問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』

山口 犬

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第三章  【王国史】

3-43 エレーナの異変

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「ヴェーラン、ノーブル、ノーラン。世話になったな、感謝する」


「いえいえ、とんでもございません!我が孫娘のノーランを助けていただいた恩は、決して忘れはしません。また何かお困りの際でこのエフェドーラ家が必要な場合は、なんでもおっしゃってください。……マーホンも、しっかりとおやりよ?」


「はい、祖母様。この王選のお手伝い、しっかりと果たしてまいります」


「しっかりとおやり。体には気を付けるんだよ」






そういってヴェーランは、マーホンの手を握った。






「あ、あの……アルベルト様。道中、お気をつけて。また、是非わたくしの顔を見に来てくださいませ」


「あぁ、その際はぜひ寄らせていただこう。ノーランさんも、お元気で」


「ちょっとアル!荷物入れるのと馬をつなげるの手伝ってよー!」






荷物を抱えてその表情は見えないが、その先からエレーナの困り果てた声がした。






「あぁエレン、すぐ行くよ……それではまた、ノーランさん」





そういうと、アルベルトはさっと振り返りエレーナに身体を寄せて、荷物の半分以上を受け持った。





「……ハルナさん。アルベルトさんとエレーナさんって……もしかして」






”やっと気づいてくれたか……”という思いで、ハルナはホッとしてその質問に答えた。







「あの二人はね、幼馴染なのよ」


「え?そうなんですか……てっきり付き合っているのかと」


「へ?」


「じゃあ、まだ私の入るスキはありそうですね!」


「あ、あの……」


「ハルナさんも、協力してくださいね!」


「い、いや……その」





その言葉を告げるノーランの目は真っ赤になり、涙が零れ落ちそうだった。
やっぱり二人の間にある絆の中に、ノーランが入る余地はないと悟った。
何とか強がろうとしたが、負けてしまった悔しさとあきらめきれない思いなどが入り混じり心の中のグラスから水が溢れてしまった。





ハルナは、そっとハンカチを渡して抱き寄せて胸を貸してた。


傍にいたマーホンは自分もやってもらったことのない行動にイラっとなりかけたが、後ろを振り向いてみない様にした。






そして、いよいよ出発の準備が整った。





「それでは行きますよ……はい!」




出発の合図とともに、馬に前に進む合図を送る。
今回は、マーホンが馬を操る。


マーホンが、ヴェーランたちに立派に役に立てることを見せたいために苦手であったが自分から進んで申し出た。


ノーランはハルナの顔を見て、必死に手を振っている。
ハルナもそれに対して、手を振って返した。





その奥には大きく広がる、あの池が見える。
水面に一匹の大きな魚が飛び跳ねて、そこから波紋が広がっていくのが見えた。
















二台の馬車はグラキースの山を目指して進んでいく。
北の方角へ進んでいるらしく、その手前の山から吹き下ろされる風は乾燥して冷たい。


馬車の中も、閉じた窓のガラスから冷たい風が入り込む。
馬車を操るマーホンとソフィーネは温かいローブに包まり、時折強く吹く風の中を進んでいく。










「うぅ、寒いですね。こういう時、火の精霊使いの方がいたらが便利ですね」


「ちょっと、マーホンさん。そういう話は前にも聞いたことがあるわ」


「え、そうなんですか?」


「この世界での、”定番ネタ”かと思うほどよ。そうよね、エレーナ?」





ハルナはエレーナの顔を見ると、いつもの笑顔が返ってくると思っていたが様子が違っていた。
いつも健康的な頬の肌は蒼白く変わり、寒さを堪えるようにガタガタと震えている。


緊急事態のため、ハルナは後ろの馬車に連絡するためフウカにお願いした。




「フーちゃん、ソフィーネさんにエレーナの様子がおかしいって伝えてきて!」


「うん、わかった!」





ハルナたちは一旦この場所に停まり、エレーナの様子を見ることにした。





エレーナを火を焚いた傍に横にさせ、冷たい風が当たらない様に馬車と馬車の間にした。

マーホンが濡れた布を絞りエレーナの額に当て、ソフィーネが病状を診ている。




「……どうですか?ソフィーネさん」


「熱がありますが、黒い瘢痕がないので闇の力ではなさそうです。とにかく、今日はここで様子をみましょう」




「そうだな。無理に動かして、何かあっても大変だ。エレーナの身を第一に考えよう」




風が強いため、ヴィーネにお願いしてこの一帯を氷の壁で囲うことにした。
ハルナは、寒い地域での”かまくら”が頭に浮かび、あの中は温かいということを思い出した。
特に精霊使いの氷は、元素の力を利用しているため溶けにくいという特徴がある。


これにより焚火の熱がこの空間に滞留し、温くもりが増していく。



だがエレーナの容体は悪化していくばかりだった。

始めは唸っていたその声も次第に聞こえなくなり、呼吸も荒く熱が増していった。


それに感応してか、ヴィーネの様子も悪くなっていく。




「ちょっと。ヴィーネ!大丈夫!?」




フウカの問いかけにも、ヴィーネは口をパクパクさせるだけで何も答えない。

そのせいか、氷の壁も消えかかり、風が入り込んでくるようになった。




「どうしよう、ハル姉!?」


「どうしようっていっても……」



ハルナは、心配そうにアルベルトを見る。
が、アルベルトもあの元気なエレーナがこんなに苦しんでいる姿を見て何もできない自分を責めている。



「……モレドーネに戻るか?」


「ステイビル様。いまエレーナ様を動かすのは危険な状態かと。それに、これから徐々に暗くなってまいります。何か起きた時に、エレーナ様の身を守るには困難です」


「そうか……どうしようもないか」




ステイビルも、助けてやれない悔しさがにじみ出ている。






「おや、どうされました?」






氷の壁の向こうから、一人の男性が話しかけてきた。







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