172 / 1,278
第三章 【王国史】
3-3 組分け
しおりを挟む「ハルナ様。王宮精霊使いへの昇任、おめでとうございます!」
「「ハルナ様、おめでとうございます!」」
マーホンや他の従者の方々が、ハルナの成果を祝ってくれた。
「あ……ありがとうございます」
しかし、ハルナはそんなに大したことをしたつもりはなかった。
ただ、訓練と称するゲームを楽しんでいただけだったのだから。
マーホンからしてみれば精霊使いになり、しかも一般の人が目指せるそのクラスの最高職に就けたのだ。
更に言えば、王選の精霊使いに選ばれているのだから、これ以上ないほどの憧れの人物となった。
この状況をどうするべきか、ハルナはエレーナたちに相談してみた。
エレーナは困るハルナを見て楽しんでおり、まともなアドバイスがもらえなかった。
クリエは、マーホンとハルナが親しくしているのが面白くないようで、この話をするとクリエの機嫌が悪くなった。
ルーシーは、何故か自分が戸惑いながら「わ……私、”そっち”の世界はどうも苦手で……」と、ものすごい勘違いをされた。
最後にメイヤとソフィーネにも相談したが「ご自分でお考え下さい」と、これもまたハルナを助けてくれる答えは返ってこなかった。
そこからハルナは、なるべく一定の距離を置いて接するようにした。
受けとる好意も、ある一定の基準を越えない程度にしようと決めたのだった。
そんなことで悩んでいると、数日間があっという間過ぎてしまった。
そして、いよいよ王宮から王選に関する招集の知らせが届いた。
その指定された通り、四人とその付き添いは玉座の間に集まり再び王を前にした。
「この数週間、ゆっくり休めたか?聞いたところによると、鍛錬に励んでいたようだが……」
グレイネスは両端にいる、ヴェクターとシエラの顔を交互に見渡した。
「王よ。これしきのこと、全く問題ありません」
そう代表して答えたのは、ルーシーだった。
「そうか、ならばこれ以上何も申すまい。……では、本題に入る。ヴェクター」
名前を呼ばれた騎士団長は一歩前に歩み出て、王の後ろにいる王子に向かって告げた。
「これより、両王子も該当者となりますので前の精霊使いたちとお並びいただけますでしょうか」
そう言われ、ステイビルとキャスメルはハルナたちの前に用意された席に腰かけた。
「それでは、今回の王選についての説明を致します。まず最初にご存じとは思いますが、今回の趣旨について。王選は次期国王を決定するために行われ、過去の通りに従い大精霊様と大竜神それぞれ四つの加護を早く受けた者が次期国王と認められます」
それについては、この場にいる全員が共通の認識であることを確認した。
「今回、同一属性の者がいないためチームの所属している属性のいずれかから加護を受けに行くようにする。属性やどちらの神から向かうのかは、それぞれのチームで判断してかまわない」
いつも人材の状況に応じて、細かなルールは毎回変えられている。
今回はまた、他のルールが追加されることになった。
「さらに今回は、各精霊使いに対して一名ずつ付き添いの同行を許可する。これは、近年怪しいものが増えてきているための措置で、少しでも危険度を下げるための措置である」
怪しいもの……これはヴェスティーユなどのことを指していた。
これまでの報告から、特にハルナと遭遇する可能性が高いと判断し、身を守る措置として人員の追加が許可された。
「だが、その者は精霊使い以外の者とする」
これは今までも王子一名に対し、精霊使い二名で王選を行ってきたためである。
付き添いもあくまで補助として考えた場合、別な精霊使いをチームに加えることは許されなかった。
「……それでは、ここまでで何か質問はあるか?」
グレイネス王が、一旦ここまでの状況を確認する。
その問いに対し、ハルナたちは首を振ることもせずただ静かに時が過ぎるのを待つ。
その行動が、何も質問がないという合図になる。
「よろしい。では、次にシエラよ、説明しなさい」
ヴェクターが後ろにさがり、その対側にいたシエラが前に歩み出る。
「それでは、次にチームを発表します……」
シエラはそう話を切り出すと、それに反応したのはステイビルだった。
「ちょっと待て。チームは今までは、こちらが決めて良いと聞いているが、決まっているのか!?」
シエラはこうなることを予測していたかのように、落ち着いてステイビルの発言に対して返した。
「はい。今回は王国側で、既に決定しました。これについては、国王様も王女様もご承認いただいており決定事項でございます」
ステイビルは父親である国王の顔を見るが、グレイネスは微動だにしない。
これ以上抗議しても無駄と判断し、ステイビルは話しを中断させてしまったことを詫びて腰を下ろした。
「それでは、引き続きチームの発表を行います……」
一瞬この玉座の間に、無音の時間が訪れる。
ほんの数秒が、この場にいる者たちはとてつもなく長く感じていた。
「まず、ステイビル様には……」
ステイビルが膝の上に置いていた手を強く握る。
「ステイビル様には、水の精霊使い”エレーナ・フリーマス”と風の精霊使い”ハルナ・コノハナ”の両名が。次にキャスメル様には、火の精霊使い”ルーシー・セイラム”と土の精霊使い”クリエ・ポートフ”の両名の組み合わせとします」
0
お気に入りに追加
372
あなたにおすすめの小説
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。
【完結】天下無敵の公爵令嬢は、おせっかいが大好きです
ノデミチ
ファンタジー
ある女医が、天寿を全うした。
女神に頼まれ、知識のみ持って転生。公爵令嬢として生を受ける。父は王国元帥、母は元宮廷魔術師。
前世の知識と父譲りの剣技体力、母譲りの魔法魔力。権力もあって、好き勝手生きられるのに、おせっかいが大好き。幼馴染の二人を巻き込んで、突っ走る!
