問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』

山口 犬

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第二章  【西の王国】

2-42 パレード4

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「……いつまでやるのかしら、これ?」


ルーシーは、顔は笑っているが、ただ馬車の上から呼びかけに対して手を振る”作業”は既に退屈だった。



「ルーシー……こういうことも仕事なのだよ?民衆の支持が得られなければ、正常な国の運営も難しくなってくるだろうね。それともお主は押さえつける方が得意なのか?」


ルーシーの前に座る、ハイレインはそう告げる。



「ちょっと!ルーシーさん、アレ!あれを!!」



クリエが指を指した空には、大きな虹が見えている。



「す……すごいな、あれ。どうやっているの?」


「あれは、アーテリアが教えてあげたんだろうね。前回の王選の時にも同じことをやっていたよ」


「うん、でも私たちにも”できること”と”できないこと”がある。私たちは私たちらしくやればいいんじゃないかな?」


そのルーシーの言葉に、隣にいたソルベティも同意する。


「そうですよ。人にはそれぞれの魅力があるのです。ルーシー様やクリエ様は、ご自身のやるべきことをしっかりとなさればよいかと」




その言葉を聞き、クリエは笑顔になり手を振ってくれている民衆に精一杯応えた。





ルーシーたちも人気投票があることは、ハイレインから聞いていた。

初めは特段気にしていなかったのだが、先ほどの大きな虹を見て少し焦りが生じていた。
が、ソルベティの言葉に落ち着きを取り戻し、今は求められていることに対しできることだけを応えようと心に決めた。




そして、ルーシーたちも南門へ到着する。










二組はまた、正門前に集まる。

次のパレードは、休憩を挟んで行われることとなった。





「ハルナさーん!見ましたよ、あの虹すごいですね!」


ハルナの姿を見て興奮気味にクリエは話しかけてきた。



「あ、クリエさん。でも、あれ私じゃないんですよ……」


ハルナはそういって、あの現象をクリエに説明した。




「ほえー。そうなんですね、あれは水の力で作ったんですか」


「そうよ、綺麗だったでしょ?」



エレーナがそう言って、会話に入ってきた。
北門へ続く道の人が少なく、人を集めるためにやったことだとも併せて説明した。



「北門の通りと、南門の通りでは人の多さが異なるんですかねぇ?」


クリエたちの通ってきた道は、正門通りとは観衆の人数に差がなかったようだった。



「ということは、通りに集まる人の数はそのまま”人気順”ってことになるのかなぁ?」


「虹を出した後の人の数は増えたから、きっとそういうことなんでしょうね」






人気投票が低いからと言って、これからの王選に大きな影響が出るとも考えづらい。
ただ、このまま何もせずに負けてしまうのもなんだか気に食わない。


クリエの中で、葛藤が生じる。
その葛藤が表情に現れてしまったのだろう。


ハルナはクリエに、優しく話しかけた。


「とにかく、お祭りなんですから難しいことを考えずに楽しみましょう!」


「……そうですね、そうですよね!有難うございます!」



クリエはハルナの手を握り、感謝を述べた。





二回目のパレードが始まる。

一同は正門前の大通りを通り、馬車を進めていく。



そして、また北門と南門へと別れる分岐点に到着した。
今度はルーシーたちは北門へ、ハルナたちは南門へと続くむ道を進んで行く。


エレーナは途中、また虹を映し出してみせた。
町の民衆は、その壮大な景色を見て喜んでいる。


普通では見られない現象を、精霊の力によって見せてもらい興奮していた。




すると、今度は北門へ向かう道から炎の柱が吹き上がるのが見えた。

その炎は竜のようにクネクネとした動きをみせ、まるで生きているかような動きを見せた。



「な、なにあれ!!」


ハルナはその様子を見て、思わず声をあげた。




「あれは多分、ルーシーさんね。あれはハイレインが良く見せてくれていたわ」




「水でもできるのかしら……」


エレーナは思わず試そうとしたが、アーテリアに止められた。




「別にマネをする必要はないのよ。あなたは、これ以上何もする必要はないわ」



エレーナは十分に、観衆の心をつかんでいた。
これ以上、競い合うことはないのだろう。



南門へのルートは、先ほどよりも人が集まってくれていた。
その騒ぎは、門に到着するまで続き、人々は満足していた。




そして、お披露目パレードは終わりを迎える。
二つの馬車の列が、北/南のそれぞれの門に到着した。



「お疲れさまでした、ハルナ様!素敵なパレードで、感激いたしましたわ」


「あ、マーホンさん。有難うございました!このアクセサリのおかげです!」



「いえいえ、アクセサリーは身に着ける人があってのものです。ハルナ様でなければ、ここまで輝くことはありませんでしたわ!!」



「……とにかく、このアクセサリ後でお返しいたしますね」



「それは、ハルナ様のために用意いたしましたものですのでぜひハルナ様がお持ちください」


「え、いや……こんな高そうなもの、受け取るわけには!?」



そして、マーホンとの話し合いの結果、マーホンが”預かる”という形で引き取ることになった。
それはこのまま、エフェドーラ家の家宝となってしまうのだった。






後日人気投票が行われ、その結果が王宮を通じ発表された。

総合評価で、一位はルーシー、二位はエレーナ、三位はハルナ、四位はクリエという順になった。
結構接戦であると、通達には記載があった。



エレーナは、悔しがっていたがその夜はとても機嫌がよく、ハルナとオリーブは朝まで付き合わされてしまった。



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