問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』

山口 犬

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第三章  【王国史】

3-178 魔法を習得した意味

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「ブンデルさん、この人は”ナンブル”。私の兄であり、ナイールさんの夫よ。……あなたを助けてくれたのよ」




その名を聞き、ブンデルは全身が痺れるような感覚に見舞われた。




(この人が……お父……)





ずっと憧れていた両親、家族という存在がいまここにあった。
今まで家族という存在に接したことのないブンデルは、どういう風に接すればいいか分からなかった。



戸惑う姿に
何かを感じたナンブルが、優しく声を掛けた。




「そんなところに立ってないで、こちらに入ってきてはいかがですか?」





そう声を掛けられたブンデルは、部屋の中に入りサナの隣に座った。



サナは、そのままブンデルに今までことをところどころ周りに確認をしながら話して伝えた。




「……もし落ち着いているなら、何があったのか教えてもらってもいいかな?”ブンデル”さん」





ナンブルは、ブンデルにどうしてあのような状況に至ったのかを確認する。
無いとは思っているが、こちら側の方に非がないということも聞いておかなければならない。



最初にサナが、ブンデルの代わりに話し始める。
サナは、ブンデルの体調を気にかけてそうしたのだった。


そのまま、村の中でミュイが突然姿を消した経緯までを話す。




その後を、ブンデルが引き継ぐ。
ここから先は、ブンデルにしかわからない事だった。





はぐれない様にとミュイに付けた蔦をたどり、村に近い森の中まで入っていった。

そこでダークエルフと交戦し、ある魔法を発動させたあと記憶を失ったことを伝えた。





「そうなんですね……それで、その魔法は何をつかったのですか?」





ナンブルは力を込めた目で、ブンデルに問いかけた。





「……マジックアローです」








――!!






その単語を聞き驚きを見せたのは、ナルメルとゾンデルだった。



この村の中では、おとぎ話のような魔法。
それの魔法の名を、ブンデルはいとも簡単に口にしてみせた。
裏を返せば、それは見栄でも何でもない、過去の実績から来る発言であると感じ取れた。








「なるほど……やはりな」




ナンブルは、ポツリとつぶやいた。

その言葉に反応したゾンデルは、その言葉の意味を追求する。





「ナンブル、どういうことなのだ?この村ではマジックアローを習得したという意味……判らぬわけではないだろう!?」


「勿論ですよ……お父様」




この村での、その魔法の重要性はナンブルも理解をしていた。
しかし、それは魔法の効力よりも言い伝えによる神格化された部分場多いと判断していた。

さらに言えば、ナンブルはこの魔法を既にこの目で見ている。



近くを通りかかった際に、その魔法の”色”を感じゾンデルは駆け寄った。
あの時の魔法は、衝撃的でとても懐かしく思える魔力の刺激が肌をビリビリと刺激した。



その場には二人のエルフが存在しており、一人は意識を無くした状態で倒れ込んでいた。
もう一人のダークエルフは衰弱し切っていたが意識はあり、倒れ込んだエルフを狙っていた。


どちらがあの魔法を使ったのだと推測ようとしたが、まずは目の前の状況と長年の勘からこの行為は留めるべきだと判断した。




ダークエルフはナンブルに行為を止められ、新しい”敵”の出現によってこの場を退却た。






「そして近くにいたミュイを見つけて、私と一緒に運んでくれた……と?」







ブンデルの言葉に、その通りとナンブルは頷いて見せた。







「今のお話しからは、姿を隠して侵入してきたのはあの時のダークエルフでしょうね。それに、ミュイさんを連れ去ったのは計画的ではなく、突発的な出来事のような気がします」






アルベルトの意見に、ステイビルを初めゾンデルとナルメルも同じような結論に至っていたようだった。
さらにそこには、”ひとさらい”の集団が関わっている可能性が非常に高いことも付け加えた。





「とにかく、村の防御を強化し不埒な者たちから守らなければならんな」





ゾンデルのその言葉に、ステイビルも協力することを約束する。





ミュイは翌朝、意識を取り戻した。
恐怖のためか、途中からの記憶があいまいなようだった。


ただ、ブンデルが追いかけてくれる姿は見えていたという。
母親が迎えに来るまで、ミュイはずっとブンデルとサナの傍を離れなかった。




連絡を受けて迎えに来たミュイの両親は、ブンデルに何度も何度も頭を下げていた。


ブンデルとサナにしては、危険な目に会わせてしまったことを責められるのではないかとビクビクしていたが、それも杞憂に終わった。
サナが最後にまた一緒に遊んでいいか尋ねた時は、両親は”ぜひ!……いや、宜しくお願いします!”とのことだった。



その言葉に安心したサナとブンデルは、母親に抱かれ両親と帰っていくミュイをいつまでも見送っていた。











ナンブルが戻ってきたあの日から、様子が一変してしまったのはサイロンだった。


胸が苦しんで、ベットに運ばれてからずっと床に臥せたままになっていた。

それ以前は排泄や食事の時は身体を起こしたり、屋敷の中の庭を歩いていたのだが、それすらも出来なくなってしまった。



意思の疎通もほとんどできず、世話の者が話しかけても見当違いな言葉が返ってくる始末。

時々、夢か妄想か――村の者にテキパキと指示をしているような言葉を発している。




こんな状態では村の運営に関する判断は、まともにできるはずもなかった。




ゾンデルとナンブルは、村を治めていた部下を呼び事情を説明する。
暫定的にゾンデルとナンブルを主とし、他の者たちの意見を聞いて対応していく方針を告げる。



中には反対する者もいたが大半がその意見に承諾し、この方法で村の運営が行われていくことになる。





そんな時、再びあの日以上の悪夢が襲い掛かってきた。









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