問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』

山口 犬

文字の大きさ
上 下
266 / 1,278
第三章  【王国史】

3-97 黒剣

しおりを挟む






「くそ……ったれ……あと少しで……あと少しのところでぇぇぇえぇぇえ!!!」




ブウムは急に大声をあげた途端、水の輪が真っ黒に染まり風化した。







「おの……れぇ……許さんぞ、許さんぞニンゲン!!」






ブウムは剣を抜き、構えるとその剣から真っ黒な瘴気が剣から漂っていた。




「あと少し……だと?そんな状況の判断ができていないから、こんな状況に陥ったのではないか?恨むなら自分の見通しの甘さを恨むんだな」






そういうと、ステイビルとアルベルトも腰から剣を抜き、襲撃に備えた。

ソフィーネはエレーナとハルナを攻撃から守るために後ろに立った。










「黙れ!人間ごときがこの俺に意見を言うんじゃねーよ!!」



「ブウム!!」






ジュンテイを治療していたサナが、ブウムの姿を見て叫んだ。
しかし、その声は既にブウムには届かった。


剣から湧き出る瘴気が、ブウムの身体を包んでいく。
その身体は灰を被ったかのように、真っ黒く染まっていった。




「グゥルルルガァウ……」




ブウムの表情は一変し、その口からはもはや言葉でないものがこぼれる。





「サナさん、そこから出てこないで!」





エレーナが、ブウムに向かいかけたサナを止める。







「もう……自分の意識がないみたいだから」




そういうとエレーナが氷の粒を、この空間一杯に浮かび上がらせた。

一緒にハルナも見えない空気を圧縮したホーミング弾を作り、その時に備えた。







「グワァッ!!!!」




――ガキン!!




ブウムはステイビルに飛び掛かり、その手にした黒剣で切りつける。
ステイビルはその剣を受け流し、軌道を逸らしよろけたところを剣の柄で後頭部を叩きつける。




そのままブウムは床に叩きつけられ、無様に伏してしまう。


その間、ステイビルは黒剣に触れた自分の剣を確認する。
自分の剣までは、侵されていないようだった。





「がっは!?」






ジュンテイが急に苦しみ始めた。







「ジュンテイさん!?」







サナは回復させたジュンテイが、苦しみ始めているのを見て動揺する。





「傷は……傷は治ったはずなのに……どうして!?」





「その人の身体から、生命力が抜けていっているね」






そう告げたのは、ヴィーネだった。
ジュンテイの身体の中の水の流れを見るとジュンテイの身体から生命力が抜けていくのがみえるとのことだった。







「まさか……この剣が!?」







倒れ込んでいたブウムが起き上がり、その手元の剣は淡く光っている。









「どうやら、ジュンテイさんの体力を吸い取っているみたいだな」


「もしかして、ジュンテイさんもあの黒いのに罹っているんじゃ……」








ハルナはフウカをサナのところに行かせ、ジュンテイの様子を見に行かせる。
一緒にエレーナもヴィーネを行かせて、防御と身体の中の流れを見るように指示をした。







「……ということは、それまでブウムへのダメージは与えられないってことだな」





ステイビルが今の状況を確認する。


もしダメージを与えたとしても、またジュンテイから生命力を奪い回復してしまうだろう。
それはジュンテイにもダメージを与えてしまうことになる。




そこからは、防戦一方となる。

理性を失ったブウムは、お構いなしにハルナたちに攻撃を仕掛けてくる。
時々サナやデイムが、ブウムに対して攻撃を止めるように呼び掛けるがその声は届いている様子はない。



何とかこちらの被害を少なくしようと、エレーナが氷の壁の中に閉じ込めるが黒に浸食されてしまい壊されてしまう。


それならばと、何とか剣の力を無効にしようと剣を凍らせようとしたが、動きが速く中々とらえることができないため失敗に終わる。







そして、ここで事態が変わることになる。








「ハル姉ちゃん、終わったよ!これでこの人から黒いものが消えたよ!!」



「ありがとう、フーちゃん、ヴィーネちゃん!!」



「よし、聞いた通りだ。反撃に……!」









ステイビルは、反撃の指令を出す直前に言葉を止めてしまった。



ステイビルの視界の中に、イナとニナが助けを請うように祈る姿が見えた。









「……反撃にでる。相手の攻撃を奪い、おとなしくさせるぞ!」




「「はい!」」








その言葉を聞き、イナの表情は和らいだ。






「ゴワァアア!!」






言葉にならない叫びで、ブウムは再びステイビルに向かって襲い掛かってくる。








「厄介な縛りを付けてしまったな……フン!」








ステイビルは身体を横に流し、ブウムの攻撃を避ける。
そして、ブウムの持つ剣を強打した。




(よし、剣を……む!?)






