5 / 8
感情
しおりを挟む
「あっ....俺、寝ちゃってました?」
ガバッと慌ててあの子は起きた。
撫でていた手をサッとしまい、「昨日はごめんね、」と謝った。
「あ、拓也さん、台所借りてもいいですか?」
とあの子は言った。
朝ごはんを作ってくれるらしい。
「拓也さん、これ使ってもいいですか?」
「拓也さん、この味どうですか?」
「拓也さん、できましたよ~!!」
.....今更だが、あの子はよく俺の名前を呼ぶ。俺は、あの子のこと「君」だとしか呼んだことがない。
-でも今は、あの子を名前で呼んでみたいと思った。
「あ、ありがとう.....いつもごめんね、ぉ....大倉...く、ん」
あの子は少し照れくさそうに、笑ってご飯を食べ始めた。
箸の持ち方とか、茶碗の持ち方とかが、すごく綺麗だなと思った。
....こんなこと考えてるおじさんどうなんだろうか。
「あ、大倉くんはさ、なんで料理とかできるの?」
ふと疑問に思って聞いてみた。
「え、あぁ俺、姉が2人いて昔からお菓子作りを教えこまれてたんですよ。普通のご飯は最近勉強したんですけどね、」
「え、そうなの?!それで、こんなに美味しいの.....あ、でもなんで料理しようと?」
俺が聞くと、あの子は少し顔を赤らめて答えた。
「あ、その.....好きになった人に、食べてもらいたかった...から、です。」
「へぇ、そうなんだ、こんなに美味しいもの食べれる好きな人は幸せだね。」
また、あの子は照れて、少し嬉しそうに「そうだといいです」と言った。
-『好きになった人』そのワードが頭にずっと残っていた。
「あ、そうだ拓也さん。」
あの子は少し真面目そうな顔をして、こちらを見てきた。
「俺、まだここに来てそんなに経ってないんですけど、引っ越します。あと1週間くらいしたら、」
あの子はこの話をして、用事があると家に帰った。
俺は、モヤモヤした気持ちを抱えながら、高校の友人に会いに都市へ出かけた。
PM 14:00
駅前で待ち合わせをし、高校の友人に会った。
「おー、櫻井久しぶり。」
「あ、橋本、んじゃ、行くか。」
友人の橋本は高校の部活が同じだった。
あまり友人が多くない俺の、1番と言っていいほど話が合う奴だ。
橋本とはこんな時間から駅前の居酒屋に入った。
結構な時間、今何やってるとか、趣味がなんだとか、恋愛の話をした。
「あ、そうだ、櫻井。お前、彼女いないのか?」
「うん、いないけど。」
「ふーん。気になるヤツとかは?」
橋本のその質問で、何故かあの子を思い浮かべた。
俺が答えずにいると、にやにやしながら「どんな子?どんな子?」と聞いてきた。
「気になるっていうか、
ただ、その....
隣の家の人なんだけど、
目が綺麗な人で、
明るくて、
お菓子作りが上手くて、
料理も上手くて、
礼儀正しくて、
かっこよくて、
たまに友達といる所見るけど、
なんかそこはあんまり見たくないと思うけど、素敵な人.....」
橋本は目をぱちぱちさせて、
「え、櫻井はその子のことどう思ってんの?」
「普通にいい子だな、って。」
「好きじゃないの?!」
「好きなわけないだろ、」
「恋人にしたいとか思わないの?」
「こ、恋人に?! ....そんな、、、」
橋本はふぅと息をついて、俺に言ってきた。
「櫻井。お前、そのお隣さん好きでしょ。恋だよ、それ。」
恋.....?
「あ、でも....さ、橋本、、、そいつ、男だよ、」
橋本は は? というような顔で言う
「そんなの関係あんの?好きなら好きでいいだろ。」
なんだか、今までのモヤモヤが消えていくようだった。
「あの子、引っ越しちゃうって....好きなやつにご飯食べさせたいって、」
何故か分からないが、俺は泣いていた。
初めてあの子のアップルパイを食べた時のように。
「櫻井、行ってこい。伝えてきな、」
橋本は俺の方をぽんと叩き、送り出してくれた。
帰り道、アパートの近くの道を走っていた。目の前にはあの子の姿があった。
一一「っ....大倉くん...!!」
あの子は驚いたようにこちらを見て、かけてきた。
「あ、拓也さん!いい所に!....その、今まで沢山お世話になったので、これ、今、買いに行っ....拓也さん?」
また俺はボロボロ泣いていた。
「ごめん、離れないで.....行かないで....また、隣のやつにケーキとか食べさせないで....俺だけにしてくれないか....」
「君が、好---」
言いかけた時だった。
強く抱きしめられ、
「....俺も、好きです。大好きです、拓也さん。
...初めて見た時から、俺のケーキ食べてくれた時から、好きです。この人に俺の物食べて欲しいなって思ってたんです。」
「大倉くん....本当に、?」
「はいっ....本当です、だから、拓也さん、俺の....俺の傍にずっと居てください、」
大人気ないが、ワンワン泣いている俺を抱きしめながら、あの子はそう言った。
「あぁ、、」
俺はそうとしか答えられなかった。
ガバッと慌ててあの子は起きた。
撫でていた手をサッとしまい、「昨日はごめんね、」と謝った。
「あ、拓也さん、台所借りてもいいですか?」
とあの子は言った。
朝ごはんを作ってくれるらしい。
「拓也さん、これ使ってもいいですか?」
「拓也さん、この味どうですか?」
「拓也さん、できましたよ~!!」
.....今更だが、あの子はよく俺の名前を呼ぶ。俺は、あの子のこと「君」だとしか呼んだことがない。
