青い鳥は誰かが飼ってる

プラノ

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あの日

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-9年前、俺達が高校2年だった時のこと。

埼玉県の真ん中の方にある私立彩野高校で俺達は出会った。
焼き鳥屋以外何にもなくて、田舎だった。


4月、クラス替えで2-dになった。
今年から男女差別がどうとかで男女混合の名簿になったから、後ろと前は女子だ。

(友達できんのこれ...)

ただでさえクラスの半分以上が女子だから、友達ができるのか不安で仕方なかった。


とりあえず自分の出席番号を見て席に着く。

「えーっと、24番...24番....ここか。」

真ん中の後ろから2番目、まぁまぁいい席だった。
なんにもすることがなくて、ぼーっと前を見ていた。

教室のドアが開き、頭に寝癖の付いた男が入ってくる。

「あ!和田!!!今年も同じなのすごくね!?
よろしく~」

開いているのか閉じているのか分からないような目でこちらを一瞬だけ見て自分の席へ行ってしまった。

「あー!また無視する....寂しくなるぞぉー俺...」

寂しいのは本当で、ノリなのは分かるけど、落ち込む。

和田のノリに落ち込んで縮こまっていると、後ろから明るい声がした。

「ん!おはよー!私 中本 絢子なかもと あやこ!!よろしく~」

今どきこんな子いるんだと、握手を求めてきた。
少し驚きながらも手を取った。

「俺は取井 響介といり きょうすけよろしく、あ、LINE交換しない?」

「うん!する!!!クラスグループも作ろ!!」

と、太陽みたいな笑顔が返ってきた。

「なんて呼べばいい?」

女子の呼び方はいまいちよく分からない。この歳でちゃんをつけるのもなんだか恥ずかしいし...

「絢子でいいよ~じゃあ、そっちは響介だから....きょーちゃん!!」

まさか自分の方がちゃん付けされるとは思わなかったが、ちょっと気に入った。

「わかった、絢子って呼ぶね。」

絢子と話しているうちにクラスの人もだいたい来ていた。

「みんなー、グループ作りたいからLINE交換して~!!」

俺はこのクラスで多分陽キャスタートを切った。


始業式も終わり、遊びに行かない?と絢子に誘われた。和田も今日は部活がないらしいから誘うことにした。

絢子は彼氏にメールするらしい。彼氏いたんだ。


「和田ー、絢子と遊びに行こー。」
「和田って誰」
「え?あれ。」
和田の方を指さすと、えぇー!と突然大声で絢子が叫び出した。
「和田って、よっしー?全然気づかなかった!」
「俺は気づいてたけど話しかけなかった。」
「なんで!!」
「2人知り合いだったの?」
そう俺が聞くと、部活仲間だったらしい。そーいえば和田って吹奏楽だったなぁと思い出した。

ちなみによっしーっていうあだ名は多分、和田 吉高わだ よしたかのよしから取ったんだと思われる。
吉田さんとか、吉が付けば大体はよっしーだよなぁ...と考えてしまった。

学校の近くには何も無いから2駅先のショッピングモールに行くことにした。

フードコートで好きなものを食べる。
俺は絶対にチキン。そう決まっている。

「また響介それ食べてる。」
「きょーちゃん、フライドチキンとか好きなんだ。意外~。」

よく分からないが、バカにされてる感じがする。

「いや、これを食べるために俺は生きてるんだよ。ほんとに。死ぬ前はこれ食べたいくらいだからな。」

骨に付いた肉の欠片まで全て食べたいが外だからさすがに出来ない。そのもどかしさはあるが、久しぶりに食べることが出来て嬉しかった。

「中本、さっき彼氏に連絡してたけどなんか厳しいのそういうの。」

ううん、と首を振って絢子が

「全然!逆に行ってくれば~って言われた。部活無かったら誘おうと思ってたんだけどね、大会近いからあるんだって。」

「ほぉ。」 

ラブラブそうで羨ましいなぁと思った。
これが青春。彼氏彼女いなくて共学の意味ってあるのだろうか。

「よっしーは多分いなそうだけどさぁー、きょーちゃんは彼女いないの?」

「ん?俺?うーん....」

少し返事を濁していると和田が口を開いた。

「響介、1年の時はいたよな。」

「え!!そうなの!今は?別れたの?」

なんだか深刻そうなことを聞く人みたいにおどおどしながら絢子が聞いてきた。

「うーん、別れたっていうか連絡もなんにもなくて、話したりもしないから多分相手は俺のとこ嫌いになったんじゃないかなーと...」

「ふーん、それで誰?」

話してみるとあまり興味がなさそうにまた質問してきた。


「多分知らないと思うけど、加藤 翠かとう みどり


少しの沈黙の後、

「えぇ!翠?!翠の彼氏きょーちゃん!?」

とすごい声で言ってきた。
周りにいた人たちも驚いてこっちを見ている。

「中学の時仲良くて、1年の時も遊んでたよ私と翠。...えぇー翠なのぉー。翠かぁ。....ねぇ、きょーちゃん。翠さ、多分、、きょーちゃんのこと、、、よ、」

奥の方でお皿が落ちる音がした。
絢子が何か言っていたが聞こえなかった。

「え?翠がなに?」

そう聞くと、

「ううん、なんでもない。」

と首を振って絢子は答えた。
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