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第三章  【王国史】

3-160 サイロンとナルメル

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ゾンデルとナルメルは、それぞれ別の牢獄の中に閉じ込められた。

警備の者たちも村長のサイロンから、反逆者とのことで閉じ込めているがその人となりを知る者たちからは信じられないといった声が上がっていた。





「もう皺ございません、ゾンデル様。こういうことをする理由が我々には判りかねますが、村長のご命令ですので……」



「構わんよ……それよりもいいいのか、こんな場所で?見つかると問題になるんじゃないのか?」


「大丈夫……です……きっと。村長がいらっしゃった際には、すぐに移動していただくことになりますので。そこは申し訳ございませんが、ご了承ください」


「あぁ、それも構わない……ありがとう。ナルメルは無事か?」


「はい、ナルメル様も同じような環境となっております」








本来、反逆者は村の秩序を乱す者であるためその身柄に自由などない劣悪な環境の中に投じるべきなのだが、村長には黙って自由を奪わず比較的楽に過ごせる場所に二人を収容した。







「……それでは、何か御用がありましたらお声をおかけください。控室におりますので」





「すまんな……囚われの身に気を使ってもらって」




送ってくれた警備兵は、ゾンデルのその言葉にニッコリと笑顔で返し奥の部屋に戻っていった。







静かになった空間で、ゾンデルは思いにふける。


なぜ、サイロンは豹変してしまったのか……いや、元からあのままだったのだろう。




サイロンが村長になる前まで、お互い協力して村の安泰と発展にお互い力を注いだ。
その時の絆は、サイロンが村長になってからも続いていると思っていた。




だが、やはり昔感じた嫉妬や支配欲に囚われたまま、ここまで来てしまっていたのだろう。
最後に聞いた言葉も、こちらが協力と思っていたことがサイロンにとっては支配していたということだったのだろう。





そうそう考えると、ゾンデルはむなしい気持ちに支配されていく。
今までサイロンのことを、友で家族のように思って接していた自分がむなしくなる。




サイロンの性格は理解していたつもりだが、人の上に立ち権力を示したいその性格は変わっていなかった。














そこから、サイロンは村の周囲を捜索させた。
途中で出会う人や他の種族は攻撃しても構わないとのことだった。



その理由は、”村の安全を守るため”そういう理由を付けていた。





今回の二人の失踪に付いて、多くの村人には知らせていなかった。



仲には疑問を持つ者もいたが、その者は理由もわからず村の中で疎外されていった。
その話しが自然と広まっていき、誰も二人のことを口にする者はいなくなっていった。





そんな認識が広まりこの問題が落ち着いたころ、ゾンデルとナルメルは永い間の牢獄の日々を終えた。




しかし、元通りの生活は出来なくなっていた。


役職や仕事、住処まで取り上げられていた。





今まで気軽に接していた村人も、よそよそしい目付きで二人のことを見た。



ナンブルとナイールのことから、この二人にも接触すると酷い罰を受けてしまうという噂が既に広まっていたのだった。





住民の中には、他の者にバレない様に小さな声で「ごめんなさい……」と謝っていく者もいた。




そういうことからも、誰かが意図的に”二人に接しない様に”との噂を流しているのだろうと判断した。








結局二人は、村の中心部から離れた荒れた山の近くの場所に移された。
そこでは大きな木材もないため、枯れ枝や草を集めたり魔法で出した草を被せて小さな小屋を作って暮らした。




このまま居なかった存在にされても仕方ない……
村人だって多少の不便を強いられるだけなら、皆で安泰に暮らせる環境は整っている。




(自分が正しいとやっていたことは無駄だったのか?)




ゾンデルは、そんな気持ちも生まれて来ていた。




結局、このままこの場所で過ごすことになった。
ただ、村からの制約は受けず、自分たちの好きなように生きることができたのは幸いだった。






しばらくしてナンブルの部下だったというヨーグと名乗る男が、ゾンデルを探してやってきた。
警備隊を辞めて、お世話になった恩を返したいとという。

ヨーグはゾンデルたちの家の近くに小屋を構え、一緒に暮らすことになった。




ゾンデルとナルメルは、ナンブルの代わりに力仕事を請け負ってくれる人がきてくれてありがたかった。

ゾンデルもこのところ腕力が衰えてきており、そんな状況下でのヨーグの申し出は助かった。





そしてヨーグは次第に、この家の一員……そして家族として認められていくことなった。



そのままナルメルと一緒になり、やがてノイエルが誕生する。





だが、そこから生活は一変する。

ノイエルが生まれてから、ヨーグは姿を消してしまった。
幼い子と弱った母を一人残して……





そこからゾンデルは気付いた。ヨーグもサイロンから命令されてやってきたのだと。



(何のために……そんなことを)





どうしても仕返しがしたくて仕方がなかったのだろう。
ナイールが自分の前から消えた痛みと、同じ苦しみを与えたかったのだろう。




だが、生まれてきたノイエルには罪はない。
サイロンに対する怒りで我を忘れそうになったがナルメルになだめられた。



とにかくこの場所に新しい家族は一人減って一人増えたのだった。








一方、ナイールとナンブルの子は、サイロン委引き取られていた。
が、その住まいは不自由のない村長の家ではなく、離れた小屋の中で一人での生活を強いられた。

そしてその呼び名も”ブンデル”と呼ばれ、親が名付けた名とは違う名で育てられることとなった。






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