ブウムは衝撃で手を離していたが、手から剣が落ちない。
よく見ると、剣と手が一体化している。








「なんだコレは!!」


「どうやら、この黒剣は魔剣のようですな……」







意識が回復したジュンテイが、黒剣を見てそう告げた。





「魔剣……?なんだそれは」



「闇の力を持つ者が持っているとされている剣です。相手の体力を奪う力、魔以外の者を取り込もうとする力。噂には聞いたことがあるのですが、実際に存在するとは……」



「まぁ、それはうちの秘蔵品の一つなんだけどね……」






この場に、今までいなかった女性の声がした。
今までに、何度か聞いたことのある警戒すべき声。






「お、お前は……」



「ヴァスティーユ!!」








しおりを挟む
ツギクルバナー
感想 5

あなたにおすすめの小説

旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】 ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む

家具屋ふふみに
ファンタジー
 この世界には魔法が存在する。  そして生まれ持つ適性がある属性しか使えない。  その属性は主に6つ。  火・水・風・土・雷・そして……無。    クーリアは伯爵令嬢として生まれた。  貴族は生まれながらに魔力、そして属性の適性が多いとされている。  そんな中で、クーリアは無属性の適性しかなかった。    無属性しか扱えない者は『白』と呼ばれる。  その呼び名は貴族にとって屈辱でしかない。      だからクーリアは出来損ないと呼ばれた。    そして彼女はその通りの出来損ない……ではなかった。    これは彼女の本気を引き出したい彼女の周りの人達と、絶対に本気を出したくない彼女との攻防を描いた、そんな物語。  そしてクーリアは、自身に隠された秘密を知る……そんなお話。 設定揺らぎまくりで安定しないかもしれませんが、そういうものだと納得してくださいm(_ _)m ※←このマークがある話は大体一人称。

婚約破棄され逃げ出した転生令嬢は、最強の安住の地を夢見る

拓海のり
ファンタジー
 階段から落ちて死んだ私は、神様に【救急箱】を貰って異世界に転生したけれど、前世の記憶を思い出したのが婚約破棄の現場で、私が断罪される方だった。  頼みのギフト【救急箱】から出て来るのは、使うのを躊躇うような怖い物が沢山。出会う人々はみんな訳ありで兵士に追われているし、こんな世界で私は生きて行けるのだろうか。  破滅型の転生令嬢、腹黒陰謀型の年下少年、腕の立つ元冒険者の護衛騎士、ほんわり癒し系聖女、魔獣使いの半魔、暗部一族の騎士。転生令嬢と訳ありな皆さん。  ゆるゆる異世界ファンタジー、ご都合主義満載です。  タイトル色々いじっています。他サイトにも投稿しています。 完結しました。ありがとうございました。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

飯屋の娘は魔法を使いたくない?

秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。 魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。 それを見ていた貴族の青年が…。 異世界転生の話です。 のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。 ※ 表紙は星影さんの作品です。 ※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。

【完結】白い結婚で生まれた私は王族にはなりません〜光の精霊王と予言の王女〜

白崎りか
ファンタジー
「悪女オリヴィア! 白い結婚を神官が証明した。婚姻は無効だ! 私は愛するフローラを王妃にする!」  即位したばかりの国王が、宣言した。  真実の愛で結ばれた王とその恋人は、永遠の愛を誓いあう。  だが、そこには大きな秘密があった。  王に命じられた神官は、白い結婚を偽証していた。  この時、悪女オリヴィアは娘を身ごもっていたのだ。  そして、光の精霊王の契約者となる予言の王女を産むことになる。 第一部 貴族学園編  私の名前はレティシア。 政略結婚した王と元王妃の間にできた娘なのだけど、私の存在は、生まれる前に消された。  だから、いとこの双子の姉ってことになってる。  この世界の貴族は、5歳になったら貴族学園に通わないといけない。私と弟は、そこで、契約獣を得るためのハードな訓練をしている。  私の異母弟にも会った。彼は私に、「目玉をよこせ」なんて言う、わがままな王子だった。 第二部 魔法学校編  失ってしまったかけがえのない人。  復讐のために精霊王と契約する。  魔法学校で再会した貴族学園時代の同級生。  毒薬を送った犯人を捜すために、パーティに出席する。  修行を続け、勇者の遺産を手にいれる。 前半は、ほのぼのゆっくり進みます。 後半は、どろどろさくさくです。 小説家になろう様にも投稿してます。

【完結】契約結婚は円満に終了しました ~勘違い令嬢はお花屋さんを始めたい~

九條葉月
ファンタジー
【ファンタジー1位獲得!】 【HOTランキング1位獲得!】 とある公爵との契約結婚を無事に終えたシャーロットは、夢だったお花屋さんを始めるための準備に取りかかる。 花を包むビニールがなければ似たような素材を求めてダンジョンに潜り、吸水スポンジ代わりにスライムを捕まえたり……。そうして準備を進めているのに、なぜか店の実態はお花屋さんからかけ離れていって――?

処理中です...