-でも今は、あの子を名前で呼んでみたいと思った。
「あ、ありがとう.....いつもごめんね、ぉ....大倉...く、ん」
あの子は少し照れくさそうに、笑ってご飯を食べ始めた。
箸の持ち方とか、茶碗の持ち方とかが、すごく綺麗だなと思った。
....こんなこと考えてるおじさんどうなんだろうか。
「あ、大倉くんはさ、なんで料理とかできるの?」
ふと疑問に思って聞いてみた。
「え、あぁ俺、姉が2人いて昔からお菓子作りを教えこまれてたんですよ。普通のご飯は最近勉強したんですけどね、」
「え、そうなの?!それで、こんなに美味しいの.....あ、でもなんで料理しようと?」
俺が聞くと、あの子は少し顔を赤らめて答えた。
「あ、その.....好きになった人に、食べてもらいたかった...から、です。」
「へぇ、そうなんだ、こんなに美味しいもの食べれる好きな人は幸せだね。」
また、あの子は照れて、少し嬉しそうに「そうだといいです」と言った。
-『好きになった人』そのワードが頭にずっと残っていた。
「あ、そうだ拓也さん。」
あの子は少し真面目そうな顔をして、こちらを見てきた。
「俺、まだここに来てそんなに経ってないんですけど、引っ越します。あと1週間くらいしたら、」
あの子はこの話をして、用事があると家に帰った。
俺は、モヤモヤした気持ちを抱えながら、高校の友人に会いに都市へ出かけた。
PM 14:00
駅前で待ち合わせをし、高校の友人に会った。
「おー、櫻井久しぶり。」
「あ、橋本、んじゃ、行くか。」
友人の橋本は高校の部活が同じだった。
あまり友人が多くない俺の、1番と言っていいほど話が合う奴だ。
橋本とはこんな時間から駅前の居酒屋に入った。
結構な時間、今何やってるとか、趣味がなんだとか、恋愛の話をした。
「あ、そうだ、櫻井。お前、彼女いないのか?」
「うん、いないけど。」
「ふーん。気になるヤツとかは?」
橋本のその質問で、何故かあの子を思い浮かべた。
俺が答えずにいると、にやにやしながら「どんな子?どんな子?」と聞いてきた。
「気になるっていうか、
ただ、その....
隣の家の人なんだけど、
目が綺麗な人で、
明るくて、
お菓子作りが上手くて、
料理も上手くて、
礼儀正しくて、
かっこよくて、
たまに友達といる所見るけど、
なんかそこはあんまり見たくないと思うけど、素敵な人.....」
橋本は目をぱちぱちさせて、
「え、櫻井はその子のことどう思ってんの?」
「普通にいい子だな、って。」
「好きじゃないの?!」
「好きなわけないだろ、」
「恋人にしたいとか思わないの?」
「こ、恋人に?! ....そんな、、、」
橋本はふぅと息をついて、俺に言ってきた。
「櫻井。お前、そのお隣さん好きでしょ。恋だよ、それ。」
恋.....?
「あ、でも....さ、橋本、、、そいつ、男だよ、」
橋本は は? というような顔で言う
「そんなの関係あんの?好きなら好きでいいだろ。」
なんだか、今までのモヤモヤが消えていくようだった。
「あの子、引っ越しちゃうって....好きなやつにご飯食べさせたいって、」
何故か分からないが、俺は泣いていた。
初めてあの子のアップルパイを食べた時のように。
「櫻井、行ってこい。伝えてきな、」
橋本は俺の方をぽんと叩き、送り出してくれた。
帰り道、アパートの近くの道を走っていた。目の前にはあの子の姿があった。
一一「っ....大倉くん...!!」
あの子は驚いたようにこちらを見て、かけてきた。
「あ、拓也さん!いい所に!....その、今まで沢山お世話になったので、これ、今、買いに行っ....拓也さん?」
また俺はボロボロ泣いていた。
「ごめん、離れないで.....行かないで....また、隣のやつにケーキとか食べさせないで....俺だけにしてくれないか....」
「君が、好---」
言いかけた時だった。
強く抱きしめられ、
「....俺も、好きです。大好きです、拓也さん。
...初めて見た時から、俺のケーキ食べてくれた時から、好きです。この人に俺の物食べて欲しいなって思ってたんです。」
「大倉くん....本当に、?」
「はいっ....本当です、だから、拓也さん、俺の....俺の傍にずっと居てください、」
大人気ないが、ワンワン泣いている俺を抱きしめながら、あの子はそう言った。
「あぁ、、」
俺はそうとしか答えられなかった。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
初恋はおしまい
佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。
高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。
※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。
今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。
始まりの、バレンタイン
茉莉花 香乃
BL
幼馴染の智子に、バレンタインのチョコを渡す時一緒に来てと頼まれた。その相手は俺の好きな人だった。目の前で自分の好きな相手に告白するなんて……
他サイトにも公開しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる