259 / 1,278
第三章 【王国史】
3-90 助けを求めて
しおりを挟む「……で、お前はサナを連れてくることなく、そのままに戻ってきたというのか?」
「は、はい。邪魔が……入ったものですから……」
ドワーフは、途中まで追いかけていったが、突然現れたエルフに邪魔をされサナを連れてくることに失敗した経緯を報告する。
「そうか……わかった。休んでいいいぞ」
「え?は、はい。……!?」
ドワーフは、両脇を抱えられ身動きが取れなくなる。
「ぶ、ブウム様……お願いです、次は成功させますから、どうか……どうか!?」
引きずられながら奥に消えていくドワーフは必死に懇願するがその願いは叶わなかった。
「次はどうすればいい?どうすれば、この町を統一できるというのだ!?」
ブウムは頭を抱えながら、その後ろに姿を現した人物に対して叫んだ。
「……大丈夫よ。まだ、始まったばかりじゃない。そんなことで、種族の頂点に立てると思っているの?もう、後には戻れないんだからやるしかないのよ?」
「そうだけど、そうなんだけども。早すぎないか!?もう少し様子を見てからでも……」
ブウムの後ろにいる女性は、肩にそっと手を回す。
「あなたの想いって、そんなものなの?そんなことで揺らぐ決意なの?……はン、そんなことじゃこの計画は失敗するわね」
「しかし……もう少し、やり方があったのではないのか!?これでは、ドワーフの町が分断してしまのではないか?」
「大丈夫……安心なさい。私たちが付いているのよ……”あの”者たちを処理すれば、もうあなたを遮るものは何もなくなるんだから。それにさっきも言ったけど、もう後には戻れないのよ」
「ぐっ……」
ブウムはその言葉を聞き、次の言葉を飲み込んでしまった。
「腹をくくったなら、次の行動を起こすべきね……なるべく早くにね。でなければ、人間がこの町に我が物顔でやってくるわよ?」
そういってヴァスティーユは片手を挙げて、部屋の奥へと移動しようとした。
「ま、待ってくれ!?手伝っては、くれないのか?」
「私が出ていくと面倒な異なるのよ?多種族交流の反対派が私の力を借りて勝利したなんて、格好がつかないでしょ?」
そう言って、暗闇の中に姿を消していった。
「うぅ……ん」
柔らかな枯草とは違う感触が、頭に当たっている。
とても寝心地が良く、ブンデルは横向きになってその感触をさらに頬で味わう。
すると上にした頭の部分に、なにやら柔らかいものがのしかかってくる感触がある。
ブンデルはその顔に触れるものを、目をつむったまま手で触れて確認しようとした。
――ガっ!
ブンデルはその手を捕まえられ、驚いて目を開く。
そして身体を起こそうとするが、手で頭を太ももに押さえつけられた。
「ちょっと……まだ、じっとしててください。それにモゾモゾ動かないで!もう、くすぐったいんですから」
ブンデルは、少しその聞き覚えのある声にあることを思い出した。
(あれ?俺、たしか切られて……意識がなくなって)
「あー!痛……くない?」
しかし、服を見ると流れた血の跡がべったりとついていた。
「今回、私の”ヒール”で傷は塞いでいます。ですが、結構深い傷ですので一度では、完全には……それと」
「それ……と?」
「耳が……ごめんなさい。私の力では、傷を塞ぐだけで精いっぱいでした」
「え?」
ブンデルは恐る恐る捕まれた手を解き、自分の耳に手を伸ばす。
耳にいままでにはない、切れ込みが触れた。
「私のヒールは、開いた傷なら塞ぐことが出来ます。ですが、欠損してしまったものまでは復元できないのです……すみません」
ブンデルはサナの言葉を聞き、下に俯く。
少しずつ、ブンデルの身体が震え出した。
「ブンデルさん?」
心配になってサナは、ブンデルに声をかける。
「く……くくくく……」
「……」
「どうやら、また仲間のエルフに攻められる原因が出来てしまったな。……こんな耳、どうだ。格好悪いだろ?」
「ブンデル……さん」
「まぁ。とはいえ、もう仲間とも会うことはないだろうからな。また、はみだし者のエルフにはちょうどいい姿だろうな」
ブンデルは片膝を立て、膝に手をかけて起き上がろうとする。
だが、まだ力が上手く入らずに、よろけてまたサナの方へ倒れ込んでしまった。
「まだ、本調子じゃないんですよ!無理しないでください」
サナは再び自分の胸の中に倒れこんできたブンデルを、両手で抱き抱えている。
再び柔らかい感触の中に顔を埋めたブンデル、もうこのまま眠ってしまいたいという思いが頭を一瞬よぎった。
しかし、今はそういう時ではない。
しかも相手はドワーフ族の長老、だが長老とはいえまだ若い容姿をしたサナは好意を持つ対象としては全く問題がなかった。
「サナ様、もうそろそろ移動しませんと。また新たな追手がやってくるかもしれません」
「え?そうですね……ブンデルさん、立てますか?」
「あ、あぁ。もう大丈夫です、お世話になりました」
急いでこの場を離れようとするブンデルは、よろけて近くの木に寄りかかる。
「すみません、ブンデル様を手伝ってあげてください。ステイビル様のところまで一緒に……」
その言葉を聞き、ブンデルは焦った。
「な……なぜあの王子のところへ?」
サナは少し曇った顔をし、残りの二人の顔を見る。
「サナ様、ここは正直にお話しして協力をあおいだ方がよろしいのでは?」
付き添っていた一人が、サナにそう進言した。
「そうよ……ね」
サナは胸の前で両手を組み、懇願するようにブンデルに近づいて告げる。
「私たちの……ドワーフの町で、クーデターが起きました。ぜひ、あの王子に力をお借りしたいのです」
0
あなたにおすすめの小説
勝手にサインしろと仰いましたので、廃嫡書類に国璽を押して差し上げました
鷹 綾
恋愛
「確認? 面倒だ。適当にサインして国璽を押しておけ」
そう言ったのは、王太子アレス。
そう言われたのは、公爵令嬢レイナ・アルヴェルト。
外交も財政も軍備も――
すべてを裏で処理してきたのは彼女だった。
けれど功績はすべて王太子のもの。
感謝も敬意も、ただの一度もない。
そして迎えた舞踏会の夜。
「便利だったが、飾りには向かん」
公開婚約破棄。
それならば、とレイナは微笑む。
「では業務も終了でよろしいですね?」
王太子が望んだ通り、
彼女は“確認”をやめた。
保証を外し、責任を返し、
そして最後に――
「ご確認を」と差し出した書類に、
彼は何も読まずに署名した。
国は契約で成り立っている。
確認しない者に、王の資格はない。
働きたくない公爵令嬢と、
責任を理解しなかった王太子。
静かな契約ざまぁ劇、開幕。
---
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~
みつまめ つぼみ
ファンタジー
17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。
記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。
そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。
「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」
恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
聖女を怒らせたら・・・
朝山みどり
ファンタジー
ある国が聖樹を浄化して貰うために聖女を召喚した。仕事を終わらせれば帰れるならと聖女は浄化の旅に出た。浄化の旅は辛く、聖樹の浄化も大変だったが聖女は頑張った。聖女のそばでは王子も励ました。やがて二人はお互いに心惹かれるようになったが・・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる