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第三章 【王国史】
3-88 爆発音
しおりを挟むドワーフの町に行ったその晩、ハルナたちはこれからどのようにドワーフたちとの交渉をどのように勧めるか話し合った。
しかしドワーフ内の問題については、いくら話し合っても埒が明かなかった。
「そればかりは、ドワーフたちの問題ですからね……」
今回集落で物資のやり取りや管理を指示しており、ハルナたちが戻ってきてから初めて聞いたマーホンが感想を口にする。
「そうなのよね、こちらが手助けをしても反対派の人たちにとっては私たちは敵でしょうから……何とか長老たちから説得してもらえることができれば」
「説得って言っても……私たちが話しても、絶対に聞いてくれなさそう」
「いっそ力で従わせた方が、すっきりしそうな気がしますけどね……」
「それはちょっと」
カイヤムの言葉に反論するエレーナだが、その言葉に反応したのはステイビルだった。
「いや、実際そっちの方が案外すっきりとまとまるかもしれんな。ドワーフも、プライドが高い種族と聞いたことがある。そのため、力ずくで負けてしまった場合は素直に認めてくれるんじゃないのか?」
ステイビルの言葉に納得しかける一同だが、今一つその方針でという気にはなれなかった。
「……まぁ、そういう手段もあるということだ」
ステイビルは肩をすくめて、また別な案を出していこうといった。
結局その夜は、ドワーフに関しては何の良案も出ないままこの話は終わることになった。
それ以外東の国管轄の町となったため、決めないといけないことが多いのだった。
難しい契約の話はステイビル、マーホン、カイヤムとポッドで話し合われた。
その間、ハルナたちは無事にチュリーのお世話をすることにしていた。
そこから数日経過したその間、ドワーフからは何の連絡もなかった。
最初に到着したモレドーネからの物資を運んだ一行も帰り、次からはこちらへの到着がもう少し短い間隔で行えるように調節された。
「う、うーん……」
ハルナは、背伸びをしてじっとしてこわばった身体を伸ばした。
「ふぇぁ……」
隣にいたエレーナが、変な声を出す。
「どうしたの?」
「ちょ、ハル……クシャみ……出そぅ……逃げ……あ……黙っ…………は……っくしゅっ!!!」
――ドン!!
「え?」
エレーナのくしゃみと同時に、グラキース山から爆音が鳴り響いた。
エレーナもその事態に、呆然とする。
アルベルトとソフィーネが建物から飛び出して、その音の発生源を確認する。
「なんの音ですか!?エレン、ハルナさん、お怪我は?」
「私たちは大丈夫です。エレーナがくしゃみをしたら急に爆発音が鳴り響いて……」
「え、私のせい!?」
アルベルトの問いかけに、ハルナが答えた。
「ハルナ様、あれを。エレーナ様の問題ではなさそうです」
ソフィーネが、ハルナの背後の山を指さした。
ハルナたちは振り向くと、山からは黒い煙がモクモクと立ち上っているのが見える。
「ま、まさか。あれは……」
「……多分ドワーフの町で、何かあったんだな」
ステイビルが表に出てきて、その状況を確認した。
「行きますか?」
「もちろんだ、行くぞ!」
「「はい!」」
ソフィーネの問いに、ステイビルは当然のように答えた。
「私、先に見てきましょう」
ブンデルが、ステイビルに告げた。
その申し出に感謝し、ステイビルはブンデルに先に様子を見てもらうようにお願いした。
「お願いできますか?我々も準備ができ次第ここを出発します。ドワーフの町の入り口で合流しましょう、くれぐれも気をつけて」
その言葉に頷き、ブンデルはドワーフの町の入り口を目指して走っていった。
そこから急いで準備をし、ハルナたちも現場に向かう。
マーホンとカイヤムに、もし万が一のことがあれば東の国の応援を呼んでくるようにお願いをした。
「わかりました……ハルナさん、皆さん。お気をけて!」
マーホンは心配そうにしたがドワーフの町に何かが起きており、それが今回の人間が立ち入った可能性によることが高いためこのまま黙って見過ごすことはできないとここ数日話し合った結果の通り、ステイビルたちはドワーフの町へ向かった。
マーホンは、嫌な胸騒ぎがしているが黙ってその背中を見守っていた。
「ふぅふぅ……」
木から木へと飛び移り、ブンデルはドワーフの入り口の近くまで来た。
ブンデルは辺りを見回し、誰もいないことを確認する。
「って、なんで俺がこんなことしなきゃなんないんだよ……でも、いいタイミングだったな。へへっ」
ブンデルは、いつハルナたちから逃げ出そうかと考えていた。
だが、このタイミングは丁度良かった。
ドワーフが何だか知らないが、争っているうちにこの騒ぎに乗じて人間の元を離れることができた。
ブンデルは争い事も、調整や約束事が苦手だった。
苦手というよりも、面倒だった。
しかし、人間たちといるとそういうことばかり起きていた。
そんなことがブンデルの性格上、とても耐えられなかった。
「そりゃ、俺もあの王子みたいにかっこ良く、テキパキとこなしたいものさ。だけど、向いてないんだよねー……そういうの。こいつもあるし、当分は生きていけるだろう」
ブンデルは、肩にかけたカバンをポンポンと叩いた。
その中には、緊急時用に食料と道具がステイビルから渡されていた。
「最初の水の問題もドワーフが原因だったし、それもあの人間たちなら上手くやるんだろう?それで、エルフの村もなんとかなるさ……ま、もう関係ないけどさ」
「さて、今度はどこに行こうかな……ん?」
ブンデルが腰かけていた枝から立ち上がると、その視界に森の中を動く影を見つけた。
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