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山口 犬

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第三章  【王国史】

3-145 大竜神の味方

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「有難うございます、モイスさん!」



そして、白い世界は再び消滅して元のいた場所にハルナは戻った。














「クソッ!!いったいどうすれば!?」



「マルスだけでもいけないの?とにかく、私たちより道を知っているマルスなら……!?」





「いや、魔法の仕組みが変わった以上、中の道も変わっている可能性が高い……そうなれば、私も出ていける可能性は低い」



「そんなぁ……それじゃ、私たちずっとここで足止めしていなければいけないってこと?ブンデルさん……何かいい方法はないんですか!?」



ブンデルは、サナに袖をつかまれて打開策を迫られた。
最近ステイビルのようにかっこいいところをサナに見せたいと張り切ってチャンスを待っていたブンデルだが、どう考えても自分の力量ではこの状況を打開することはできないと判断していた。




ステイビル、アルベルトやソフィーネを見ても同じ考えであった。

エレーナはハルナの姿を見て何かできないか、考えようとしている。











――!!!



ハルナの意識は、再びこの場所に戻ってきた。
その視界に、うろたえるエルフとドワーフたちの姿が目に入る。





ハルナは無言で、村の出口に通じる茂みの前まで歩いて行く。


そしてハルナは手で草木の茂みを触り、普通の感触を確かめる。






「は、ハルナさん……何を?」





ナルメルが、口にすると同時にハルナは茂みの中に身体を入れた。




「ハルナ!?……あれ?」


「え!?……あ」



エレーナがハルナの奇妙な行動を止めようとしたが、村に入る時に起きていた現象とは異なっていた。

この村に入る時には、茂みに入ると魔法によってその身体が吸い込まれていったように消えていった。
だが、いまは普通に草木の中にハルナは立っていのだった。







「なぜ……一体どうやって」





その様子を無言で見守っていたマルスが、思わず声を漏らした。
村長も、またしても信じられないといった表情でハルナのことを見つめている。





「ハルナが、やったの?」





無事に魔法が解除されていることにホッとしているハルナに、エレーナが近付いて声を掛ける。







「ううん……モイスさんがね、この辺りにかかっている魔法を解除してくれたの」




その言葉を聞き、ナルメルも魔法が掛かって入れなかった茂みの中に身体を入れる。





――ガサッ




その茂みは、魔法も何もかかっていないただの草木に戻っていた。






「ありがとう、ハルナさん。本当にありがとう……さぁマルス、お父様のところに案内して!」






「あぁ、わかった。こっちだ!」





その後に続き、ブンデルとサナもついて行く。


ステイビルの命令で、アルベルトは後から来るハルナたちに場所を伝えるためにナルメルたちを追いかけていった。







「……ぜ……何故じゃ……なぜ大竜神様は、我々ではなくこの人間だけに力をお貸しになるのだ」





村長はこの現状をみて、力なく膝を地面に着いた。
どうやら崇めているエルフよりも、ハルナにこんなにも力を貸していることが不満らしい。






ステイビルは静かに、村長の元に近付いて行く。




「村長殿、あなたはご存じなのでしょう?自分たちの信じていたもの根底が、嘘であったことを……そう認めているからこそ、ナルメルさんの父ゾンデルさんを隔離することにしたのでしょう?」





その言葉に虚ろな目をした村長は、小さく頷く。






「あぁ、そうだ……その通りだとも、人間の王子よ」





村長はそこから、今までのことをステイビルに話した。






村長の一族は、祖父の代からグラキース山に住まう大竜神を崇めるようにした。
小さい頃から、あの話を聞かされて育てられてきたのだ。


だがある日、父から村長を引き継ぐ際に、本当の話しを聞かされたのだという。



本当の話しを聞いて、驚愕した。




”この村は祖父の嘘によってできた村であるということを……”




村の決まり事や、争いの判断は全て大竜神の名のもとに行われていた。
それらが、ただの祖父や父の一存であることを知った時、この村の運命や責任が全てこの一族の責任であることに罪悪感を覚えた。





水の問題の際にも大竜神の加護を受けれなくなったことに、村民はパニックになりかけた。
我が一族に責任を取らせようとする声も聞こえてきた。




だから、村全体を眠らせてその時が来ることを待とうと決断した。





そんな時、ゾンデルは”本当のことを知っている”と話しかけてきた。

そのうえで、我々は大竜神の力ではなく、自分たちの力で生きていくべきだと話しかけてきた。
だから、村を解放しようと提案してきたのだった。





村長も、それしかない……と本当は思っていた。


だが、長い間村民を欺いていたことがバレてしまう。
そうなれば、この体制に不満を持っていたものが、自分に危険な目に会わせるのではないか……





そんな思いに正しい判断は押しつぶされ、間違った選択で事態は進んで行くことになった。





このことを知っているゾンデルは隔離し、皆を眠りにつかせることによりこの嘘は当分バレることはない。






そうして、村長はエルフの村一つを誤った方向に導いてしまった。





「……そこで、ナルメルさんが村を出て何とかしようとしたわけですね」


「ナルメルさんは、ノイエルちゃんだけじゃなく他の方の食料も何とかしようとしていたみたいですし……」




ハルナとエレーナが、それ以降のことを付け足した。




だが、それでエルフの村の流れが変わっていったのだった。







ゾンデルは無事、ナルメルたちによって助けられた。










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