合わせは問題なかった。

次に、ハルナは今までのユウタに起きたことを聞いた。


「ユウタさん……いつこちらに来たのですか?」

「この世界に来たのは……もう随分と前だったな。三、四十年は経っていると思うけど。ハルナさんは……なんで、あの時と同じくらいの歳なの?」

「それは……私にもわからないんです。ずっと眠っていたみたいな感覚で、一年前くらいにラヴィーネという町で気付いてこの世界に」

それから精霊と契約をし、この世界でいなくなった女性と勘違いされて、いま王選の旅に参加していることを説明した。
場所に入る前に、ステイビルと話しをして本当のことを話してもいいと承諾を得ていた。
ステイビルも、ハルナの探していた同郷の人物に嘘をつくのは良くないだろうという判断からだった。
だが、相手の素性も判らないし今の状況もわからないため、その辺りはハルナが判断して良いということになった。

エレーナたちも”もし何かあった場合は、全力でハルナを助ける!”と、問題がないことを確認していた。




「ハルナさん……精霊使い……本当に!?」


ユウタの弱っていた声に、急に力が込もった。
ユウタもこの世界に来て、元の世界にはない特有の摂理について知った。

だが、精霊使いや亜人などが扱う魔法が実在するとは聞いているが、今いる場所の住人では滅多にお目にかかることはできない。
ハルナが精霊使いである事実を聞き、その力を見せてもらえないかとユウタは両手を合わせてお願いする。

ハルナは少し距離を置き、掌の上で小さなつむじ風を起こして見せた。


「おぉ……これが……精霊の力……ハルナさんは、やっぱりすごいなぁ!」


未知なる力を目にして輝きを込めたその目は、あの頃の毎日が楽しく過ごしていたユウタの頃と同じ目をしていた。
だが、ユウタの外側を構成する部品は悲しいくらいに劣化しており、憧れていたあの姿はどこにもなかった。


(ユウタさん……)


何でも出来て頭の良かったユウタが、どうしてこのようになってしまったのか。
言いたくはないが、この落ちぶれようは信じたくはない程で、いまのユウタの姿を見ると涙があふれてきそうになる。


「……ところで、他の人はどうなったの?ハルナさん、何か知ってる?」



ユウタからの質問で、悲しい感情がすっとどこかに流れていった。
ハルナも、ユウタに合えば当然出てくる質問だと準備をしていた。



「フユミさんも……この世界に来ていたみたいですよ……だけど、今は……」


ハルナは、二十年前にフユミがいた時の話をした。
この世界に着いたときには記憶をなくし、西の王国の近くの宿屋で親切な方に助けられ、最後には記憶が戻り病気に苦しんで無くなっていったことを。


「そうなんだ……フユミさん……亡くなったんだ」



しかし、話しを聞いたユウタには何も感じた様子はなく、ずっと下をうつむいたままだった。
そして、何かを思いついたように顔をあげハルナに告げた。




「ねぇ、ハルナさん。俺と一緒に逃げようよ!」






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