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第三章  【王国史】

3-78 ドワーフの鍛冶屋

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アルベルトは、蔦で縛られたものも含め残りのドワーフも開放し、ハルナたちの先頭を歩いて行く。


条件としては、むやみに触らないこと、はぐれないこと、などの条件を付けられ町の中に入ることが許可された。





一同は、草が生い茂る中をかき分け進んでいく。
たどり着いた場所は、高く見上げほどの絶壁。


ドワーフは崖に向かって歩く速度の勢いを落とすことなく突き進む。

そして、壁の中に溶け込まれていった。






「「――!!!!」」




初めてみる現象に、ハルナとエレーナは言葉を失った。





そして、後ろに付いてたドワーフがハルナたちに壁の中に入るように促した。



ステイビルは興味津々に、率先して入ろうとした。
だが、それをアルベルトに止められてしまう。


どんな仕掛けかもわからず一国の王子を先に行かせて、万が一何か起こしてしまうと大きな問題となる。



アルベルトが先に行くことを伝え、ステイビルもそれを了承した。





アルベルトが壁に向かって歩いて行くと、身体から重力が消えた感覚に襲われた。
そして、視界には岩を掘ってできた道が奥まで続いているのが見えた。





――ドン!




アルベルトは背中に重い衝撃を受け、前によろめいた。




「ちょっと!アル、そんなところにずっといないでよ!?」






その言葉を合図に、ハルナ、ステイビル、ソフィーネと続けて入り口を通過してきた。

最後に、後ろをついてきていたドワーフたちも壁をすり抜けてきた。







「さ、それでは奥にお進み下さい」





そう言われて、戸惑うアルベルトに先に進むように指示した。

言われるがままに奥に進んで行くと、徐々に低い振動の機械音が鳴り響いているのがわかる。





そして、通路の突き当りにある箱の中に入るように言われた。
ハルナは元の世界では見慣れていた、その箱に懐かしさを覚えた。

一同はエレベータに乗り込み、さらに地下へと下がっていく。




ステイビル、エレーナ、アルベルトは怯えている顔をしているが、ハルナは知っている乗り物なので平気な顔をしていた。






「ハルナ……よく平気でいられるわね」


「え?だってこれエレベーターでしょ?いつも乗ってたわよ」


「え?あぁ、これ向こうの世界の乗り物なの?」


「こんなに揺れなかったけどね……」







そんなことを話しているうちに、エレベーターは目的の階層まで到着する。


扉が開くとそこには、ドワーフの隊長の姿があった。







「よくおいで下さいました。ドワーフの町へようこそ」






闘志むき出しの戦闘時の態度と変わって、丁寧な態度でハルナたちに接している。



「我々を収めている者たちが、ステイビル王子にお会いなさるようです」


「収めている者たち……と?王ではなく複数いるのか?」


「はい、この町では長老制をとっております」





この町ではドワーフの長老が三名おり、そこで全てのことを決定しているとのことだった。





ステイビルたちは、洞窟を基礎としてつくられた通りを歩いて行く。



「こんな洞窟で作られた町なのに、明るいのね……」




エレーナは、今まで目にしたことのない明かりに驚いた。



この町には明かりがあった。
この明かりは全て、ガスによって照らされてたのだった。


話しを聞くと天然のガスが出ていtるようだった。


この話はステイビルも興味があり、王国に帰った時にどうにか導入できないか聞いてみたいと思っていた。






商店が並ぶ通りに来た。


このドワーフの町では独自の通貨が使われており、小さな社会の中でも品物やサービスの価値については統一を図るようにしていた。







とある場所から蒸気が噴き出ており、鉄を打ち付ける音が聞こえてくる。

その場所の前に近付くと、ステイビルとアルベルト子供がおもちゃ売り場に来たような目の輝きを見せた。






「こ……これは!?」





アルベルトは、一本の剣に目が止まる。
その剣に手を伸ばしかけたが、むやみに触れてはいけない条件を思い出し手を引いた。





「誰だ、お前ぇ……見かけねぇ顔だな」






店の中から老いたドワーフが、店の軒先に顔を見せる。




「これは、”ジュンテイ”殿。この者たちは、これから長老たちへ通すところなのです」


「デイムか……お前は剣を打つ才能がある。長老の警備なんぞ辞めてここにこい!ワシが一人前に育ててやる」




隊長は鍛冶屋の老人に声を掛けられるが、戸惑いを見せる。





「ジュ、ジュンテイ殿……今は、そういうお話をしている場合ではございません。急いでおりますので、それでは」



「ちょっと待ちな」






ジュンテイが、早々にこの場から立ち去ろうとしていたデイムを引き留める。
いや、本当の目的はアルベルトだった。






「お前ぇ、さっきこの剣を見ていたな……どうしてだ?」



「いや、可笑しな話ですが……何となく、この剣に呼び止められた気がしまして」


「お前の腰に下げた剣。少しこっちに貸せ……見せてみろ」



「は、はい……」




アルベルトは腰から剣を外し、鞘に入ったままジュンテイに手渡した。



ジュンテイは、受け取った剣を鞘から抜き剣を見つめる。


上下、前後左右、剣の全てをみる。




そして、鞘に仕舞って部屋の奥に持っていく。




しばらくして、ジュンテイは店の中から姿を見せる。




「それを、持っていけ」



ジュンテイは、先ほどアルベルトが手を伸ばそうとした剣を差し出した。







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