問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』

山口 犬

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第三章  【王国史】

3-119 母親を探して

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「あの、皆さん……」





サナが急に話しを切り出した。

その内容はヒールに関することだった。




一日のうちに何度もヒールを使った時に、その効果が発揮できなかった経験があるとのことだった。
回数制限なのか、ヒールを掛けた対象の傷の度合いによるものと今では考えている。








「そうか……それは体力?のようなものが影響している可能性があるな」


「精霊使いも一応は”元素”を使ってのことだから、万が一密閉された中で使い続けたら枯渇すると考えられているのと一緒かもね」







ステイビルの意見に続き、エレーナも精霊使いの場合に置き換えて感想を述べた。









「傷が回復することが何度でもできるなんて、そりゃチートに近いわよね」



「え?チート……なにそれ?」



「い、いや。何でもないのよ!?」







そんなことを話しているうちに、ソフィーネの背中で気を失っていたエルフの子供が目を覚ました。







「う……うーん。お母……さん……帰って……きたの?」







その子供は、ソフィーネの背中に顔をこすりつけて感触を確かめていた。








「あら、目が覚めたの?具合はどう?」








子供は、聞き慣れない声に驚き背中で飛び起きた。
気を失う直前のことを思い出し、危険を感じてソフィーネの背中から離れようとした。


しかし、ブンデルの出した蔦のロープで”おんぶ”の状態で固定されているため身体を話すことはできなかった。







「い、嫌ぁぁぁ!!な……何なんですか、あなたたちは!?ここはどこ?わたしをどこに連れていくんですか!?」




ソフィーネの背中でじたばたしながら、何とか抵抗しようとする。






「あらあら……元気がいいのね。もう体調も平気かしら?」







ソフィーネは子供の必死の抵抗をただのじゃれ合いのように扱い、全く動じなかった。







「はぁはぁ……降ろして……離してよ……お母さんのところに行かせて……」



「……?」







抵抗することに疲れて、身体の動きが弱くなる。
エルフの子供は、泣きながらソフィーネに話しかけた。








「なにが……あったの?」







ソフィーネはさっきの女性と何か関連があると感じ、一旦歩みを止める。
ステイビルたちに声をかけ、事情を話した。






まずは子供を降ろして、怯えさせないようにした。










「ねぇ、私はハルナっていうの今から用事があってエルフの村に行くんだけど……あなた名前は?」







しかし、エルフの子供はハルナの顔ではなくその隣にいるフウカの姿に釘付けとなっていた。






「あ、この子は風の精霊で”フウカ”ちゃんっていうの……よろしくね」


「あたし、フウカ。よろしくねー!!」






フウカからの挨拶に気をよくした子供は、自分の名前を名乗った。







「わ……わたし、ノイエル」


「ノイエルちゃんっていうのね、かわいい名前ね」









ハルナはそういって、ノイエルの頭を撫でた。
するとノイエルは、気持ちがよかったのか機嫌がよくなった。







「で、どうしてあんなことになったの?何かあったの?」








そのタイミングを見てエレーナが、優しくノイエルに声をかける。






「さっき、”お母さん”って言ってたわよね?お母さんとはぐれてしまったの?」







ソフィーネも背中で聞こえた言葉をもとに、ノイエルに事情を聞いた。






「お母さん……いなくなっちゃったの。村の人たちに聞いても、知らないっていうし……誰かがさらわれたんじゃないかっていうから外に出て探してたら」






子供は急にガタガタ震え出して、目をつぶって堪えている。
多分、さっきの捕まっ時の恐怖を思い出させてしまったのだと反省した。


だが、事情を確認しないと先には進まないため、ハルナがさらに確認をする。






「それで探している途中、変な人たちに捕まっちゃったのね?」






ノイエルは震えながら、一つだけ頷いた。







「その男たち、何か言ってなかった?」







ノイエルはゆっくりと顔を上げて、ハルナの目を見つめた。







「そういえば……”またエルフだ”って言ってた気がする」







ハルナはステイビルの顔をみると、同じような結論に達していた顔つきだった。





「……あの村と同じ奴らの仕業だな。ソフィーネとやり合った女もそうだが、この子の母親もそいつらに巻き込まれたのだろうな」


「とにかく、いったんエルフの村を目指しましょう。この子を安全な場所に避難させないと……」


「ダメ!!村に戻ったら、もう出してもらえなくなっちゃう!?」





ノイエルが強く村に向かうことを拒絶する。





「まさか……お前、黙って村を出てきたんじゃないだろうな!?」







いままで黙っていたブンデルが、叱るように声を大きく出した。


ブンデルの声に怯えるノイエルをサナが、優しく抱きしめる。





「ブンデルさん……どうしたんですか?そんなに大声出して?ノイエルちゃんが怯えてるじゃないですか」




ノイエルはサナの胸の中に埋めて、泣きたい気持ちを必死に堪えている。
抱きしめているサナの腕には、小さく震えるノイエルの脅えが伝わってくる。




「ブンデルさん……どうしたんですか?黙って出てくると何かあるんですか?」





ここは第三者が入った方がいいと判断し、ハルナが代わりにブンデルに質問を投げかけた。





「……あのエルフの村の秘密を守るための規則があるんです。黙って出ていったものは、二度と戻らないか戻っても二百年程度は牢屋の中で過ごすことになるんです」










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