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第二章 【西の王国】
2-33 決定
しおりを挟む「準備はいい、ハルナ?そろそろ出かけるわよ!」
エレーナの気合に押されそうなハルナ。
見極めの際には付いて行くことが出来ず、その際に大変なことが起こっていたと聞いたときには、大切な時に助けてやれない自分をエレーナは責めていた。
ハルナが城から戻り休養している間、エレーナは話し合い手になってくれた。
どちらに転んでも結果は受け入れるつもりだが、合否判定を待つ間というのはどうにも気持ちが落ち着かなかった。
「絶対大丈夫よ!見極めで起きた話を聞くと、ハルナが絶対有利だしリリィも辞退するって言ってくれたんでしょ?今日はきっと、その報告よ」
エレーナはそういうが、ハルナはその言葉に何かの”フラグ”が立った気がしていた。
意気込んで、馬車に乗り込むエレーナ。
今回はメイヤとソフィーネの代わりに付き添うことになった。
ここに至るまでには、ハイレインに必死にお願いをし何とか許してもらえたのだった。
馬車は進んで行き、進行方向の小さな窓からはお城の姿が確認できた。
「うわぁ……いつ見ても立派よね。中も素敵だったわよね!」
「もしかして……お城に入りたいがためについてきたんじゃ……」
ハルナは、エレーナを見つめる。
「ば……ちょっ!そ、そんなことないわよ!?」
動揺を隠しきれてないエレーナを見て、ため息を付く。
「……でも、こういう時にエレーナが傍にいてくれて心強いわ。ありがとね」
ハルナは素直な気持ちを、口にした。
エレーナは、ポーっとした顔でハルナを見る。
「……エレーナ、どうしたの?」
エレーナはハッと我に返る。
「いや……いや、何でもないのよ!?」
エレーナの耳と顔は真っ赤に染まり、外に聞こえるくらい心臓の鼓動が強くなっていた。
そんな二人のやり取りをよそに、馬車は城の敷地内へと入っていた。
二人は馬車を降り、そのまま玉座の間へと案内された。
今回は、王宮で務める精霊使いがハルナ達を案内してくれた。
そして玉座の間に着き、エレーナは来賓席という一般席へ、ハルナは王座の前に用意された椅子に腰かけた。
隣には既に、リリィが到着していた。
「ハルナさん、この前はどうも有難うございました!」
「リリィさん、体調もよさそうですね。ほんの二、三日しか経ってないですけど、随分前のように感じますね!」
遠くからその様子を見て、エレーナは少し機嫌が悪くなる。
(仲が良さそうじゃないのよ、ハルナ!)
手にぎゅっと力が入っている。
「……って、何イライラしてるのよ。私……」
自分を恥ずかしく思っているエレーナ。
そして、玉座の間に緊張が走る。
「――グレイネス・エンテリア・ブランビート王のご入場である。一同敬礼!」
席に座っていた者たちは、一斉に立ち上がり頭に手を当てて敬礼する。
王、王妃、王子二人と騎士団長、王宮精霊使い長が並んで入室する。
王たちは玉座に腰を下ろし、室内を見渡した後に片手を挙げる。
「一同、敬礼止め!」
一般客席と、ハルナ達は着席するように指示された。
「それでは、先日行われた”王選候補者の見極め”を行った結果を本日ここに発表する!」
騎士団長は、全体を見回しながら告げた。
「リリィ殿、ハルナ殿……両名、王の前へ」
リリィとハルナは席を立ち二、三歩前へ歩み、王の前で片膝を立てて跪いた。
「二人とも、面をあげよ」
王に言われ、二人は王の顔を見る。
「今回の見極めの試練、ご苦労だった。これにより、お主たちの王選参加の候補者としての資質を十分に見ることができた。参加してくれたことに礼を言う」
二人は、王の言葉に頭を下げた。
「それではこれより、今回の見極めにより見事、権利を勝ちとった者の名を発表する!」
発表までの数秒間、音が消えた。
大きな広間で大人数いるが、誰もが息をこらえ王からの言葉を待っていた。
「……”リリィ・ミヤマエン”に正式な王選参加の権利を与える!」
会場がざわめく。
本来の推薦者から、異議申し立てでその権利を奪ったことに成功したためだ。
正直なところ、どちらが選ばれようが構わないのがほとんどの貴族たちの考えだ。
今回は、王国が取り決めた内容に異議を唱え、それに対して成立させたことが貴族たちにとっては大きな出来事だった。
それをあのガストーマ家が、やって見せたのだ。
失敗すれば、王家から睨まれることになり貴族としての称号をはく奪されるのではという噂が広まっていた。
他の貴族は別にそれでもかまわなかった。
一人ライバルが減るだけのことなのだ。
だが、ガストーマ家はそれを成功させた。
その事に対してのざわめきが今も止まずに、玉座の間を埋め尽くしている。
コルセイルを見ると落ち着いて入るが、表情はその喜びを隠しきれていなかった。
「――静まれ、静まらぬか!」
この場を取り仕切る騎士団長が、声をあげて制する。
そして、この場が再び落ち着きを取り戻す。
この場にいる全ての者が証人となるべく、その頃合いを見計らい騎士団長は言葉を告げる。
「それでは、これより確認を行う。……リリィ・ミヤマエン、お主は正式な王選参加者となるべく見極めを行い、それにより国王より辞令を賜った。このことに対して何か申したいことはあるか?」
この場にいる全ての者の意識が、この質問への返答に向く。
リリィはこの問いに対し、まず立ち上がった。
そして目を閉じて、胸に手を当てる。
息を吸い込み閉じた目を開け、玉座に座る王を見つめて……
「このお話し、辞退させていただきます」
――!!!
この場において、二度目のざわめきが起こる。
周りからは、”信じられない!?”といった声があちらこちらから聞こえてくる。
「王よ、リリィは今、動揺をしておるのです。このような大役を前にして、気が動転しているのです!」
そう告げたのはコルセイルだった。
だが、その言葉に対してリリィは落ち着いた言葉で返した。
「王の決定に感謝しておりますが、ぜひお話しを聞いて頂きたく思います……」
リリィは真剣な眼差しで、王を見つめる。
その視線に応えるように、王は発言を許可した。
「……よい、申すがいい」
リリィは、その言葉にお辞儀をして語り始めた。
「私は今回の件で、自分自身の未熟さを知りました。精霊使いとなってから、王国に貢献すべくその努力を行ってきたつもりでしたが、まだまだ自分には足りないところが多いのです。これでは、王選において他の方に迷惑をかけるだけでなく、大切な王子様へも安全にお守りできるかもわからない状況です」
この場のざわめきが消えて、全ての者がリリィの言葉に耳を傾けている。
ここで、王の隣にいたローリエンが告げる。
「……リリィ。お主では、この任務は荷が重いと申すか?では、隣にいるものならどうなのだ?」
リリィは一度ハルナの顔を見て、ローリエンの問いに笑顔で答える。
「はい、私では荷が重すぎます。ですが、このハルナさんなら問題ないと思っております」
その発言に、会場が再びざわめく。
「リリィ、お前は――!!」
我慢が限界に達したコルセイルは、席を立ち怒鳴った。
「お前は自分の家がどうなってもいいっていうのか?ここでお前がここで断ると、今まで……今までの努力が無駄になるんだよ!」
と、その瞬間コルセイルに向けて何者かが矢を放った。
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