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第三章 【王国史】
3-236 東の王国40
しおりを挟む「すみません、隠すつもりはなかったのです。ですが、まだ検討の段階でこのことをお伝えするのはどうかと……」
「何を言うか、ブランビート!今回このことをお伝えしなかったのは、我らの責任であろうが!この事は最初にお伝えしておかなければならなかったのだ」
「そうですね、初めに知っておけば今回の対応も少し変わったかも知れませんね……」
二人はエイミの言葉が突き刺さり、胸になんとも言えない痛みが生じた。
エイミが言う通り、始めに知っておけば対応の仕方もかわっただろう。
こちらだってその気がないわけではなかったのだから。
このような状況になってしまっては、万が一これからの想い合う仲になったとしても多少はギクシャクしてしまう部分が残ってしまうことになるだろう。
「でも、反対に考えれば良かったかも……ね」
「え?……あ!あぁ、そうかもね」
セイラの言葉によってエイミの頭の中に浮かんだのは、ニッコリと笑っている自分の父親の顔だった。
「確かにうちのお父様にその条件を知られていたら、こちらの意思に関係なく強引に嫁がされることになっていたでしょうね……」
「そうよ、エイミ。それに今回の建国に協力することだって、もしかしたら”村にはいなかった一緒になってくれる男性を見つけることができるかもしれない!”くらいにしか思ってないかもね」
「いや、あの村長様はそんな方ではないと思うのですが。村民の皆様のことを考えて……」
エンテリアの二人の父親へのフォローの言葉に、エイミもセイラもフルフルと首を横に振った。
「あなた達の目には、そう映ったのでしょうけどね」
「私たちはずっと、お父様のことを見続けていたのよ」
エイミたちの父親は、村民にも慕われていた。
小さい頃は、その姿にも威厳と尊敬の念を感じている部分もあった。
”自分の父親はなんて立派な父親なのだ”――と
だがそれも、小さい頃の間だけであった。
エイミもセイラも成長し、自分たちのことは自分でできるようになった年齢のころ父親の行動が気になり始めていた。
男の友達と一対一で一緒にいると、それを見つけた父親は不機嫌な顔をして近づいてくるのだ。
そういうことが続くと、どの男性もエイミトセイラには近づこうとしなくなっていた。
だが、今では”早く良い相手を見つけて親を安心させてほしい”という。
そのことに腹を立てた娘たちは、昔父親が男友達を拒絶していたことによって誰も近づかなくなったことを告げる。
その答えは”本気でお前たちと付き合いたいかどうかを試していたのだ”という。
当時十歳くらいの子供に対して、全力で大人の力と村長の威厳で迫れば子供は誰も近寄ることはできないだろう。
母親とでかけたときも、”良いお方なんだけど娘さんのことになると……ねぇ”と言われ、困った笑顔の母親の表情は今でも忘れられない。
「そ……そうなんですね」
「そんなことが……信じられない」
食事も一緒に共にしたエンテリアとブランビートが、その話を聞いてまさか……といった顔つきで聞いていた。
そこである考えが、セイラの頭の中に閃いた。
「ねぇ!お二人のお父様ってどのような方なのかしら?」
「……そうねぇ、相手のことを知っておけば何かいい考えも浮かぶかもしれないし!」
エンテリアとブランビートは、顔を見合わせる。
自分たちの父親は、今の話を聞くかぎりエイミたちの父親と正反対な性格であった。
そのことを話すのは、ますます自分たちに協力をしてもらえなくなるのではないかという心配が生じていた。
だが、先ほどのような失敗はもうできない。
すべての情報を提供して、そのうえで協力してくれるかを判断してもらわなければ、これから先も何かを隠していると判断されかねない。
そう判断したエンテリアは、ゆっくりと言葉を口にし始めた。
二人の父親は、厳しい家庭に育ったようだ。
勿論その家族は、代々村を治めてきていた家系であった。
エンテリアたちの父親の話ではこの体制になったのは一世代前から、それも自分の提案によって今の村のルールで行われてきたとのこと。
その方式により村の運営の成功を治め、自身の代になった時には更にルールが厳しくなっていったと聞いたのは村の者からの声だった。
父親はエンテリアたちに対し、自分の命令だけで行動しない様に幼い頃から躾けていた。
常に村の状況を監視させ、何かあった場合には提案をさせるようにしていた。
その案に対して父親が吟味し良い提案については二人に実行させ、悪い提案や同じような過ちを繰り返すような提案については罰まで与えていた。
だが、村の運営は安定していた。
住人からの依頼も息子たちと同じく、良い案であれば積極的に採用していた。
そして武力もある程度保有していたため、反逆を起こそうとしている者はいなかった。
その話しを聞いて、エイミとセイラは一つ気付いた点があった。
そんな父親が”建国”については、条件付きだが許可を出したことだった。
だが、それ以上の抵抗する案が浮かばない。
それはこの四人だけで、エンテリアの父親に対しての抵抗手段が見当たらないということ。
そこでエイミは頭の片隅に、ある案を思いつき口にした。
「ねぇ、お父様に相談してみるのは……どう?」
他の三人は一瞬固まったが、藁にも縋る思いでその案について検討した。
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