問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』

山口 犬

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第三章  【王国史】

3-171 攫われたミュイ

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ブンデルは、サナと合流した。

場所も作業現場の近くでは邪魔になるし危ないと判断して、反対側の損害がない場所で相手をすることにした。




女の子の名前は”ミュイ”といった。




サナとブンデルは、交互にミュイと全力で相手をした。
小さな子供は無限に湧き出るエネルギーの塊のような存在。

流石のサナやブンデルも、一旦休憩を取らなければ体力が持たなかった。



三人は、食事の休憩をとることにした。



サナは、ミュイの前にナプキンを掛けてあげた。
少しずつスプーンでスープを与えるサナに、ブンデルは視線が釘付けになっていた。





「どうしたんですか、ンデルさん?そんなに見られると、恥ずかしいんですけど……あ、もしかしてブンデルさんもこうして食べさせて欲しいとか?」




サナはミュイの口を拭いてあげながら、ずっと見つめているブンデルに話しかける。



サナに話しかけられたことで、ようやくブンデルは視線がサナとミュイの二人に釘付けになっていることに気付いた。






「え!?あぁ!……何でもない、何でもないんだ……」


「可笑しなブンデルさんですね……ねぇ?ミュイちゃん」






サナに話しかけられたミュイは、意味も分からず笑っている。





ブンデルは、一瞬本当の親子のような錯覚に陥った。
感じたそれは決して不快なものではなく、今まで味わったことのない何とも言えない心地よく不思議な気持ちだった。





ブンデルは仲の良さそうに見える、”ひと時の家族”をみんなに見てもらいたい衝動に駆られた。
本当の家族ではないが、仲の良いところ見てもらいたかった。





「じゃあ、休憩が終わったらまた村の中を歩いてみようか?……ほら、ミュイのお母さんの様子もわかるだろうし」





少し突発的で自分の希望が前面に出た提案な様な気がしたが、ブンデルはサナの反応を待った。




「うーん、そうですねぇ……ミュイちゃん、村の中すこしお散歩に行こっか?」






ミュイとしてはこの後のことは何でもよかった。
ただ、気に入った二人が一緒なら何でもよかったのだった。


そして、サナの問いかけにミュイが機嫌よく反応したためブンデルの案が採用され村の中を歩くことになった。








そして三人は再び、人通りの多い村の中に。
ミュイを真ん中に両手にサナとブンデルの手を握り機嫌よく歩く。



「ほら、ミュイちゃん。もう少しでお母さんのところの近くを通るよ」




そのサナの言葉が嬉しかったのか、ミュイは一人で勝手に先に歩いて行った。




「あ、ミュイちゃん!ちょっと待って!?」





急に走り始めたミュイをサナは追いかけていく。
ミュイはちょっとした追いかけっこのような気持ちで、群衆の中を走っていく。



それを見たブンデルが、魔法を唱える。




「”ログホルム”」




一本の蔦が急速に生え、ミュイの身体に巻き付いた。
うまくコントロールし、ミュイがこけてしまわない様にしたのはブンデルの腕前だった。





その時……



――トン!




ミュイが誰かにぶつかったようで、後ろ向きによろける。



その瞬間、ミュイの姿は目の前から消えた。




「――え!?」




ブンデルは目の前で起きたことが信じられず、何度か目をこすって確かめる。
だが、そこにミュイの姿はなかった。


よく見ると、ある場所から蔦が伸びているのが見える。
あれは、ブンデルがミュイと魔法で結んだ蔦だった。



それは急速に村の外へと向かって移動し始めた。





「サナ、急いでステイビルさんたちを呼んできてくれ!俺はミュイの後を追う!」


そう言ってブンデルは、引きずられていく蔦を見失わないように追いかけていった。




その蔦は途中から消えているが、明らかにその前にミュイがいることを示している。
そしてその速さは、ミュイの脚で走れる速さではない。



必死になって村の中を走るブンデルの姿を、村人たちは不思議に思う。
ブンデルはそんな村人を上手くよけながら、見失わない様に必死に追いかけていった。





そして人の通りは次第に少なくなり、とうとう村の外れまで来た。


これ以上は進めば、村の外に出てしまいあの蔦も追いかけられなくなる。
それだけは避けようと、ブンデルは走りながら魔力を高めた。



そして、先ほど見たミュイとの距離を思い出し消えかけた蔦の長さからその位置を推測する。




「――”ログホルム”!!」





網目のような蔦の網が、目の前の空間に覆いかぶさる。
そしてそこに明らかに何かを捉えたふくらみが見えた。




――ザシ!!



そのふくらみは何か刃物のようなもので切られ逃げられた。
だが、それで最大のヒントを得たブンデルはその場所にもう一度魔法で見えないものを捕えようとした。





ブンデルは先ほどの広範囲魔法で疲れた身体を振り絞り、もう一度魔法を発動させる。





(たのむ、当たってくれぇ!?)







ただひたすらに地面を這って伸びていく蔦は、何の変化を見せなかった。






……フワッ




一瞬何かに蔦が蹴り上げられた、ブンデルはその部分に素早く蔦を絡ませた。




――ビン!!






何かを巻き付け、蔦が引っ張られたように伸びた。





(かかった!)





それによってミュイに繋げていた蔦も速度が落ちたため、ブンデルは飛び込んでその蔦を掴んだ。





すると掴んだ蔦の先に重みが伝わり、ミュイが何かから外れそうな感触があった。
だが、すぐ掴まれて再び引けなくなった。



その感触の先の空間が揺らぎ、その正体が現れた。



「……誰だ、お前は?」




ブンデルはミュイをわきに抱えるダークエルフに話しかけた。








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