アップルパイ

プラノ

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赤い果実

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「-さんっ、拓也さんっ.....
       拓也、起きて。」

目が覚めたのは、昼だった。

目覚めから、あの子の囁く声で起きるのは心臓が持たない。
初めて深いところで繋がった昨日のこと
を思い出して、またドキドキしている。


「体調は大丈夫ですか?」

まるで昨日とは別人のように、あの子は俺を心配してきた。

「あ、あぁ....へ、平気。」

良かったと、明るい顔になってご飯を作ると台所へあの子は行ってしまった。

その後ろ姿を見るのが少し、切なくなってきた。
離れていくみたいな気がした。

おはよう、と挨拶が出来なかったから、
その代わりに


「まさと、好きだよ。」

と言ってみた。

余裕そうだったあの子は耳まで赤くして、無言で料理を再開させた。



やっぱりご飯は美味しかった。






-1週間後。

今日でまさとと出会ったこのアパートともさよならだ。

最後に、アップルパイを作って欲しいと頼んでみた。


甘くて、なんだか切なくて、

でも思い出の味がした。


「まさと、大学卒業したらパティシエになれば?」

「何言ってるんですか、俺は拓也さんにしか食べさせたくないの!」


「えっ....ふはっ、そうだな。俺も、独り占めしたいな。」


えいっ!と抱きつき、囁いた。


「ずっと一緒にいてくれよ、な。」



食べてはいけない、禁断の果実。

俺はもう、この子の虜だ。





~完~










あとがき


最後まで見ていただき、ありがとうございます。
なかなか更新できず、申し訳ないです。

お気に入りにしてくれた方、そう出ない方も本当にありがとうございました。

拓也とまさと、この2人のこれからを応援して頂けたら嬉しいです。

次はBLからは少し離れた物を書きたいなと思ってます。


また、何かご縁があったら是非!
作品を見ていただきたいです。


ありがとうございました。


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