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第三章  【王国史】

3-116 村の判断

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3-116 村の判断








「大丈夫です。私たちはステイビル王子の仲間としてここにいます。ですからそこまで気にされなくても結構ですよ。それよりも、この状況を整理する方が先決ではないですか?」



「……有難うございます、ドワーフ様。それにステイビル王子」







落ち着いたところでハルナたちはまた、屋敷の方に戻り話の続きをすることにした。



ステイビルはまず、水の問題がドワーフが水流を塞き止めていたことによることを説明した。

そのことに関しては、包み隠さず伝えたうえでポッドたちの反応を伺った。
その間、サナはずっと下を向いて黙ってステイビルの声を聞いていた。










「……というわけだ。何か聞きたいことはあるか?」









ステイビルはポッドたちを見渡し、反応を伺う。
しかし、その内容にポッドを始め文句を言う者はいなかった。








「いいのか?なんでも言ってくれ」








ステイビルもドワーフ側の身勝手な行動でこの村が窮地に追い込まれた状況もあり、何かしらの不満があると思っていた。
それにそのドワーフの代表を務めていたひとりのサナがいることで、その矛先が向けられることになるのではないかと推測していた。

もちろん、その際にはサナの擁護をするつもりでもあった。
だが、不満は口に出さなければいつかは破裂してしまうこともあるだろう。
そうなれば、協力関係を築いたとしても、いつかは種族間の問題が発生してしまうことになってしまう。

ステイビルとしては早めに『喧嘩』をして、お互い理解しあって関係構築のステップへ進みたかった。


ステイビルはそのことを、山を降りてくる途中でサナには話していた。
サナは、人間から責められることも覚悟をしているといった。

悪意はなかったとはいえ、山の資源を独占している状況を作ってしまっていた。
多種族との交流が行われているのであれば、このような問題が起きていることがすぐに耳に入ってきただろう。

あの地下の町の中で生活していると、自分たち以外のことは全く考慮されなかった。



だが、そんなことは言い訳になるはずもない。

今回の件は、ドワーフがとった決断が確実に周りで生活をしている者たちへ影響を与えてしまったことは消すことのできない事実。


その責任はブンデルについていくと決めた時に、ドワーフの長老の一員として撮らなければならないと覚悟をしていた。




ほんの十数秒しか経っていないが、ステイビルがポッドたちに確認してから無音の状態が続いている。
村の住民たちの視線は、ステイビルに注がれ次の言葉を待っていた。








「……いいのか?何かあるんじゃないのか?」







もう一度、ステイビルはポッドに向かって確認をする。






「我々としては何もございませんよ、ステイビル様。たしかに水の問題で様々な問題が発生しました。ですが、我が娘チュリーや怪しい商人たちからも我々を守っていただきました。それに、今では東の国の管轄として認めてくださり、物資の支援やこれから水の問題も解決なさってくれようとしておられます。そんな王子の決定に尽力することはあっても、我々はそれに対し異議を唱えること絶対になどありえません」




そう言って、サナの方を見る。




「ドワーフ様も、王子のことを信頼されてついてこられたのでしょう。でありましたら、我々も信頼のおける方だと信じております。それに対して、とやかく申し上げることもありません。あとは、お互いの共存のために何ができるかを、王子の元でお話合いできればと思っております」







そう言って、ポッドはサナに手を差し出した。


サナは驚いて、ブンデルの方を見て戸惑う。

ブンデルは人間の差し出した手に応えるように、サナに目で合図をした。

サナは、恐る恐るポッドの手をとり握手を交わした。







「……よし。しかし、何かあればお互い遠慮なく言って欲しい。それは争い合うためではなくお互いが協力し合えるために必要なことだから……な」







その言葉にポッドもサナも納得をし、まずは様子を見ながらお互いの関係を縮めていけるように努力することをステイビルの前で誓った。





その夜、ステイビルたちはポッドに招かれて夕食を共にした。
そこには久しぶりにハルナたちと合うチュリーが、大はしゃぎで待ち構えていた。

そして、ブンデルとサナに助けられた男性も妻に支えられながらその場に姿を見せた。




どうしてもお礼を伝えたいと言って無理やり妻に頼んで連れてきてもらったのだという。

体力は落ちていたが、身体の方は何ともなかったようだ。






「倉庫が崩れ荷物が自分の身体の上に雪崩れ込んできた来たときは、もう助からないと思っていたが助けていただき本当にありがとうございます!」








サナは、その行動に少し戸惑っている。



ドワーフの町では傷を治しても、ここまで感謝されることはなかった。



『大きなけがをしたら長老の元へ』




これがドワーフの町では、一般的な認識だった。

だが人間にとっては、この魔法が浸透していないため、ああいう場合は”諦める”しかなかった。




それが普段通りに過ごせる身体に戻るということは、神に近い技であることは間違いなかった。



しかし、この後ステイビルは、サナの力を広めない様に町の中にお触れを出した。
この力を求めてサナを奪おうとするものも出てくるからだ。






そして夜は更けて、ハルナたちは次の段階の行動を起こすことになる。








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