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山口 犬

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第二章  【西の王国】

2-84 カステオ・K・ファーロン

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「あなたはなぜ、その王選に参加されているのですか?」


「そ……それは」


一瞬、言葉に詰まるニーナ。


ニーナの中には王選に対して様々な思いがあるが、真っ先に浮かんだことを口にした。



「兄に……カステオに王の権力を奪われたくはないからです」


「それは……なぜですか?」



「兄は、恐ろしい人物です……人を人とも思わないような人物なのです」




話しによると、カステオという人物はニーナの五つ年上のようだ。
周りの人物に聞いたところによると、幼い頃から甘やかされて育てられてきた。
そのため自分が出来ないことなどない、そう思っている。





カステオがまだ四歳の頃、貴族や大臣が集まる幼児向けの施設の中で問題は起こった。





カステオは室外で遊んでいた、砂場で一人きりで遊んでいた。
性格は、自ら声を掛けていくようなタイプではなかったようだ。


それを見かねた年上の子供が、カステオを遊びに誘ったという。


誘われたカステオは、喜んでその輪の中に入っていった。
遊びの内容は、勝ち負けを決めるような遊びが多かった。

当然、カステオは年上の中で遊んだため、ほとんど勝ちを得ることはなかった。



そのことに不満を持ったカステオは、最初に誘った子供を呼びつける。

カステオは、その子供に聞いた。




「――ねぇ。君の好きな人は誰?」




カステオより年上な子供は、そろそろ恋愛感情も芽生えるような年頃だった。
その子にも確かに、学校内で気になる子はいた。

だが、照れもあってその時に返した答えは……


”両親”


その答えを聞いたカステオは、遊びの輪から離れていった。
そして、警備をしていた側近を呼んでこの両親を探し投獄することを命じた。




翌日……

洞窟の牢屋の入り口の前で、悲痛な声で両親の名を泣き叫ぶ兄弟の姿があった。


その様子は城の中からも見ることのでき、カステオはその場所にいた。
丁度通りかかった王が、カステオを見つけ話しかけた。



「何をしているのか?」


「私に酷いことをしたものに、罰を与えております」




カステオは、何の悪いそぶりも見せず平然と答えてみせた。




「……お前は、あの姿を見てどう思うのか?」



カステオは、一瞬何を言われたのかわからなかった。
だが、あの泣き叫ぶ様子を見て自分の思ったままの答えを口にした。




「――とても良い気持ちです」





王はその答えを聞き、何一つ顔色も変えずそのまま通り過ぎていった。



ボーキンは、カステオの後ろからその様子を見ていたが、この人物がとても危険であると感じた。


当時ボーキンは、若い頃からその類い稀なる知能と才能を買われ、王室側近の警備兵となっていた。
ボーキンは、その優しさからカステオに気に入られており、カステオも仲の良い兄弟のように感じていた。



しかし、この状況に異様な空気を感じ、ボーキンはカステオに告げた。




「王子……あの者たちを、いつまであの様にしておくおつもりですか?」




もう見飽きたのか、その場を離れようとして歩き始めたカステオは後ろのボーキンの問いかけに振り向いて笑顔で応えた。




「……ずっとだよ」





その夜、ボーキンはその家族を牢屋から出し、国外へ逃げるように指示した。
ディバイド山脈に向かう時に、マギーという宿屋をしている女性に事情を話して商人と一緒に山を越えるようにアドバイスをした。

その数か月後、ボーキンのおかげで家族は無事に東側にわたることが出来たと商人を通じて報告を受けた。


がしかし、そのことがカステオに見つかり、ボーキンは王室から辺境への異動を命じられた。
勿論、理由など聞いてもその行為が無意味なことはわかっていた。


それに、命まで奪われなかったことが、これまでのボーキンに対する評価なのだろう。


ボーキンは、荷物をまとめ王室内の警備兵詰め所を出ようとすると、左右に並んだ無言で警備兵が胸に手を当てて敬礼する。
それに応えるように、ボーキンはまっすぐと前を見てその中を歩いて行く。


最後の警備兵が、そっとボーキンに耳打ちをした。



「……女王に、第二子が授かったとのことです」



ボーキンはその言葉を聞いて、安心した。
これでこの国の未来にも希望が出来たことを。












「……それから兄は、自分の気に入らないことや思い通りにならないものには危害を加えているのです」


「西の国の王は、何も言われないのですか?」




ドイルが、東の国と異なる王室の状況に思わず口を挟んだ。

その問いかけにはボーキンが答えた。



「アーリスからお聞きかもしれませんが、わが国では”力”が全てです。権力、知力、武力……その他全てを有効に使えるものが優遇されるのです」


「ということは、黙認ということでしょかね?」



ルーシーの言葉に、アーリスもボーキンも頷く。




「私……いえ、私たちは兄が一国の王となることを止めたいのです……」


「そういうことだったのね」



エレーナもその状況を他の国の人の話で、切り捨てられなかった。





「それで、今回は西の国で消息が不明になっていたアーリスと、あの警備兵隊長のことを引き取りに来たのですが、途中怪しい人物がこちらの方に向かっていると聞き急いで駆け付けた次第です」




「……それが、先ほどの襲撃ですね?」


「そうです、まさか警備兵を消そうと思っていたとは……」



「口封じなのでしょうか?」



ソルベティが、思いついたことを口にした。



「その可能性が高いと踏んでいます。知り合いの宿屋もボロボロにされていました」




「なぜ、あのお婆さんのお店まで襲ったんでしょうかねぇ?」



クリエが、疑問をぶつける。




「推測ですが、多分ハルナ様があの宿に泊まり交流を持たれた、そして今は西の国の王女派と繋がってしまったからではないかと」




ソフィーネは、自分の中で今一番可能性の高いストーリーを伝えた。




「東の国への脅しともとれるな」



アリルビートが、告げる。



「そ……そんな、私たちが泊ってしまったばっかりに……あのお婆さんを巻き込んでしまったなんて」




ハルナは膝から崩れ落ち、地面にへたり込んでしまった。




「その辺りは、心配なさらないように。わが警備兵が、復旧に全力で協力致しますので」




ボーキンは、ハルナに気を使ってそう告げた。





「それではニーナ様、まず警備兵の方から話し合いに参りましょう」


「そうですね……上手くいくといいのですが」



ニーナはそう告げて、話し合いのために警備兵がいる石の檻へ向かっていった。





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