そんな変わった公爵令嬢の物語。
アルファポリスOnly
2019/4/21 完結しました。
沢山のお気に入り、本当に感謝します。
7月より連載中に戻し、拾異伝スタートします。
2021年9月。
ファンタジー小説大賞投票御礼として外伝スタート。主要キャラから見たリスティア達を描いてます。
10月、再び完結に戻します。
御声援御愛読ありがとうございました。
異世界着ぐるみ転生
こまちゃも
ファンタジー
旧題:着ぐるみ転生
どこにでもいる、普通のOLだった。
会社と部屋を往復する毎日。趣味と言えば、十年以上続けているRPGオンラインゲーム。
ある日気が付くと、森の中だった。
誘拐?ちょっと待て、何この全身モフモフ!
自分の姿が、ゲームで使っていたアバター・・・二足歩行の巨大猫になっていた。
幸い、ゲームで培ったスキルや能力はそのまま。使っていたアイテムバッグも中身入り!
冒険者?そんな怖い事はしません!
目指せ、自給自足!
*小説家になろう様でも掲載中です
疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
飯屋の娘は魔法を使いたくない?
秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。
魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。
それを見ていた貴族の青年が…。
異世界転生の話です。
のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。
※ 表紙は星影さんの作品です。
※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。
毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。
克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。
転生先は盲目幼女でした ~前世の記憶と魔法を頼りに生き延びます~
丹辺るん
ファンタジー
前世の記憶を持つ私、フィリス。思い出したのは五歳の誕生日の前日。
一応貴族……伯爵家の三女らしい……私は、なんと生まれつき目が見えなかった。
それでも、優しいお姉さんとメイドのおかげで、寂しくはなかった。
ところが、まともに話したこともなく、私を気に掛けることもない父親と兄からは、なぜか厄介者扱い。
ある日、不幸な事故に見せかけて、私は魔物の跋扈する場所で見捨てられてしまう。
もうダメだと思ったとき、私の前に現れたのは……
これは捨てられた盲目の私が、魔法と前世の記憶を頼りに生きる物語。
婚約破棄されたので森の奥でカフェを開いてスローライフ
あげは
ファンタジー
「私は、ユミエラとの婚約を破棄する!」
学院卒業記念パーティーで、婚約者である王太子アルフリードに突然婚約破棄された、ユミエラ・フォン・アマリリス公爵令嬢。
家族にも愛されていなかったユミエラは、王太子に婚約破棄されたことで利用価値がなくなったとされ家を勘当されてしまう。
しかし、ユミエラに特に気にした様子はなく、むしろ喜んでいた。
これまでの生活に嫌気が差していたユミエラは、元孤児で転生者の侍女ミシェルだけを連れ、その日のうちに家を出て人のいない森の奥に向かい、森の中でカフェを開くらしい。
「さあ、ミシェル! 念願のスローライフよ! 張り切っていきましょう!」
王都を出るとなぜか国を守護している神獣が待ち構えていた。
どうやら国を捨てユミエラについてくるらしい。
こうしてユミエラは、転生者と神獣という何とも不思議なお供を連れ、優雅なスローライフを楽しむのであった。
一方、ユミエラを追放し、神獣にも見捨てられた王国は、愚かな王太子のせいで混乱に陥るのだった――。
なろう・カクヨムにも投稿
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる